メモ・アメリカ篇

appendix

「The Heavy Ball」以外のアメリカ事情レポートをまとめておきます。外国野球事情は貴重なので。
USA report:from; 東京中日スポーツ, 2006年4月10日付

レイ・フォッシー氏は城島のキャッチングがヘタだと主張する

【シアトル=スーザン・スラッサー】城島が伝説の捕手に「へたくそ」と、けなされた。(中略)現役時代に「闘志の捕手」と言われた現解説者のレイ・フォッシー氏(58)は(中略)本紙の取材に対し「キャッチング技術がヘタ」と一刀両断。

以下はnobioによる要約。「城島は沈む球に対して、ミットを上から下にかぶせるように捕球している。本来、手の平を正面に向けて捕るべきだ。あれではストライクでもボールと判定されてしまう」「このままではマリナーズの投手陣には不満がたまるばかりだ。それほど技術的には『ヘタ』と言える」。フォッシー氏によれば、7日に先発したフェリックス・フェルナンデスも城島のキャッチングのせいで、ストライクが4球『ボール』と判定されたという。メジャーは日本と違い、ツーシームなど沈む速球を主体にする投手がほとんど。それに対応できていないとして「素晴らしい素質を持っているのだから、ミットの動かし方を覚えるべきだ」と語った。と、以上トーチュウに書いてある。

▼レイ・フォシーは「The Heavy Ball」の中で「ブルーの球を捕ると手が腫れ上がる」と語っていた伝説の捕手。もしこれがメジャーにおける標準的な意見なら、マリナーズのコーチだって同じことを感じてるだろうし、それだったら放っておかないだろ、という気もするんだが。

▼「The Heavy Ball」の記事では「two-seam or four-seam fast ball」は「沈まない球」に分類されていたが、この記事では「ツーシームはメジャーで代表的な沈む速球」ということになっている。どうも基本的な部分に混乱があるね。私はツーシームは沈む(動く)だろ、と思うので、その点はトーチュウ支持。だってそうでなきゃ、フォーシームと投げわける意味ないじゃん。

USA report:from; 東京中日スポーツ 2006/02/08

すごい! ミットの音が最高だね。

【ピオリア(米アリゾナ州)ギレスピー・カズミ】マリナーズの城島健司捕手(29)が合同自主トレ3日目の6日、ブルペンで4投手を相手に捕球。3日に初ブルペン入りした際の50球の3倍以上となる計185球の“特捕”を行った。見守ったスレートン・ブルペン・コーチは「とても素晴らしい仕事ぶり」と本職のキャッチングを褒めるとともに、「英語が想像してたよりもうんと上手」と城島の英語力に絶句。言葉の違いにより懸念されていた投手とのコミュニケーション能力に太鼓判を押した。

城島がまたしてもその存在感で周囲をうならせた。初ブルペン入りした合同自主トレ2日目はブルペンでJ・J・プッツ投手(28)、マット・ソーントン投手(29)を相手に計50球を受けたが、この日は4投手を相手に3倍以上となる計185球の捕球。約50分間にわたって“特捕”を行った。

相手となったのは前出の2人に加え、メジャー通算169勝右腕で招待選手としてキャンプに参加するケビン・エイピアー投手(38)と昨季途中メジャー昇格のジェフ・ハリス投手(31)。初めてバッテリーを組んだベテランのエイピアーは「すごい! ミットの音が最高だね」と目尻を下げたが、城島本人は「ミットの芯に入れば鳴ります、いい音が出ます」と事もなげに振り返る。むしろ「現在は赤のミットを使っているが、黒も注文してある。でもできれば赤をずっと使いたい」と、商売道具のカラーリングの方を気に掛けていた。

しかしこの日が初対面だったスレートン・コーチは「とても素晴らしい仕事ぶりに感心したよ」と城島のキャッチングに一目ぼれ。さらに予想以上の英語力にも度肝を抜かれた。

「彼の英語は僕が想像していたよりうんと上手だったよ。野球の知識、投球の知識も深いしね。友人のジム・コルボーン(昨季までドジャースの投手コーチで日本通)から『とてもいい選手だし、きっとチームに貢献する』と聞いていたけど、実際に見て本当にすごいなと思った」

まだ実戦が始まる前から、続々と賛辞の声が集まった。メジャー1年目というのに、まるでベテラン捕手のような風格さえ漂わせている。

USA report:from; Sponichi Annex 2006/02/17

メジャーでは、いい音を出す捕手は少ない。

マリナーズの城島健司捕手(29)が16日(日本時間17日)、待望のキャンプイン。背番号2のユニホーム姿でナインとともにはつらつとした動きを披露した。城島が自主トレから使用しているメジャーでは珍しい“赤ミット”が投手陣の間で大好評。今キャンプではブルペンでの日本式キャッチングとともに城島流の心遣いで、若手がそろうマ軍投手陣の信頼をさらに勝ち取っていく。

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ソフトバンク時代と同じ背番号2の真新しいユニホーム。午前8時半から約1時間のミーティングを終えた城島は、チームメートとともにグラウンドに姿を見せた。(中略)戦いの舞台を米国に移した城島の挑戦がいよいよ幕を開けた。(中略)赤いミットが投手陣の間で大好評。メジャー捕手の主流は黒。中継ぎのプッツが「子供の頃、タイガースのランス・パリッシュがオレンジ色を使っていたのを覚えているけど、赤は…」と考え込むほど珍しい“逸品”だが、鮮やかな赤は投手にとって標的になりやすい。中継ぎ左腕のソーントンが「一塁に走者がいる場面は、走者をけん制しながら足を上げ、一瞬でホームに目を移す。大きな赤いミットは見つけやすい」と話すように制球力アップにもつながる。

城島の心遣いはそれだけじゃない。ボールを捕球する際の「バチーン」という音。日本では投手の気分を盛り上げる意味もあり、いい音を出して捕球するのは“常識”。しかし、メジャーではムービング系のボールが多いこともあり、いい音を出す捕手は少ない。その点、城島は音が出やすいように連日、ミットをオイルで入念に手入れしている。「愛情を込めて磨けば音は鳴りますよ。投手も気分がいいでしょう」。今キャンプはあくまでも“日本流”で投手をサポートするつもりだ。

マ軍投手陣は19歳のヘルナンデスら若手が多く、城島の気配りがプラスに働くのは確実。まずはミットから。視覚と聴覚に訴えながら「Made In Japan」の捕手をアピールする。

USA report:from;『大リーグは本当にすごいのか?』

メジャーではいい音を出すのはタブーである。という説もある。

小林信也著/草思社『大リーグは本当にすごいのか?』2002年4月30日刊より、2000年の日米野球での話。米チームのブルペン捕手は日本の球団所属の若手やブルペン捕手が務めた。以下p28-29から引用。

日本では、捕手が大きな音を響かせて捕球するのが良いとされている。投手がそれで「自分のボールには球威がある」と自信を持つからだ。ところが、メジャーの捕手たちはほとんどよい音を鳴らさない。むしろ、音が鳴らないのをよしとする価値観もあるように感じた。
「日本の捕手はミットに何か入れているのか」
と、サンディー・アロマー(当時インディアンス、現ホワイトソックス)が目を丸くした。なぜメジャーのキャッチャーはいい音を鳴らさないのか。訊くとアロマーはこう答えてくれた。
「あまりよい音を立てたら、投手が自信をなくすだろう」
その意味が最初はピンと来なかった。けれど、速球王ランディ・ジョンソンの投球練習を見て、なるほどと合点がいった。ジョンソンのスライダーは、さすがの日本人捕手もなかなかいい音を鳴らして捕れなかった。変化が鋭く、予測もできないためミットの芯で捕れないのだ。それはつまり、打者にとっても打ちにくい球だ。そのほうが投手としては自信が湧く。もしジョンソンのスライダーを捕手がバシバシいい音で捕ったら、ジョンソンは意気消沈しただろう。

▼なるほど。城島をめぐる上ふたつの記事とは真っ向から矛盾するようだが、そういう価値観もあるのかも。「ベースボールダイジェスト」の記事の 06 にもそんなことが書いてあるし。矛盾と言えば、「ベースボールダイジェスト」の記事で「キャッチャーにとって捕りやすい羽根のような快速球」を投げる代表例として挙がっているランディ・ジョンソンが、小林氏のレポートでは捕りにくい代表例として挙げられている。ああ、野球というのは複雑で奇妙だ。なんと真実を知るのは困難なのであろーか。いや、「ランディ・ジョンソンの真直ぐは捕りやすくて軽い、スライダーは捕りにくて重い」と考えれば矛盾はないのか。

▼この記事とか、4ページ前の"The Heavy Ball"とかを読むと、「キャッチャーが捕りやすい球はバッターが打ちやすい」というのが全米の常識みたいに思えるが、たぶん、そういうことでもない。"The Heavy Ball"によればランディ・ジョンソンやカート・シリングの球は「キャッチャーの手を強打することはない」そうだが、彼らは打ちやすいピッチャーとは言えないだろう。『野球術(ジョージ・F・ウィル著/芝山幹郎訳/2001年/文春文庫)』の中でリック・デンプシー(ドジャース/捕手)は、かつての同僚ジム・パーマ—(投手)を激賞しつつ、「パーマ—の球はじつに捕りやすかった」と語っている(文庫版上巻 p.204)。

USA report:from; Seattle Post-Intelligencer 2006/02/17

城島は "平均点の男" ではない

Seattle Post-Intelligencer の日本語訳ページより。この記事は球の重さとはまったく関係ないんだが、ハルキ調の翻訳文体がなんとなく気に入ったので、城島絡みの記事としてここに保存しておきます。許諾もなにもとってないけど、すいません。そう言えばトーチュウさんにもスポニチさんにも、すいません。

【アリゾナ州ピオリア】春季キャンプのスタートは、慣れ親しんだ通りだ。露を含んだフィールドの緑に朝の太陽が差し、クラブハウスは洗い立ての洗濯物と染み付いた汗のにおいがする。

しかし、このリラックスしたお馴染みのできごと−米国南西部の砂漠地域に野球選手たちがやってくるという、永遠に変わらぬように見えるイベントの中にも、変化はある。春季キャンプは、ピオリアが埃っぽい辺境の地から広大な街へ(現在の人口は13万人だ)と変わったことだけでなく、マリナーズが昨年からどう変わったのかを確認する場なのだ。投手と捕手にとって、初日の大きな変化は、ジョーと赤いグローブだった。楽しい絵本の題名のようだが、マリナーズ上層部はこの "ジョーと赤いグローブ" に、チームの命運に大きな影響を与えるカギ、あるいは象徴になってほしいと期待している。ジョーとは城島健司のことだ。赤いグローブとは、城島のキャッチャー・ミットのことだ。

城島のロッカーには赤いグローブが3個かかっている。真っ赤で、とても目立つ。アメリカの野球とは大違いだ。クラブハウス・マネジャーのテッド・ウォルシュが言うには、マリナーズは関係者に、赤いグローブがメジャーリーグで許可されているかどうか確認したそうだ。ウォルシュによると、青信号が出たという。

投手部長であるジェイミー・モイヤーにとって、グローブの色は問題ではないようだ。「彼が今日使ったのが赤かったか茶色だったかと聞かれても、答えられないよ」とモイヤー。

モイヤーは木曜日に城島と投球練習をした3投手のうちの1人。あとの2人はギル・メッシュとジョージ・シェリルだ。すでにシアトルで城島とキャッチボールをしていたモイヤーは、この日の8分間にわたる投球練習を楽しんだ。2人はジョークを言い合った後、投球をはずす時の城島のミットの位置について、通訳のケン・バロンをそばに置いて話し合った。バロンが話す機会はほとんどなかった。モイヤーは英語とスペイン語を少し交えながら、手振りで自分の言いたいことを示した。モイヤーが「Comprende? (スペイン語で "わかった?" の意)」ときくと、城島はうなずいた。言葉の壁の話はこのくらいにしておこう。

城島は声を出すタイプの捕手で、簡単に聞き取れる英語で投手を励ましたりする。そのレパートリーは、力強い「アー!」(うーん、これは英語ではないかもしれない)から、ハスキーな「いい球だ」、熱心な「すごくいいぞ!」などなど。

「父親に向かって投げてるみたいな気がしたよ」

と、クラブハウスに戻ったモイヤーは大笑いしながら言った。悪いことじゃない、とモイヤー。「フィードバックさ」と説明するモイヤーは、より多くを引き出そうとするのが人間というものだ、と語る。「何回連続で彼にそう言わせることができるか、挑戦してたんだ」

マリナーズのマイク・ハーグローブ監督は、優れた管理能力を感じさせる城島のアプローチが気に入っている。また、キャンプ初日には40人にも達したメディア(大部分は日本の記者)への対応ぶりにも感心しているという。イチローが5年前にやってきた時ほどの大群ではない。おそらく半分程度だろう。それでも大した数には違いない。そして、カメラを持った取材陣は、まるでパパラッチのように城島の一挙手一投足を追っているのだ。城島には、気にしている様子はない。城島がバッグの中を探ろうとすると、カメラマンたちも一緒に体を傾ける。そうしてできた人間ドームは、城島が体を起こすと、花のように開く。城島が何本か柵越えの当たりを放つと、カメラのシャッター音がまるで「よし!」と言わんばかりに響く。打撃練習を終えた城島が右翼フィールドに小走りで移動すると、日本人たちも右翼線に動き、フィールドに踏み込まないぎりぎりのところに陣取ろうとする。城島は英語で質疑応答した後、日本語でも質疑応答をする。

「かなり我慢がいるだろうね」とハーグローブ監督。

捕手としても同様だ。休む番になっても、城島は働き続けていた。マリナーズで自分の控え捕手になる可能性が高いレネ・リベラと話し、ドラフト1位のジェフ・クレメントがスコット・アチンソンの球を受けている間は、クレメントの後方にかがみ、アチンソンの投球を研究していた。また、どんな指示にも提案にも、熱心に耳を傾けた。

初日が終わった時点では、城島がマリナーズの捕手難を間違いなく解消してくれる、と誰かが宣言するようなことはなかった(マリナーズは昨年、7人もの捕手を使ったが、良い結果は得られなかった)。それでも、マリナーズが3年間1,650万ドルもの契約を結んだのは、ただ単に太平洋の反対側でファンを増やそうと思ったからではない。城島もその点は承知している。マリナーズが城島に期待しているのは、ホームプレート後方の信頼性と安定感を取り戻し、投手がもっとアグレッシブな投球ができるようにすること、そして打撃面でも軽量級のラインナップに刺激を与えることだ。「彼の捕球ぶりは気に入った」と、キャンプ初日終了後にハーグローブ監督は言った。「エネルギッシュなところもね。打撃はどうだろうと思っていたが、打ってもかなりいい」

では、城島のおかげで昨年より20試合多く勝てるのだろうか?

キャンプ初日が終わっただけの段階でこの質問をするのはフェアではない。しかし、過去2シーズンで192敗もしているチームの監督として2年目を迎えるに当たり、ハーグローブ監督はこの点を自問する必要があるはずだ。現時点で唯一言えるのは、赤いグローブの城島健司が、"average Joe(平均点の男)" ではない、ということだ。平均以上の成績を出すことが悲願のチームにとっては、この点が大事なのだ。

清原チンポコ発言