ヘッドスライディングは遅いのか

head-first sliding / diving
ヘッドスライディング:01

ほんとうのところどうなのか

ヘッドスライディングより真っすぐ駆け抜けた方が速い、という説は、あまりにも強固に信じられている。「怪我のリスクとかはさておき、はやさだけで言ったら頭からダイブした方がはやいんじゃないか」なんて言ったら大変だ。ナニ言っとるや、そんなわけないわ、絶対遅いって、決まっとるがや、おまさんアタマ大丈夫かや、という激烈な反応が返ってくる。その論拠としてネット上でよく見かけるのは「言うまでもなく」だ。Wikipediaの「スライディング」の項にも「当然ながらスライディングよりも走りぬけたほうが速い」と書いてあったらしい(「教えて!goo」の2007年7月時点のやりとりにそう書いてあった)。「もちろん」とか「明らかに」なども多く用いられる。

言うまでもなく」が論拠と呼べないのは言うまでもないと思うが、論拠の必要性すら意識されないまでに当然視されている現状の、ひとつの理由はたぶん、素人受けする派手なプレーだからだろう。クルマの世界におけるドリフト走行のようなものだ。ドリフト? はん、確かに派手で速そうに見えるだろうが、オレらから言わせりゃあんなものはケツ振りダンスよ。本当に速いのはグリップ走行よ。そう発言する人はしばしば得意げに鼻の穴をふくらませ、素人を見下ろす目線になる(想像)。正直なところ、「ヘッスラ? ププッ、宙を飛ぶから速いってか?」と言う人々の口調にも似たものを感じることが(たまに)ある。素人受けするものを貶すのは、通っぽくてカッコイイのである。「推進力を失う上に、ズルズル滑れば摩擦で減速するばかり」と言われるところなんかも、ヘッドスライディングとドリフト走行は妙に似ている。

ドリフトにもいろいろあるんだろうが、ヘッドスライディングにもいろいろある。仮に、ベースのはるか手前で踏み切ってズルズル・ズザーーーッと滑るのを「ズザー」、荒木雅博や蔵本英智が見せるような、滑る距離が極少(場合によってはゼロ)なのを「ダイブ」「ダイビング」または「ダイレクトダイビング」と呼ぼう。スライディングとはすなわちブレーキをかけることなので当然遅い、とかよく言われるのは「ズザー」のことだろう。それでもリーチの点でならアドバンテージがあるのは下図の通りだ。ダイブでもほんとうに遅いのだろうか。

ichiro_Ronaldinho

ダイレクトダイブなんて怪我するに決まってる、という説もよく見る。もちろん駆け抜けるよりリスクが高いのは間違いないし、怪我した実例も多い。1994年の「国民的行事」10.8決戦で立浪和義が内野ゴロでヘッスラしてセーフになったが肩を脱臼して退場、という例はよく知られている。プロと違ってほとんど報道されることはないが、少年野球での骨折や脱臼の例も多いはずだ。ただ、だからといって「怪我するに決まってる」はないだろう。ダイブして左手でダイレクト(あるいはほぼダイレクト)にベースタッチ、その後ベースの右をズザーッと滑って停まる、というヘッスラ(仮に「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」、略して「左手ダイブ」と呼ぼう)を、観測所員は2008年のわずか1週間の間に二度目撃した。一度は2008年6月27日の中日対横浜戦一回表、横浜から移籍したばかりの二番小池正晃が三ゴロでヘッスラ決めてセーフになった(記録はサード村田のエラー)例。もう一度はその翌週、7月3日の中日阪神戦八回表、荒木雅博がセーフティバントを試み一塁に雨中のヘッスラ敢行、しかしピッチャー渡辺の絶妙のグラブトスでアウトになった(記録は投ゴロ)例。咄嗟に偶然やったとは思えない。日頃から意識して練習してるのだろう。左手ダイブなら絶対安全だ、と言いたいわけではない。「怪我するに決まってる」はあまりに乱暴な(実情を無視した)言い分だ、と言いたい。

それと、この話題を語るとついつい人は「速いか遅いか」にフォーカスしがちで、げんにこのページでもすでに「速い」という語を使ってしまっているが、野球では(だけでなく、陸上競技も自動車レースも)じつは、速度を競うわけではない。男子100m走の世界記録保持者は「人類最速の男」と呼ばれたりするが、それは慣用表現であって厳密にはちょっと違う。勝敗(アウト/セーフ)を決するのは速度(fast or slow)ではなく到達時間(early or late)だ。「スライディングよりも走りぬけたほうが速い」というWikipediaの記述が仮に事実だとしても、そのこと自体に意味はない。問題は「どっちが触塁が早いか」である。速くなくても早けりゃいいのだ。

陸上競技は胴体で判定する決まりなので、走者はたいてい胸を張ってゴールインする。もし「胴体に限らず体のどこか」でいいとしたらどうか。ランナーが象なら鼻を使うだろうし、人間の場合は手でしょう。手を前方に伸ばすことには速度面のマイナスがあるはずだが、リーチ(腕の長さ)を生かすことのプラスは、それをはるかに上回る(と、いうのは想像で言ってるのだが、下の写真なんか見れば明らかだと思う)。ちなみに水泳選手は、腕を真っすぐのばした体勢でタッチしないと損なので、「ゴールまであと1掻き半」と判断しても、体勢によっては1掻きで止めたりする。半掻ぶんの推進力を捨ててでもリーチの有利さをとる、すなわち

「速さを捨てて早さをとる」

のである。これは想像ではなくて、水泳選手がそう語るのを聞いたことがある。競っているのは速度ではなく早さなのだから、それが当然だろう。

100m Men's Final

では、短距離走でゴールテープが地上80センチの高さに張ってあり、それに触れないとゴールが認められないとしたらどうか。やっぱりゴールの瞬間に上体を倒して手で触りに行くでしょう。地上5センチだったらどうですか。馬なら踏みに行くだろうが、人間は(怪我のリスクを無視して言えば)ダイブが有利なような気がする。「人間も馬と同様に前肢、すなわち手をのばす」という言い方をしてもいい。下の2枚のシルエットはよく似ているではないか。

人間も馬と同様に前肢、すなわち手をのばす。

怪我のリスクも疲労のリスクもあるだろうから、「野球選手は常に一塁にヘッドスライディングすべきだ」なんて主張する気はぜんぜんない。高校野球で横行する「ひたむきさのアピールとしての九回二死でのヘッドスライディング」がアホらしい(或いは醜い)という意見にも同感だ。ただ、ひたむきさもリスクも審判の心証も、また美学としてどうか、というような話も無視して早いか遅いかだけを論じるとして、ほんとうにダイビングは駆け抜けるよりも遅いのだろうか。ならばどうしてTBS 筋肉番付「ショットガンタッチ」では、誰もが頭から飛び込むのか。

ヘッドスライディング:02

「ヘッスラは遅い」説を疑う(ショットガンタッチとの比較)

思えば少なくとも20年間、まっすぐ駆け抜ける方が早い、と信じて疑ったことはなかった。ちょっと興味を持ったのは2007年暮れ、「五輪予選で一塁にヘッドスライディングした川崎宗則にイチローが激怒」という記事を見かけてからだ。すこし検索して「ヘッスラなんて遅いに決ってます」というのが世間の常識であることを確認し、安心した。ところが一方、「ショットガンタッチではみんな頭からいくではないか」という指摘に出会い、ハッとした。それに対して膨大な反論があることも知った。そもそも「ヘッスラは遅い」論とはどのようなものなのだろうか。

ベースへの滑り込みは、ベースを駆け抜けるよりも不利だと思うのですが(HATENA)

1 回答者:2007-08-09 09:49:48
駆け抜けた方がもちろん早いです。

2 回答者:2007-08-09 09:51:02
明らかにスライディングよりは走り抜けた方が早いでしょう。

4 回答者:2007-08-09 09:54:49
不利です。おっしゃる通りブレーキがかかります。ファーストへは走り抜けた方が速いです。

7 回答者:2007-08-09 14:21:51
当然ながらスライディングよりも走りぬけたほうが速いから、早く一塁に達するために、通常はスライディングを行わず、そのまま一塁を踏んで駆け抜ける。

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

ANo.9 / どんな人:経験者 / 自信:自信あり / 回答日時:07/07/04 12:04
地面に固定されたベースを踏むと言う行為においては、手で触りに行くよりも足で触りに行った方が早いことは明白です。

もちろん」「明らかに」「当然ながら」「明白です」。宗教かこれは。ちょっと無気味だ。

ヘッドスライディングと、全速力でベースを駆け抜けるのと(Yahoo! 知恵袋)

回答日時:2007/6/115:07:45 回答番号:37,729,012
走り抜ける方が早いです。争いのない事実です。ジャンプするために踏み切る時間。ジャンプするための無駄なエネルギー。地面から1m近い高さにある手をわざわざ地面近くのベースにまで持っていく無駄な時間。様々なことを考えて、明らかにヘッドスライディングは遅いです。

ジャンプするためのエネルギーが無駄かどうかを議論するのに、それが無駄だという前提を用いるのは変でしょう。神の存在を証明するために「神は全能である」という前提を用いるのと似ていて、なぜだかどうにも宗教っぽい。そりゃジャンプするには時間もエネルギーも使うだろうが、走り抜けるのにだって時間もエネルギーも使う。どちらが効果的か、という話だ。

実験

「地面から1m近い高さにある手をわざわざ地面近くのベースにまで持っていく無駄な時間」とある。その動作の間前進が止まるのであればたしかに無駄な時間と言えるだろう。だが実際には上図のように、落下と前進は同時に進行し、手は落下によって当然に地面に近付く。特に無駄と呼ぶべき要素は見当たらない。

それとも、倒れ込むのは時間がかかり過ぎるという指摘なんだろうか。それなら(目標まであと2歩の距離でダイブするとして、走っている時の重心が地面から1mの高さにあるとして、触塁のためにはそれが地上30cm の高さまで落ちる必要があるとすれば)、70cmの高さを自由落下するのに要する時間が、2歩を走る時間より短いか、あるいは同等程度であればそれで充分だろう。

全力疾走時に1歩を走るのに要する時間は、『DVD 日本人に適した最速の走り方(西東社/\1,500)』によればトップレベルの短距離走者でも0.25 秒前後だという。2歩あたり0.5 秒。一方、地球上の、地表近辺での重力加速度を9.8として、物体が初速ゼロ(垂直方向の初速の話です)から70センチの距離を自由落下するのに要する時間は、高校物理公式集(1)によれば約 0.38秒だ。2歩を走るより余裕で速い。

ヘッドスライディングについて(MSN 相談箱)

直感とか感情論とか根性論とか物理方程式を持ち出すまでもありません。実際にハッキリとしています。1/100を争うような陸上競技の短距離走でのゴールシーンを思い出して下さい。誰一人としてスライディングなんてしませんよね。走り抜けた方が速い事はタイムが如実に語っています。

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

>駆け抜けた方が早ければ、何でそのまま走り抜けて足でタッチしに行かないんでしょう?(nobio 註:ショットガンタッチのこと)

ただ、これは、競技が違いますので何とも言えません。貴方の例えのようないいかたで逆のことを言うと、「ダイブした方が早いなら、陸上の100m走は最後にダイブして入った方が早い」と言うことになりますが。100走が最後にダイブしないのですから駆け抜ける方が早いのではないかと思いますけどね。

「陸上競技では誰一人としてしない」ことが不合理の証明になる、と主張する人は、陸上競技の走者が誰一人として決してしない下図のような動作(いわば「片足飛び込み」)を、どうして今江やイチローがするのか、イチローがアホだからなのかどうか、考えてみていただきたい。陸上は胴体がゴールする必要があり、その点で野球より条件が厳しい。しかし胴体でいいということは歩幅合わせの心配がゼロということなので、その意味では野球(や水泳)より楽だ。また、陸上ではゴールライン上空ならどういう高さの通過でも認められ、その点でも地面(とほぼ同じ高さ)に触る必要がある野球より自由だ。ちなみに陸上短距離走でゴールすることを、漢語では「入線」と表現するらしい。ご存じの通り野球では「触塁」。陸上と野球はルールが違う。

左:今江敏晃、右:イチロー
突っかい棒のように脚を前へ突き出して一塁ベースを踏みにいく。左:今江敏晃、右:イチロー

高校野球の宗教

上からのボールの話(nobio 註:ショットガンタッチのこと)は確かにそうでしょう。走っていれば腕は地上1mにあり、滑り込めば腕は床の高さになるわけで、この話は条件が違いますね。

一方、ショットガンタッチは野球とよく似ている。走っていれば腕は地上1mにあり、滑り込めば腕は床の高さになる。その通り、それは野球でもショットガンタッチでも同じだ。「条件が違いますね」とあるが、何が違うのかわからない。

ヘッドスライディングについて(MSN 相談箱)

ヘッドスライディングでは跳躍するための「ため」が必要になります。これがロスとして助走の段階で速度の低下を起こしてしまうわけですが、走っている状態での「ため」の動作は微妙であり、本人にも速度の低下を認識するだけの動作ではありません。試しにその場でジャンプしてみてください、足首だけでのジャンプではほとんど飛び上がることはできず、「ため」がどれほど大事なことなのか認識できるはずです。「ため」に使う力を速度の向上に振り分けた方が実用的ではないかと思います。

また、ヘッドスライディングの動作を開始する地点も理想の場所があるはずです。一定ではないバッティング動作から走行状態に入り、歩数を合わせることにもロスが発生すると考えられます。これらを総合的に考えた場合、走り抜けた方が「安定的」に早く走り抜けられるのではないかと思います。

「歩数を合わせることにもロスが発生する」のは足でベースを踏みに行く場合も同じ、と言うかむしろ踏みに行く方がその問題はデリケートじゃなかろうか。だとすればその意味ではヘッスラの方が「安定的」に成功するだろう。

「足首だけでのジャンプではほとんど飛び上がることはできず、『ため』がどれほど大事なことなのか認識できるはずです」という文脈からすると、「ため」とはヒザと股関節の曲がりを指すのだろう。しかし、下図1-05 は「ショットガンタッチ」でのロナウジーニョのダイブのスロー再生だが、ふつうに走るときには(欽チャン走り以外では)ご覧の通りふつうにヒザも股関節も曲がるので、足首だけでのジャンプを心配する必要はない。そもそもヒザと股関節の曲げ伸ばしが速度の低下を招くのであれば、走っている間速度は低下する一方だ。

ヒザと股関節を曲げるのは構わないが、ヘッスラに行く最後のひと蹴りでは跳躍のための特別な「ため」が必要で、そのぶんがロスになるという意味だろうか。ロナウジーニョのフォームを見る限り確かに最後の踏み切りにタメ(膝と股関節の深い曲がり)を感じるが、そのせいで速度が滞っているとは感じられないのだが。踏み切りが「よっこらしょ」って感じに遅くなるとしたら、それはダイブがヘタな人なんじゃなかろうか。

Ronaldinho2008

タメによる踏み切りの速度の低下は、微妙な差だから私には視認できないのかも知れない。しかし一方リーチの差はけっこう大きく、一目でわかる。「図1-01」で判断する限り、「駆け抜け」と「ダイブ」の差は60センチ前後はありそうだ。これが、視認できないほどの微妙なロスによってひっくり返るというのは納得しがたい。1歩では微妙な差でも何歩も積み重なればけっこうな差になるだろうが、なにしろこれはダイブに行く最後のひと蹴りの話だから、積み重なりようがない。

コレコレの理由で遅くなる、と語る人は多いが、それだけでは足りない。その遅れのぶんがリーチ60センチのアドバンテージを大幅に上回る、ということを言わない限り、「明らかに遅いです」の論証にはならない。

◆◆

「これがロスとして助走の段階で速度の低下を起こしてしまうわけですが、走っている状態での『ため』の動作は微妙であり、本人にも速度の低下を認識するだけの動作ではありません」とまで言えるのは、よほど精密な実験を重ねて、データ取りと被験者への聞き取り調査を併せて行ったからこそ、としか思えないのだが、そのデータを教えてくれないところを見ると、もしかして想像を述べているだけなのだろうか。もしそうだとしたら、もう少しは想像らしく発言していただきたいと思う。「本人にも速度の低下を認識できないほど微妙なのではないかと私は想像する」だとか。

それと、この映像のロナウジーニョ(もちろんサッカーはうまい)は決してダイブ(の助走と踏み切り)がうまいとは思えず、ロナウジーニョのフォームがそうだからと言って、一般にジャンプするには踏み切りで膝と股関節を特別に深く曲げる必要がある、ということにはならない。走り幅跳びの映像なんかを見ると、「跳躍に必須の特別なタメ」なるものが、あるとしても如何に極小なのかと驚かされる。走り幅跳びの映像は、YouTubeで「Long-Jump」「Mike Powell」とかで検索すればすぐに見つかる。

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

回答日時:07/07/03 17:46
一塁は特にスタートが万全の体制ではなくて加速がつけにくいので、飛び込むよりは一歩でも加速したほうが早いからじゃないでしょうか。
バレーボールのやつ(nobio 註:ショットガンタッチのこと)は結構スピードが乗りきるので飛び込んでも速度が変わらないからじゃないですかね。勘です。

回答日時:07/07/03 18:07
一塁に向かう場合には27mしかないので、加速段階に入った瞬間にヘッドスライディングの為に減速してしまいます。結果走り抜けた方が速いという結論が出ます。
また、筋肉番付の競技では上からボールが落ちてきますよね?
そうすると、下の方が落ちてくるのには時間がかかりますよね?
だから、飛び込んで体勢を低くして、ボールに触る時間をほんの少しでも遅らせていると思います。

自信満々星人のみなさんがひしめく中で、「じゃないですかね。勘です」という謙虚な発言スタイルに出会うと思わず敬意を抱いてしまうが、敬意を抱きつつも内容にはやはり疑問を覚える。野球の塁間距離は27m あり、ショットガンタッチはその半分以下だ。どっちが加速中かと言えばショットガンタッチではなかろうか。なにしろ「図1-05」のロナウジーニョなんて、ボタンを押してからわずか6歩(ダイブを入れて7歩)しか走っておらず、とても「結構スピードが乗りきる」とは思えない。 また、野球のベースだって地面スレスレの高さにある。地面スレスレを目指すには飛び込む方が有利だというなら、野球でも飛び込めばいいのではないか。

また、「下の方」を目指すなら飛び込んで体勢を低くすべし、というのはよくわからない。足なら最初から「下の方」にある。「下の方」で触るのがいい、というだけの理由なら、ショットガンタッチでも足で行けばいいだろう。

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

ひとまずショットガンタッチについてのみですが…
あれは下がマットか何かだったと思います、なので怪我の心配が小さく思いっきり飛び込めるんだと思います
ボールをほんのちょっとでも触ればいいので、頭から飛び込んでリーチを使ったほうがいいのだと思います
野球だと下が土なりなんなりで怪我の恐れがあり、なかなか思い切りよくはいけないかもしれません(プロはともかく)

「ほんのちょっとでも触ればいい」のは野球も同じだ。床面の違いについては、つまり「怪我の心配さえなければ、野球でもヘッドダイビングしたほうが速いかも知れない」という意味だろうか。だとしたら私と同じ意見だ。

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

回答日時:07/07/04 09:39
筋肉番付の競技は空中のボールにタッチに行くもので言わば空中でのタッチ。一方でスライディングはベースタッチに行くので地面へのタッチ。空中への対応でとなればダイビングした方が早いですが、地面への対応となると走りぬけたほうが早いと思います。

回答日時:07/07/04 12:04
ちなみに真上から落ちてくる球を足で蹴る行為はサッカー選手でも難しい事です。それにあの競技は落ちてくる球の位置も微妙にズレが出ます。ただそこを駆け抜ければ自動的に足に当たるとも言い切れません。うっかり早く行き過ぎたら球が落ちきる前に自分が通過してしまうことにもなりかねません。歩幅があわなくてあわせに行ったらかえって遅くなります。球が落ちてくるタイミングに合わせて体をその位置で通過させると、タイミングの誤差は体の厚み分しかありません。人間の体は横から見たら凄く薄いですよ。左足が前の時に右足の位置に球が落ちてきたら修正が出来ません。落ちてくる球に対して落下地点を駆け抜ける行為が如何にナンセンスか、このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かります。

回答日時:07/07/04 14:09
ショットガンタッチの場合、ボールは自然落下しますから空気抵抗などの関係で多少ふらふらしながら落ちてきますし、走っているうちに微妙に自分の体がズレるということもあります。すると、ボールをタッチする体を多少修正する必要が出てきますね。それなら、足よりも手を使うほうが便利です。また目からも近いので微妙な修正がしやすいです。

Ronaldinho2008落ちてくる球の位置も微妙にズレが出るだとか、空気抵抗で多少ふらふらしながら落ちてくるとかいう話はたぶん、自分の思い込みを正当化するためならば人は如何にありもしない記憶を脳内で捏造するか(しかも善意で)、ということの一例ではないだろうか。いや二例か。右の写真(図1-06)の通り、「ショットガンタッチ」では床面に的が描いてある。私が見た範囲ではすべての試技で、球は的の中心の黒い目玉に正確に落ちていた。

ショットガンタッチは
「『プレーヤー』と『床』のどっちが先にボールに触るか」という競技だが、見方を変えれば
「『プレーヤー』と『落下するボール』のどっちが先に的に触るか」の競技とも言える。

手であろうと足であろうと、ボールより早く的に触ることができれば、ボールは床に当たらず、プレーヤー(の手か足)に当たる。地面への対応には足で踏みに行く方が有利ならば、ショットガンタッチでも踏みに行けばいいではないか。それと、「歩幅があわなくてあわせに行ったらかえって遅く」なるのは野球でも同じだ。というか上でも言ったが、その問題は野球の方がむしろ深刻ではなかろうか。「左足が前の時に右足の位置に球が落ちてきたら修正が出来」ない、なんて話もおよそナンセンスだろう。目玉はバレーボールのサイズに対して充分に小さいので、どっちの足でもいいから目玉を踏めばいい。

規定を確認したわけではないがネット上の噂によれば、ボールは床から10メートルの高さにセットされているらしい。高校物理公式集(1)によれば、物体が地球表面付近で初速ゼロから10メートルの距離を自由落下するのに要する時間は約 1.4286秒だ。実際にはボタンを押してから落下が始まるまでには機械的なタイムラグがあるだろうし、厳密なことを言えば少しは空気抵抗の影響もある。まあ、約1.5秒という理解でいいだろう(「図1-05」ではボタンを押してからボールタッチまでにちょうど45コマかかっており、このことからもこの動画が30分の1秒/コマであることが確認できる)。つまり「ショットガンタッチ」はじつは、「ボタンを押してから約1.5秒以内でいかに遠くの床に触れるか」という競技である。

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

回答日時:07/07/04 14:09
ショットガンタッチについてですが、あれはボールが上から落ちてきて、そのタイミングに合わせてボールに触れなければなりません。そして走るときどんな体勢になっているか考えてみてください。当然、前傾姿勢ですね。それを足からタッチしにいくとなると、前傾姿勢を後傾姿勢に変えなければなりません。当然、タイムロスになるわけです。それなら、ヘッドスライディングをしたほうが前傾姿勢をそのまま倒せばいいのですからこっちのほうが早いですね。
それに比べると、野球の一塁の場合はベースが地面に固定されているから自分は目標に向かって全力で走ればいいわけです。

タイミングについては、過度のオーバーランさえ気をつければ済むことだ。的に着くのが早過ぎたとしても、そこで待っていればすぐにボールは落ちて来るのだから。

そして距離が12メートルとかになれば、いかに優秀なアスリートでもオーバーランの心配はないだろう。それでも優秀過ぎて早く着き過ぎたらどうなるか。まっすぐ走って、仮に1.4 秒で的を踏んだとしよう。目指すタイミングより0.0286秒早い。これじゃあ的を通り過ぎてからボールが落下するのではなかろうか。しかし大丈夫、その心配はない。この時ボールの下面はすでに 9.6メートル落下している。通り過ぎるどころか、向こうずねに当たるはずだ。さらに百分の5秒早く、1.35秒であれば、上空107センチの位置にある。胸か腹に当たるだろう。さらに速ければ、たぶん余裕もって減速しながら、手でキャッチ(あるいはパンチ)できるだろう。つまりオーバーランを心配する必要はなく、したがって 「約1.5 秒」なんてことは忘れて、単に「床に描かれた的に、いかに早くさわれるか」という競技だと考えてよい。「落ちてくる球に対して落下地点を駆け抜ける行為が如何にナンセンスか、このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かります」と言ってる人は、失礼ながら、試した上で発言してるとは思えない。「垂直に落下してくるボールに対して脚を強く振り抜き、きれいにジャストミートする」だったらたしかに難しいだろうが、そんな必要はない。どんなに不細工でもとにかく触ればいいのである。何がそんなにナンセンスなんだろうか。まっすぐ駆け抜けて踏みに行く方が床面の的に早くさわれると思うなら、そうするべきだ(ちなみに私も、試さずに想像で発言している)。「踏みに行く」と一応書いたが、野球なら必ずベースを踏む必要があるのに対して、ショットガンタッチではそれに神経を使う必要すらない。行き過ぎて的を踏めなくても、ボールは足の甲かスネかヒザか腹か胸に当たる。

「走るときは前傾姿勢なので、足からタッチしにいくと当然タイムロスになる」「ヘッドスライディングをしたほうが前傾姿勢をそのまま倒せばいいのですからこっちのほうが早い」のであれば、野球でもヘッドスライディングの方が早いのではないだろうか。例えばイチローは一塁へは必ず「足からタッチしにいく」けれど、あれは「当然タイムロスになる」ような手段をわざと選んでいるのだろうか。

「野球の場合はベースが地面に固定されているから目標に向かって全力で走ればいいわけです」、ということなら、ショットガンタッチだって的は床面に描いてある。

そもそも、走るときは「当然、前傾姿勢ですね。それを足からタッチしにいくとなると、前傾姿勢を後傾姿勢に変えなければなりません」のような説明がいかにリアリティのない空理空論か、図1-99を見れば明らかだと思うが、どうか。

ヘッドスライディングについて(Yahoo! 知恵袋)

回答日時:2007/8/2314:53:49/回答番号:40,044,937
走っている体勢からそのまま倒れこむ事は無理です。
滑り込む体勢にするにはかがみこまなければなりません。それによって減速するのです。
かがまないようなすばらしい前傾姿勢で走れれば 別ですけど。

「それによって減速するのです」と自信満々だが、何か根拠があっての発言なんだろうか。走るという動作は「脚を後ろに蹴っては急いで前へ戻す」の繰り返しだ。「後ろへ蹴ったまま、前へ戻すのをやめる」だけで、ダイブする気がなくても否応なくダイブになるのではないか。重心を下げようと意識する必要もない。ダイブすれば重力で、「図1-04」の通り体は放物線を描いて落ちて行く。「胸、あるいは腰の高さにある手をわざわざ下に持って行くことの不合理」というような説もよく見かけるが、根拠のない思い込みだ。体が落ちて行くのに伴い、肩も手も落ちて行く。必要なのは前に手を伸ばすことだけだ。荒木や英智にインタビューしたら、「素早いヘッドスライディングのコツは、かがまないこと」とか言うんじゃないだろうか。どのていど減速するかしないかは、個人差も含め、検証しないとわからない。

そして、減速するとしてもそれだけでは足りない。その減速のぶんがリーチ60センチのアドバンテージを大幅に上回る、ということが言えない限り、「明らかに遅いです」の論証にはならない。

ヘッドスライディングと、全速力でベースを駆け抜けるのと(Yahoo! 知恵袋)

2007/6/115:44:51 回答番号:37,730,000
ベースに達する寸前に、全速で倒れ込む。
タイミングが良ければ、走り抜けるより一瞬早くなる。ただし、良くて打撲、悪くて骨折で、もう走れなくなる。

最後の一歩を全速で倒れ込むのがベスト、という説はたまに見かけるが、誤解だと思う。天井か手すりを補助に使えない限り、しゃがんだり倒れたりという下向きの動作(重心を下げる動作)の速度には限界がある。たぶん、一歩を走るより速く転ぶことはできない。それに、あと1歩の距離で倒れ始めて指先で触塁するには、かなりの技術とエネルギーを費やして、足裏が突然地面にビタッと貼り付いたかのようなブレーキをかける必要があり、はなはだしく無駄、かつ危険だ。「図1-11」を見ての印象で言うと、倒れるなら少なくとも1.5 歩以上の距離を飛び込むべきだ。

荒木雅博@日本シリーズ/2004/10/22 足ならはじめから地面の高さにある。あと1歩の距離なら「フットダイブ」、あるいは足からのスライディングに行った方が速いように思う。フットダイブについては後述する。

「怪我するに決まってる」については、このページの上の方にもう書いた。右は2004年の日本シリーズで三塁に滑り込む荒木の写真(図1-07)だが、ほぼダイレクトでベースにタッチしてそうに見えませんか。こんなことやってて、少なくとも荒木や英智がヘッスラで怪我したという話は聞いたことがない。

ちなみに「日本プロ野球記録統計解析試案」の管理人さんのブログには、「二塁到達時などに、これに近いスライディングを一時やっていたのが昔のピート・ローズ。しかしこの時はマネをした子供たちが片っ端から鎖骨を折り、レッズにクレームが嵐のように来た時期があったそうだ」という記述がある。さらに「えびけんぱぱの徒然日記>ガッツある『ヘッドスライディング』の成れの果て」は、実際に息子さんがヘッスラで骨折したという記事で、説得力ある写真付きだ。私もべつに安全だと主張するわけではない。ただ、イメージだけで『怪我必至』とか『無事では済まない』とか語るのはどうかと思う。

ヘッドスライディングは無意味?(教えて! goo)

回答日時:04/08/31 13:18
1塁へのスライディングは走りこむ方が早いと思います。スライディングする地面の摩擦係数が限りなく0に近く無い限り減速するからです、身長分が有利に感じるかも知れませんが日本人の身長170cm前後腕の長さ含めても250cm程度として倒れる速度よりも3〜4歩走る方が確実に早いからです。

回答日時:04/08/31 00:40
当然ヘッドスライディングの方が遅くなります。
一見ヘッドスライディングの方が、飛ぶのだから早く思われるかの知れませんが、実際には地面に着地した時点から急激に速度が落ちるからです。

飛んでいる最中は全く加速状態になく、等速運動でもなく、空気抵抗を受け減速している状態です、まして、着地後のスライディング中なんかは急ブレーキを掛けているような物ですね。結果として、「ヘッドスライディングするより、走り抜けたほうが速い」となるわけです。

ブレーキをかけているのと同じだから遅い、というのはよく聞く説だが、程度問題でしょう。ズザーッと長い距離を滑れば遅いのは当たり前だし、「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」ならブレーキがかかるのは触塁後なので無関係だ。その中間にさまざまな程度のブレーキがあり得る。「すべてブレーキがかかるので、すべて遅い」で片付く話ではない。

それと、「倒れる速度よりも3〜4歩走る方が確実に早い」というのは、到底事実とは思えない。すでに見た通り、トップレベルの短距離走者が全力疾走で2歩走るよりも、物体が70cmの距離を自由落下する方が余裕で速い。「3〜4歩」なんて問題外だ。なんだよ「確実に」って。根拠もなくてきとーなことを断言しないで欲しい。だいたい「3〜4歩」というのはどこから出て来るのか。3歩ならもしかすると可能かも知れないが、4歩の距離をダイビングするのはむずかしいのではなかろうか。

「日本人の身長170cm前後腕の長さ含めても250cm程度として」とあるが、これは単純に身長と腕の長さを足してるのだと思われる。腕は頭のてっぺんに生えているわけではない。身長180センチの選手が手をまっすぐ上に伸ばしても、総長220センチ程度だろう。これを「倒れることによって稼げる距離」と呼ぶとすれば、「倒れることによって稼げる距離よりも2歩走る方が確実に距離が長い」とは言える。しかしわざわざ立ち止まってから倒れるわけじゃないんだから、そんな比較は意味がない。

◆◆

「ダイブすれば推進力を失う」「飛んでいる最中は全く加速状態になく、等速運動でもなく、空気抵抗を受け減速している状態です」という主張も、その通りだとは思うが、すこし過大評価されてないか。塁間距離は27メートルちょっとあり、ベース近辺では加速の余地は、あるとしてもわずかだろう。つまり、走り抜けても大した加速状態にはなく、ほぼ等速運動中である。

全力で加速中の自転車のペダルをふいに止めたら、加速を続けた場合に比べてガクンと遅くなる。足のウラに感じる負荷がガクンと消えることでそれが実感できる。だが等速運動中なら、いくらスピードが出ていようと、ペダルにかかる負荷は空気抵抗および接地抵抗に釣り合うだけのわずかなものだ。ふいにペダルを止めても、ガクンと減速するわけではない。ダイブするということは自転車で言えば「ペダルを止めると同時に宙に浮く(接地抵抗をゼロにする)」ことに当たる。デメリットは、「厳密に言えば空気抵抗のぶんだけ、速度面ではマイナス」程度でしょう。人間の走る速度はオリンピック級でも時速たかだか36km、この速度で発生する空気抵抗なんてたかが知れている。人間の体重に比べて、事実上無視できるレベルではなかろうか。

ダイブによるリーチのアドバンテージは60センチ前後ある。4メートルの距離をダイブするとして、(延ばした指先まで人体の総長220 センチとすれば)足首の移動距離で言えば180センチだ。3メートルダイブならわずか80センチ。それだけの間に受ける空気抵抗によって、距離にして60センチぶん遅れるのか。いや60センチでようやく同等だ。「明らかに遅いです」ということが言えるには、遅れのぶんが60センチを明白に超える必要がある。あり得ないような気がするんだが、どうか。

一塁へのヘッドスライディングはやっぱり遅くなると思う

ショットガンタッチは最長でも13メートル(?)しかない。13mじゃトップスピードになる前にボールに接触する。つまり体は加速するため前傾姿勢のまま。肩の位置は低く重心よりかなり前方に出てると思う。その状態なら頭から突っ込んだ方が早い。たぶん。(中略)本塁から一塁までは27メートルとちょっと。加速の早い野球選手ならすでに上体を起こして走っている距離。だから肩の位置は高いし重心の真上あたりにきているはず。その状態からのヘッドスライディングはやはり若干タイムが遅くなるはず。

肩の位置が高いとダイブしにくい、というのは心理的にはその通りで、たしかに初心者は躊躇して遅くなるかも知れない。しかし心理的要素を除けば、肩の位置が高いとヘッドスライディングは遅くなる、と考える根拠はない。「図1-04」のように積木を倒すことを想像すると、倒れるのに要する時間は単に重心の位置に依存するのではないだろうか。もちろん重心の位置が高いと倒れるのに要する時間は長くなるわけだが、上記の計算によれば、それでも2歩走るよりは速い。

むしろ、野球では加速がほぼ終わっているから飛んでもほとんどロスはない、とも言える。上の方に、「ショットガンタッチは結構スピードが乗りきるので飛び込んでも速度が変わらない」という意見があり、こっちは逆に「ショットガンタッチはまだ加速中で前傾姿勢なので飛び込みやすい」だが、どっちも納得いかない。「ショットガンタッチはまだ加速中だから、駆け抜ければ加速できる。ダイブに行くことで失うものは大きい」のではないか。

また、重心が高い方がロングダイブが可能だ。もちろんダイブが不利だとすればロングダイブはもっと不利だろうが、ここまでのところ、ダイブが不利だという説得的な論拠は発見できない。ひとつとして、だ。

◆◆

ヘッスラは遅い、という主張の論拠として「ためらい」や「恐怖心」を挙げる人もけっこう多いようで、それも不思議だ。

  • 学童に教えるのに背面跳びとベリーロールのどっちがいいか
  • ママさんチームを率いて市民大会を目指すんだが、背面跳びとベリーロールのどっちがいいか
  • 中高年の肥満対策に背面跳びとベリーロールはどっちがいいか

などであればいくらでも議論の余地があり、答はケース・バイ・ケースだ。しかし、単に無条件で「背面跳びとベリーロールのどっちが有利か」と言ったら、高いレベルではどうか、という話でしょう、普通は。「背面跳びとベリーロールのどっちが有利か」とただ訊かれたときに、「背面跳びはどうしても恐怖心が」とか「前向いて助走しながら背中方向に反転するのですから、助走の勢いをスムースに生かすことはなかなか難しく」とか言い出す人はいない。そんな初心者レベルの課題は克服したとして、という前提の話だからだ。ヘッドスライディングに限って、何故か初心者レベルの課題が強調されるように見える。何故なのかわからない。

野球とショットガンタッチの比較についてのまとめ

多くの人は、ショットガンタッチではダイブした方が絶対に有利だと考えている。観てると実感としてそう思わざるを得ないのだろう。しかし同時に、野球では駆け抜けた方が絶対に速いと考えている。この説のルーツは不明だが、信仰は非常に強固だ。そのため多くの人は「野球とショットガンタッチはぜんぜん条件が違う」と主張する。だが、どう違うかについては、はなはだ怪しい説ばかりだ。

時として「いや、床さえ普通ならショットガンタッチでも駆け抜けた方が速い。だからこそ駆け抜けられないような床にしてあるのだ。番組的にダイブの方が絵になるから」という主張もなされる。「ダイブは遅い」と言うならばこの方が筋は通っているだろう。しかしながら、じゃあそういう人が「何故駆け抜けた方が速いと思うのか」について説得力ある説明をしてくれるのかと言えば、残念ながらそういう例には出会ったことがない。私の知る限りでは、みなさん「言うまでもなく」「当然」「明白」とか言うばかりだ。

自分自身、まっすぐ駆け抜ける方が速いと信じていた身としては、世間の常識に援護してもらいたかったのだが、そんなこんなで逆に疑念ばかりが膨らんでしまった。なんなんだこれは。みんなどうかしてるんじゃないか。「怪しいUFO目撃談」をいくつ挙げたところでUFOの存在を否定したことにはならないが、代表的なUFO目撃談が怪しければ、とりあえず疑わしいと思った方がいい。

もしかすると「ヘッスラが遅い」というのは迷信なのではないか。一度は真剣にそう考えてみてもいいのではないか。

ショットガンタッチも、たぶん一般的にはヘッドダイブの方が有利だと思う。ただ、あれはあまりに距離が短い。ボタンを押してから最大でも8歩、まだまだ加速の余地は大きい。だから野球に比べて、最後の一歩を失うことのデメリットは大きいはずだ。個人の適正によっては「駆け抜け」にトライする価値はあると思う。最後の一歩は床が柔らかい上に表皮が向こう側に滑るように作ってあるようだが、手前方向には滑らないみたいなので、1歩くらいなんとかなるんじゃなかろうか。

▼野球とショットガンタッチの違いでひとつだけ私が思いつくのは、あれで走り抜けるのはたぶん「怖い」んじゃないか、ということだ。ボールが顔面に当たりそうだったら余裕で手でパンチできると思うが、ギリギリのタイミングなら足元あたりにボールが来るわけで、それは怖いのではないか。万一絶妙のタイミングでボール踏んじゃったら捻挫するかも、とか考えたり。だって全力疾走してる短距離走者の足元にバレーボールを放り投げたりしたら、危険じゃないですか。なんとなくそんな気がする。

だから純然たる駆け抜けよりも、「足からのスライディング」あるいは「軽いフットダイブ」の方がいいかも知れない。足からのスライディングなんて遅いに決まってる、と多くの人は考えているだろうが、それも疑ってみる価値はある。
ヘッドスライディング:foot-dive

フット・ダイブ

イチロー・スズキは決して一塁にヘッドスライディングしない。2008年現在の日本でイチローはかなりきょくたんに神格化されているので、まっすぐ駆け抜ける方がはやいとイチローが考えてる以上それが正しいんだろ、みたいな意見もけっこう見かける。しかしイチローは、まっすぐ駆け抜けるのがいちばんはやいとは、考えていない。この写真が証拠だ。

突っかい棒のように脚を前へ突き出して一塁ベースを踏みにいく。左:今江敏晃、右:イチロー

ギリギリのタイミングの時にはよく、この写真のように突っかい棒のように(ブレーキをかけるようでもある)脚を前へ突き出してベースを踏みにいく。言わば「片足飛び込み」あるいは「軽いフットダイビング」だ。明らかにイチロー(を含むたいていの野球選手)は、まっすぐ駆け抜けるより「軽いフットダイビング」の方が(速度が速いかどうかはともかく)触塁が早いと考えている。そして「軽いフットダイビング」と「脚からのスライディング」の境界は、下図の通り、微妙だ。

「軽いフットダイビング」と「脚からのスライディング」はよく似ている。

1:    イチローはふつうに駆け抜けるよりも「軽いフットダイビング」をした方が触塁は早いと考えている。
2:    「軽いフットダイビング」と「脚からのスライディング(ダイビング?)」の境界は微妙だ。
3:    微妙にどっちが有利かは不明だが、少なくともリーチの点では後者が有利だ。

以上から何がわかるかというと、「スライディング(ダイビング)なんて遅いに決まってる」という、あれほど強固に見えた確信(イチロー自身もそういう確信を持ってるようだが)は、案外微妙だということだ。「駆け抜けより脚からのスライディングの方が速い」「ヘッスラはさらに速い」という実験データも存在する。

ヘッドスライディング:04

実験データ

実験してみたらヘッドスライディング(というかダイビング)の方が速かった、というデータは複数見たことがあるが、逆のはひとつも知らない。

例えば少年野球の指導者「紫電改」さんの実験では、打席から一塁まで(スライディングの技術さえあれば)「駆け抜けよりヘッスラが、0.1 から0.3 秒ほど速い」という結果が出たらしい。この人自身が長年「ヘッスラは遅い」と信じ込んでいて、結果を見て驚いたそうだ。で、測ってみたら意外や意外、うまい子に限って言えばヘッスラの方が速いんですよ、と、チームの父兄や野球仲間に話すと、「ほとんどが『そんな事はない!』『走り抜けたほうが絶対速い!』と」いう反応だと書いておられる。ただ計測の精度は不明。

また、萬野修平さんという人が「駆け抜け」「ヘッドスライディング(以下ヘッスラと略記)」「ベントレッグスライディング(以下足スラと略記」「立ち止まり」の4種のうちどれが速いのか、早稲田大学の男子ソフトボール部員11名で実験したデータがある。早稲田のスポーツ科学部の卒論らしい。

被験者は、ソフトボールでの1-2 塁間(18.29m)で(中略)4 つの条件での走塁を行った。その走塁を側面からビデオカメラ60 コマ/秒で撮影した。撮影したビデオより、4 つの条件下で1 塁ベースの離塁から、2 塁ベースに到達するまでのコマ数(タイム)を求めた。また、実験後に被験者へ質問を行い、選手の4 つの条件に対する主観的な情報も集めた。

スポーツ科学部で学んだ四年間の集大成だったら、11人とかじゃなく 100人くらいはやってちょうだいよ、と言いたいが、仕方ない。結果は

・計測によれば11名中8名が、4種のうちヘッスラ最速だった。
・全試行中の最速記録も、ヘッスラによるものだった。
・全被験者の平均を見ると、速い順に「ヘッスラ」>「足スラ」>「駆け抜け」>「立ち止まり」だった。
・平均で「ヘッスラ」「足スラ」「駆け抜け」の差はそれぞれ百分の3秒、「駆け抜け」と「立ち止まり」の差は百分の7秒だった。

となっている。つまり「ヘッスラ」は「駆け抜け」より百分の6秒速い、と。サンプルがわずか11名だということを考えると、これを「ヘッスラの方が速いという明確なデータ」だとか考えるべきではないと思う(しかも、疲労が結果に影響してたら意味ないと思うんだが、どういう順序でどういうインターバルをはさんで走った、というような説明も見当たらない。ひとり何本ずつ計測したのかも不明。こうして貴重な実験データの恩恵を享受させてもらいながらこんなことを言うのは心苦しいが、卒論ってこんなレベルでいいんだろうか。もしかするとこれは卒論そのものではなく、そのほんの一部なのかも知れない)が、それでもとりあえず

「ヘッスラなんて絶対遅い、というのを疑い得るデータ」

くらいは言ってもいいだろう。ちなみに2008年7月8日現在、Wikipediaの「スライディング」の項の「ノート」で、萬野修平論文は統計処理が甘いので引用の価値なし、との意見に対して Panpulhaさんという人が、「甘いかも知れんけど、だとしても、少なくとも萬野修平氏は測った。いっさいなんのデータも示さず論拠も挙げず『当然ながら、明らかに、ヘッスラなんて遅いに決まってます』と念仏唱えるよりかは百倍マシ」と主張しておられる(原文はもっと端正で上品)。正論だ。

百分の6秒というのは「図1-05」で言うとほぼ2コマ、「図1-11」で言うとほぼ1コマに相当する。「足スラ」も意外な健闘ぶりだが、脚のリーチだってなかなか侮れないことは「図1-09」「図1-10」からも感じられるだろう。

鈴木隆行

◆◆

さらに「主観的な情報も集めた」の方はどうなったか。

実験後に行った質問では、『4 つの条件の中で「駆け抜け」が最も速く、次に速いのが「ベントレッグスライディング」』と被験者全員が回答した。

とある。たぶん走った直後に聞いたのだろう。ストップウォッチを使ってないとすると、質問者の側にも予断や誘導が起き得ない時点だ。聞いてみると全員が「実感として駆け抜け最速だった」と答えた。その後ビデオのコマ数を数えてみたら、11名中8名がヘッスラ最速だった、と。衝撃の結果だ。経験者の体感に基づく証言はアテにならん、たとえイチローの主観であっても、と考えるべきだろう。

ヘッドスライディング:05

あらためてショットガンタッチ

60センチの歩幅で1秒2歩のペースで歩けば秒速120センチ、というように、ストライド(歩幅)にピッチ(秒あたりの歩数)をかけたものが足の速さである。足が速い人はストライドが長いのかピッチが速いのかと言えばそりゃもちろん両方だが、人類の場合、全力疾走時のピッチは毎秒4歩がほぼ限界で、それを上回るのは難しいとされる。じゃあ、ストライドを伸ばそう。・・・と、意識すると、少しでも前方に足を着地させたくなるのが人情だ。しかしそれだと自分に突っかい棒をかけることになり、むしろ遅くなる。ストライドを伸ばすには、股関節を動かす筋肉を鍛え、「着地している間に体を前方に移動させる力」を高めることが肝心なのだ。

・・・と、『DVD 日本人に適した最速の走り方(西東社/\1,500)』という本に書いてあった。なるほどそういうものか。YouTubeで1992年バルセロナと2004年アテネのオリンピック男子100m決勝の映像を見てみたら、たしかに多くの選手が50歩弱で走っている。10秒前後で50歩弱ということは、平均して毎秒5歩弱か。スタート直後は平均よりピッチが速いに違いないので、なるほど「全力疾走時のピッチは毎秒4歩がほぼ限界」に符合する。一方歩幅は、100mを50歩弱だから平均でも2メートルを超えているということで、スタート直後は平均よりかなり狭いことを考えると、短距離走のエキスパートの全力疾走時の歩幅は2メートルを大きく上回るらしい。へー。というわけで、歩幅を意識しながらあらためてロナウジーニョの走りを図にしてみよう。「踊るスパイダーマン」という有名なGIFアニメがあるが、目指すはあんなイメージだ。

Ronaldinho Gaucho in "SHOT-GUN Touch" |「筋肉番付 2008」 | TBS

「踊るスパイダーマン」には程遠いが、こうなりました。1コマ当たり15分の1秒。これは信用していただいていい。信用できないのは歩幅だ。目分量で描きました。どの程度正確に描けているのか、それはみなさん、映像と見比べて判断してください。まあまあリアルなんじゃないか、と自分では思うんだけど。

Ronaldinho 左から1歩ずつ「V」「W」「X」「Y」「Z」と呼ぶとして、右のように(図1-12)「X」以降は明らかにダイブを意識して重心を下げており、そのためストライドが狭くなっている。

もちろんここでロナウジーニョのストライドが狭いのは、走り出したばかりで加速が不充分だから(ストライドが狭いから遅いとも言えるが、まだスピードが乗ってないからストライドが出ないとも言える。ちなみに「X」は、ボタンを押してから5歩目)だが、それだけではなく、重心の下降が影響している。標準的な走りでは着地と着地の間に両足が宙に浮く時間があり、移動距離をいちばん大きく稼げるのはそこだ。重心を下げようと意識すると、それがなくなる。或いはスケールダウンする。サッカー選手が低空の球にダイビングヘッドに行く場合には体勢を低くして飛び込むのが当然なので(想像)、そういうことも関係あるのかも知れない。

「X」以降をダイブに行かずに走り抜けたらどうなるのだろうか。『DVD 日本人に適した最速の走り方』に載っている理想のランニングフォームは、こんな感じだ。ストライドは身長くらい。

躍動感のない、素人目にはつまらないフォームに見えるが、リアリズムとはそういうものかも知れない。バーリトゥードがプロレスに比べて地味なのと同じか。「人類の場合ピッチは毎秒4歩(すなわち、1歩を四分割すると1コマあたり16分の1秒)が限界」という記述を信じるなら、この図の1コマを「おおよそ15分の1秒」と考えてもいいと思う。それなら「図1-11」と同じだ。だから、「X」以降をこれに置き換えてみよう。

dive or run

置き換えてみたらたまたま最後の1歩が微妙に狭いので、そこは「フットダイブ」させてみた。こんなにうまくいくのかどうかわからんけど、まあいいじゃないですか。するとご覧の通り、理想のスプリント走法で真っすぐ走り抜け、最後の1歩を理想的に「フットダイブ」した場合、ロナウジーニョのダイブとほぼ同着、という結果になった。もちろんここでのロナウジーニョはまだ数歩しか走ってない段階なので、理想のフォームに置き換えて比べるのは酷なんだが。

それにしても1.5 歩の距離を一息に飛び込むことの有利さは圧倒的だ。コマ「14」の時点では上がかなり遅れているのに、そこから一気に挽回している。「ダイブすると最後の数歩を失うから遅い」とよく言われるが、この図を見ると「失う」という言葉がふさわしいのかどうか怪しくなる。「カットする」「省略する」「省く」と呼ぶ方が実情に近いのではないか。

ダイブのデメリットは飛んだ後にはなく、飛ぶ前にある。人は跳ぶための予備動作として重心を下げがちで、するとストライドが狭くなり、遅くなるのだ。ここでのロナウジーニョはダイブへの予備動作に少なくとも2歩(図のXとY)を費やしており、大いに改善の余地がある。

上の方に書いたことを繰り返すが、走るという動作は「脚を後ろに蹴っては急いで前へ戻す」の繰り返しだ。「後ろへ蹴ったまま、前へ戻すのをやめる」だけで、ダイブする気がなくても否応なくダイブになる。重心を下げようと意識する必要もない。飛べば重力で、自然に体は放物線を描いて落ちて行く。というわけで、私が考える最速のヘッドスライディングは下図「C」です。

ideal dive

これで最後の1歩(「Z」)をカットでき、1コマ、つまり 15分の1秒(0.06666666666 秒)だけ、「走り抜け、プラス、軽いフットダイブ」より速いことになる。この図は

1コマ15分の1秒 / それが4コマで1歩 / 1歩のストライドは180センチ

を想定してるのだから、15分の1秒は単純計算では45センチに相当する。45センチねえ・・・「図1-01」を見るとそこまでの差がつくはずはないと思えるが、これは「1コマ15分の1秒、すなわち45cm」を最少単位とした乱暴なモデルなので、仕方がない。

いずれにせよ目分量と想像と勝手な理想化に基づく無茶な考察なんだが、これによるならば理想のダイブは「理想の駆け抜け、プラス、軽いフットダイブ」より、圧倒的かどうかはともかく、けっこう速い(というか触塁が早い)のではないかと思われる。危険と引換えにするほどの価値があるかどうかは、なんとも言えない。私としてはべつに「ヘッスラは駆け抜けより速い」と主張したいわけではない。どっちでもいい。ただ「言うまでもなく遅い」「当然ながら遅い」「ゼッタイ遅いに決まっている」「明白です」「争いのない事実です」みたいな多数派の自信満々ぶりには疑問の余地がある、と主張したい。

◆◆

理想的に成功した場合同士を比べるだけでなく、安定性というか、「百回中何回成功するか」とか、「あまりうまくいかなかった場合にはどっちがマシか」なども考慮しないと実践的議論とは言えない、とのご意見もありましょう。その通りだが、私としてはべつに「ヘッスラが絶対有利」と主張したいわけではない。それはどっちでもよく、以下同文。安定性についての議論を持ち出す人はなぜかヘッスラ懐疑派に多いようだが、駆け抜けとヘッスラのどっちが安定的かは今のところ不明だ。駆け抜ける場合、野球では的確なタイミングでベースを踏む必要があり、場合によっては左足で行くしかないという状況もあったりするだろうし、そんなことをいっさい心配する必要のない陸上スプリント競技の駆け抜けに較べれば、はるかにむずかしい。もしかするとヘッスラの方が安定的かも知れない。そういう可能性はじゅうぶんある。

で、どっちが安定しているにせよ、理想的に成功した場合についての考察は無益ではないだろう。少なくとも迷信を固く信じてるよりは百倍マシだ。ただ、以下は上に書いた荒木の「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」の後追い記事。

荒木「全身痛い」 7・9ヘッドスライディング後遺症(名古屋タイムス)

 中日の荒木雅博内野手(30)が「ヘッドスライディング後遺症」に悩まされている。3日の阪神戦(甲子園)の八回にセーフティーバントを試み、一塁へヘッドスライディング。アウトになったものの、落合博満監督(54)は「ああいうやつがいる限り大丈夫」と賛辞を送った。だが体へのダメージが大きく、思い切りプレーできない状態に陥っている。
 ユニホームが破れ、ぼろぼろになったヘッドスライディングから5日がたった8日の広島戦前、荒木は「まだ体全体が痛い。全身に(痛み止めの)注射を打ちたいくらい」と「症状」を話した。気迫あふれるプレーの衝撃は、それほど大きかった。
 手負いの切り込み隊長は「バットが振れない」と嘆く。3日の阪神戦まで7試合連続で安打を放ち、打撃は上昇気配をみせていたが、その後4試合は19打数2安打の打率1割5厘。体が思うように動かない。
 守備にも影響。「できればあまり飛び込みたくない」と話しており、ダイビングキャッチに不安を感じている。8日の広島戦ではダイビングをためらって一、二塁間のゴロを捕球できずに悔しがる場面があった。
 今季から中日の選手会長に就任。「何とかチームを鼓舞しよう」との思いが強い。気持ちを前面に押し出す選手が少ないチーム。だから荒木はリスクを承知でヘッドスライディングした。
 中日は8日の広島戦に敗れて3連敗。首位阪神に今季最大の12・5ゲーム差をつけられ、目標を見失っている。今は2位を死守することに全力を注がなければならない。このままでは荒木が高い代償を払っただけになってしまう。(高柳 隆)
(2008年7月9日更新)

やっぱり危ないのだろうか。通常の「ズザー」と「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」の違いは、すべってから触塁するか触塁後にすべるかだけなので、なぜそんなに全身打撲になるのか理解できないんだが。









ヘッスラの話は以上でひととおりおしまいです。以下は蛇足。







ヘッドスライディング:06

前傾ダイブは瞬発力を増すか

2008年2月現在、男子走り幅跳びの世界記録は、Wikipediaによればほぼ9メートルだ(この記録は16年間破られていない。2位の記録に至っては40年近く、3位以下に落ちていない)。上の方に「4歩の距離をダイビングするのはむずかしい」なんて書いてしまったが、人間は9メートルも跳べるのか。日本記録は 8m25。

男子走り幅跳び・世界歴代10傑
距離名前所属日付
018m95マイク・パウエルアメリカ合衆国1991年8月30日
028m90ボブ・ビーモンアメリカ合衆国1968年10月18日
038m87カール・ルイスアメリカ合衆国1991年8月30日
048m86ロベルト・エミアンソビエト連邦1987年5月22日
058m74ラリー・マイリックスアメリカ合衆国1988年7月18日
058m74エリック・ウォルダーアメリカ合衆国1994年4月2日
078m71イバン・ペドロソキューバ1995年7月18日
088m63K-S・トンプソンアメリカ合衆国1994年7月4日
098m62ジェームス・ベックフォードジャマイカ1997年4月5日
108m60ドワイト・フィリップスアメリカ合衆国2004年8月2日
日本記録
JPN018m25森長正樹日本大学1992年5月5日

ちなみにパウエルとルイスの記録はいずれも、世界陸上東京大会6日目、男子走り幅跳び決勝でのもの。

◆◆

ダイブのメリットはリーチ。ダイブは速くないけど早い。速度に関しては、所詮走るより速くは跳べないのだから、走って来た速度を少しでもロスなく生かすのがよい・・・と、ここまでの仮の結論はそういうことだ。だがしかし。ダイブのメリットはほんとうにリーチだけだろうか。瞬発力、はどうか。「前傾してダイブにいくと強く地面を蹴ることができるため、走るより速く跳べる」のではないか。そういう気分も未だ捨てられない。現に下の通り、ロナウジーニョのダイブの図(既出)と理想ランの図(既出)を比べれば、ダイブ中の重心移動速度は理想的駆け抜けを上回っている。

ダイブ中の重心移動速度は理想的駆け抜けよりも速い

こんな下手糞、かつ目分量で描いた図を挙げて「現に」なんて言うのはおかしいようだが、この図Aが15分の1秒単位なのは間違いないし、Bを15分の1秒単位と考えるのは妥当と思われるし、Aの飛び込む距離は映像と見比べて大き過ぎるとは思えないし、Bの歩幅も小さ過ぎるとは思えない(むしろ理想化し過ぎて広過ぎだと思う。それでもダイブより遅い)ので、大筋ではそれほどデタラメな推測ではない。やはり前傾して身をたわめると地面を強く蹴れるのではないか。

下図Aは駆け抜けの、Bはダイブにいく直前のフォーム(の例)。この時点で両者のスピードは同じだとして、少しでも強く地面を蹴り、少しでも速度の乗ったロケットダッシュをキメたいなら、どっちの姿勢が有利だろう。

前傾姿勢のメリット

3歩以上先を考えるのであればAだろうが、「次の瞬間」だけの勝負なら、私なら断然Bの姿勢をとる。まず蹴り足の形が違う。ヒザと股関節の曲がりが深く、全身がZ字状のシルエットを作り、そのバネを使ってビョーンとカエルのように飛び出せそうだ。頭部という重いパーツがそのバネの目指す直線方向上にある(Aに比べれば、ということだが)のも力学的にシンプルで、全体としてバレーボールの選手がジャンプする時の形に近い。短距離のクラウチングスタートの形に近いとも言える。相撲取りAと相撲取りBが向き合って激突すれば、やはりBが一気に押し込みそうに見える。要するに瞬発力を期待させる。

それと、前傾しようがしまいがヘッドダイビング全般に言えることだが、上がってる方の脚(この図でいうと右脚)を前方に運ぶ必要がない、ということがある。ふつうに走る場合は「着地してる脚で体の重心を前に運びつつ、同時に後ろの脚を重心よりさらに前に運ぶ(振り出す)」必要があるが、ダイブにはその必要がない。だから重心を勢いよく発射することに専念できる。

後ろの脚を振り出すには、重心(および上体)を高く保つ必要もある。両足が宙に浮いた状態から着地する瞬間は言わば「落下中」だ。走り続けるには、落下して来た重心を着地した前足で受け止め、上へ押し戻さなくてはならない。そうやって体の前にスペースを確保しておかないと、前方への振り出しが小さくなり、ストライドが狭くなるのだ。いや、ナンバ走りは重心を無理に高くしないんだよ、とか言いたい人がいるかも知れないが、ナンバ走りであれなんであれ、走り続ける以上は重心の高さをキープしなくてはならないことに変わりはない。ダイブに行く最後のひと蹴りにはその心配もない(少ない)。倒れ込む覚悟をすでに固めてるのであるから、上へ押し戻す作業の必要性は小さくなるだろう。蹴る方向で言うと下向き成分が少なくなり、そのぶん後方に集中できる。つまり(靴裏のグリップ力さえあれば)前方へ強くダッシュできるということだ。

◆◆

世に「ダイブするためには○○する必要があるのでそのぶん遅くなる」式の主張は多いが、なんと、ここに全く逆の新理論が発見された。「駆け抜ける(走り続ける)ためには後ろから前方に(自分の重心を追い越して)脚を振り出す必要があるので、そのぶん遅い」のである。ダイブには最早「次の1歩」がないので、遠くまでは行けない。しかしベースまであと4メートルだったら、前傾姿勢からビョーンとダイブするのが最も「早いだけじゃなく、速い」のではなかろうか。ノット オンリー アーリー,バット オールソー ファースト。瞬発力のダイブ、継続力のラン。少なくともその可能性はある。

助走の段階で過度に前傾していたら歩幅が狭くなり、助走が遅くなる。しかし助走の段階で多少は前傾を始めないと、前傾が間に合わないような気もする。「後方に強く蹴ることができる」メリットと、「歩幅が狭くなる」デメリットの、どのへんで折り合いをつけるのが最速なんだろうか。

重心を前方へ運ぶスピードを殺すことなく(それどころか落下する勢いを積極的に生かしつつ)ヒザを曲げることができれば、それが最速ダイブかも知れない。さほどむずかしいことではなく、「踏み切る1歩手前まで身をかがめない」ことと、「踏み切りに行く最後の1歩は、着地しつつ前のめりに身を沈めるイメージで」のふたつを心がければ割と自然にそうなるのではないか、という気もする。だがしかし走り幅跳びの選手が踏み切りの瞬間に上図Bのような姿勢をとるのは見たことないので、やはりこんなのは妄想だろうか。否、たしかに走り幅跳びはそうだが、それとヘッスラとはぜんぜん話が違うのだろうか。引き続きそのあたりを、図に基づいて掘り下げてみたい。みたいのだが、図を描くのがなかなか大変で、いつできるかは不明です。

◆◆

その図はこの程度の精度を目指している、というデモも兼ねて、とりあえず「ショットガンタッチで真っすぐ駆け抜けてギリギリ間に合う場合、その直前のランナーとボールの位置関係はどうなっているのか」をシミュレートした図を置いておきます。バレーボールの直径は21センチ。走るフォームは『DVD 日本人に適した最速の走り方(西東社/\1,500)』に付属のDVD の「従来イイとされてきたダイナミックなフォーム」をお手本にした。「1歩0.24秒で1歩180cm」を想定している。実際には助走の短いあの競技でそこまでのスピードを出せるランナーはいないんじゃないかと思うが、当方の技術的な理由でそうなりました。

描いてみて思うに、「速い順に『ヘッスラ』>『足スラ』>『駆け抜け』」という萬野修平論文のデータは、やっぱ正しいような気がする。なんとなくだけど、見た感じで。(2008/02/07)

ショットガンタッチ

球質ヲ論ズ:キレとノビ