ヘッドスライディングは遅いのか

head-first sliding / diving

ヘッドスライディング:summary

忙しい人のために要点だけ。要点のくせに長くてすみません。


速いのか遅いのか、なかなか結論出て来んから読んでてイライラするわ、というお叱りの声をたまにいただくのですが、このページのテーマは「どっちが速いか」ではありません。どっちが速いかなんて人によるし場合にもよるし、机上の議論で結論出せるような話とちゃいますよ。例えばバタフライが平泳ぎより速いというのは2014年現在では常識ですが、それは別に科学的に証明された真理とかではなく、単に「上級者を集めて100メートル、200メートルをやってみると現状ではそうだから」に過ぎません。未来永劫にわたってそうか、1万メートルでもそうか、初心者でもそうか、老人でもそうか、などはそれぞれまた別の話。10歳児を1000人集めて実験したら、たぶん平泳ぎの方が早いでしょう。バタフライで泳げる10歳児は少数派だろうと思うので。このページのテーマは「どっちが速いか」ではなく、「ヘッスラ遅いって理屈はどれもこれもオカシイ」です。そう思って読んでいただければ、どこを読んでも結論出しまくりですので、ストレスなくお読みいただけるはずです。

◆◆

ヘッスラは明白に遅い、遅いに決まってる、という説の、根拠とされるものは、僕が知り得た限りすべてがデタラメである。それも高度なデタラメではなく、小学生でも気付く程度の素朴なデタラメばかりだ(その証拠に僕の物理の学力は小学生程度)。

具体的に言え、ということであれば、ぜんぶ読んでください。このページは長いけど、仕方ない。なぜならあまりにも多くのデタラメがまかり通ってきたから。僕にはヘッスラについて積極的に主張したいような意見は特になく、書いてるのはほぼすべて「んなバカな理屈はないだろ」という、受動(リアクション)的で消去法的なものです。

(ポエム・ここから)その説は長きにわたり、この世の王として君臨し、その正統性に異を唱える者は馬鹿と蔑まれた。馬鹿に対する集中砲火はあまりに激しく、内心に疑念を抱く者も嘲笑を怖れて口をつぐんだ。小学生以外の、分別ある大人たちは。そうして百年の時が流れた。もうそろそろ、いいのではないか。誰かが言うべきだ。王様は裸だと。大人が誰も言えないのであれば、いいよ。小学生が言おう。王様は裸だ。(/ポエム・ここまで)

◆◆

簡単な要約は以上です。続いて、少し長めの要約を書きます。

ヘッスラ遅い論の代表格として、陸上の競走では誰もヘッスラなんてしねえだろ? というのをよく見かける。が、陸上の選手がみな駆け抜けるのは、駆け抜ければオッケーというルールだからだ。野球は駆け抜けるだけではダメで、「踏む」必要がある。だから陸上と違い、歩幅合わせを意識しなくてはならない。

理想的な駆け抜けとは、理想のフォームで、一塁ベース手前角を踏んで駆け抜けることだと定義しよう。Aという選手の一塁ベース近辺での理想の歩幅が2メートル(プラスマイナス10センチ)だとしよう。ある時ある瞬間、足のつま先から一塁ベースまで190センチ〜210センチだったら、理想的に駆け抜けることができる、と。「プラスマイナス10センチ(すなわち20センチ)の幅」というのは2メートルの10%なので、この場合、彼が理想的に駆け抜けることができるのは、10回中わずかに1回、ということになる。野球では、一塁にまっすぐ全力疾走するという機会自体が元々そんなに多くない(内野安打になりそうなケースに限る)わけだが、理想的駆け抜けは、その全力疾走のうち、わずか10%しか成立しないのだ。だとすると、ヘッスラと駆け抜けはどっちが早いか、という設問にはあんまり意味がないのかも知れない。驚きましたか、皆さん。

では、理想的でない、残りの90%はどうなるのか。狭かったら「刻む(あるいはベース奥を踏む)」しかない。広かったら下の写真のように、無理矢理最後の一歩を延ばして踏みに行く(この動作には名前がまだない。ここでは仮に片足飛び込み、影踏み飛び込み、あるいはフットダイブと呼ぶ)。少しでも草野球経験があれば、刻み駆けも片足飛び込みも、みなさんやったことある(草野球はエラーの頻度が高いので、全力疾走の頻度も高い)でしょう。ご存知の通り、陸上の競走では誰も片足飛び込みなんてしない。じゃあ、これをやってるイチローはアホなのか?

左:今江敏晃、中:イチロー、右:平野恵一
突っかい棒のように脚を前へ突き出して一塁ベースを踏みにいく。左:今江敏晃、中:イチロー、右:平野恵一

選手Aの片足飛び込みによる到達可能最大距離が260センチだとすると、ざっくり言って彼は10回中6回は大なり小なり刻み駆けを強いられ、1回は理想的に駆け抜け、3回は片足飛び込みをするだろう。一方つま先がどこに着地しようが委細構わない陸上では、100%が駆け抜け。陸上を例にして野球を考えるのは馬鹿げている。

「片足飛び込み」と「駆け抜け」と「刻み駆け」はどれが早いのかと言えば、少なくとも刻み駆けが非効率なのは間違いない。人間はオートバイではないので、半歩の距離なら半分の時間で踏める、とはいかず、短い1歩でもやっぱり1歩ぶんの時間がかかるのだ。通常、1歩走るのにかかる時間はオリンピック選手でもそこらのおっさんでも小学生でも大差なく、0.25秒程度だとされている。

10回中1回は理想的に駆け抜け、10回中6回はそれよりも非効率に駆け抜ける、と。では、残る3回は?

理想的に駆け抜けられる時には片足飛び込みはできないし、片足飛び込みが可能なケースでは理想的駆け抜けは不可能なんだから、比べることに意味はないかも知れないが、残る3回、片足飛び込みは理想的な駆け抜けよりも、たぶん早い。「重心移動は遅いかも知れないが踏むのは早い」だろう。根拠はこのアニメ。



では、片足飛び込み(仮称)とヘッスラはどっちが早いのか。答えは「ケースバイケースだがどっちが早いにしても大差ない」だ。機械判定ではなく純粋人力判定なんだから、大差ないことをあまり厳密に考えても意味はない。そもそも偶然に10回中3回しか起きないことを「どっちが早い」とか比べて意味あるのか、という気もする。もちろん少しは意味あると思うけど。

ただ、ここで主に言いたいのは、どっちが早いかではない。そんなことより、このアニメをしばらくぼーっと眺めているだけで、「理想的な駆け抜けが成立する確率は意外なほど低い」「刻み駆けが発生する確率は、意外なほど高い」ということ以外にも、いろんなことに気付くはずだ。

  • 人は走っている間、意外にもほとんどの時間は宙に浮き、推進力を失っているということ。
  • だとすると「駆け抜ければ最後の数センチまで加速できるから早い」というよく聞く主張が、かなり疑わしいということ。
  • 「ゴールを踏む(または触る)」必要がある野球においては特に、はっきり間違いだということ(陸上ではゴールラインを踏む必要はないので、ゴールライン数センチ手前に着地してもなんら不利にはならない。しかし野球で一塁ベース数センチ手前に着地したら、加速はできるかも知れないが踏むのは遅くなり、明白に不利)。
  • 片足ダイブ(仮称)が一塁ベースちょい手前の最後の一歩をあえて回避して跳躍を伸ばしていることを見れば、「跳べば推進力を失うからそのぶん必ず遅くなる」というのも単なる机上の思い込みだったということ。
  • 陸上では誰もやらない片足ダイブ(仮称)が野球において有効だということを見れば、「陸上では誰もヘッスラしねえだろ?」というのが、何の論証にもならないということ。
  • 「跳躍のためには当然ながら特別なエネルギーと予備動作を要しますのでそのぶん遅くなるのです」というようなまことしやかな説明も、机上のデタラメだということ。

僕としてはヘッスラが早いとか遅いとかいう結論は割とどうでもよく、そんなことよりこれらの気付きが共有されることを願っています。なのでみなさん、「ヘッスラはやっぱり遅いらしいですよ、誰某がテレビでそう言ってました」式のメールを僕に送ってくださらなくて結構です。それは割とどうでもいいのです。「人は走っている間ほとんどの時間は宙に浮いている、というのは間違いだ」とか、そういうメールでしたら歓迎します。

僕はヘッスラ礼賛派でも推奨派でもなく、ヘッスラが早いと主張する気もあんまりない。何度も書くが、それは割とどうでもいい。むしろ大差ない、と主張する。特にアマチュアのみなさん、一塁へのヘッスラなんて絶対にしない方がいいですよ。大差ないんだから。仮に大差あったとしても、審判がそれを認識できるかどうかは甚だ怪しいんだから。プロ野球だったらスローで何度もリプレイしてくれて、誤審なら誤審で大きな話題になったりもするけど、ほとんどのアマチュアの試合でそんなことはないんだから。特に左利きの人、左手は絶対使わない方がいいです。利き手を骨折することのリスクを改めて考えてみてください。

ヘッスラの練習するより、片足飛び込みを練習する方が合理的じゃないかと思う。具体的には

  • 自分の到達可能最大距離を把握する。
  • 到達可能な距離かどうか、走りながら目視で判断できるようにする。
  • 自分の到達可能最大距離を伸ばす。新たな距離を把握し、目視で判断できるようにする。

以上です。

◆◆

おお、要約にしては長過ぎるが、我ながらうまく要約できた。
何度も何度も要約は試みて来たが、今回のは初めて「言いたい事は全部言った」感がある。
さいしょに考え始めてからこの要約に達するまでに5年かかりました。(以上 2013年1月14日

◆◆

えー、こっから下はうんざりするほど長いんですが、基本的に羅列なので、どこからどういう順番で拾い読みしても大丈夫です。どこから読むにせよ、5 - 6行読んで面白くなかったら、読むのをやめてください。我慢してそれ以上読んでも、だんだん面白くなったりはしません。というか、上の要約でほぼすべてです。というか上の要約が気に入ったので、いずれ気が向いたらこっから下は大幅にケズりたいっす。なにせ長いんでなかなか気が向きそうにないけど・・・

こっから下に書いたことで上の要約にないことと言えば、

  • ヘッスラによる怪我の実例
  • ヘッスラで、踏み切ってから落ちるまでは何秒か
  • ショットガンタッチについてのもろもろ(ここは結構おもしろいはず)
  • ヘッスラと駆け抜けを比較した実験データ
  • 走り幅跳びの究極のフォーム
  • 背面跳び誕生秘話(単に Wikipedia のコピペ)

くらい。物好きな人だけ読んでください。新幹線の中で時間を潰すにはけっこう最適じゃないかと思います。ちなみに僕の野球経験は草野球のみでヘッスラ経験ゼロですが、バレーボール経験があるのでフライングレシーブなら割と上手かったです。今にして思えばこれを書いた動機の中には、「フライングレシーブが無意味なわけないじゃん」というのがあった、ような気もします。

匿名さんから、キミドリがキンキンして読みにくいというメールをいただいたので、色彩計画改造中です。こっから下は以上の要約より何年も前に書いたもので、かなり冗長なので、忙しい人は読まないでください。
















ヘッドスライディング:introduction

ほんとうのところどうなのか


ヘッドスライディングより真っすぐ駆け抜けた方が速い、という説は、あまりにも強固に信じられている。「怪我のリスクとかはさておき、はやさだけで言ったら頭からダイブした方がはやいんじゃないか」なんて言ったら大変だ。ナニ言っとるや、そんなわけないわ、絶対遅いって、決まっとるがや、おまさんアタマ大丈夫かや、という激烈な反応が返ってくる。その論拠としてネット上でよく見かけるのは「言うまでもなく」「当然ながら」だ。Wikipediaの「スライディング」の項の「履歴」を見ると、例えば「2007年5月13日 (日) 16:07時点における版」にはこういう記述がある。

打者走者の一塁へのスライディングは、本来全く必要性が無い。(中略)当然ながらスライディングよりも走りぬけたほうが速いから、早く一塁に達するために、通常はスライディングを行わず、そのまま一塁を踏んで駆け抜ける。

もちろん」とか「明らかに」なども多く用いられる。

「当然ながら」が論拠と呼べないのは言うまでもないと思うが、論拠の必要性すら意識されないまでに当然視されている現状の、ひとつの理由はたぶん、素人受けする派手なプレーだからだろう。クルマの世界におけるドリフト走行のようなものだ。ドリフト? はん、確かに派手で速そうに見えるだろうが、オレらから言わせりゃあんなものは無意味なケツ振りダンスよ。本当に速いのはグリップ走行よ。そう発言する人はしばしば得意げに鼻の穴をふくらませ、素人を見下ろす目線になる(想像)。正直なところ、「ヘッスラ? ププッ、宙を飛ぶから速いってか?」と言う人々の口調にも似たものを感じることが(たまに)ある。素人受けするものを無意味だと貶すのは、通っぽくてカッコイイのである。「推進力を失う上に、ズルズル滑れば摩擦で減速するばかり」と言われるところなんかも、ヘッドスライディングとドリフト走行は妙に似ている。

ドリフトにもいろいろあるんだろうが、ヘッドスライディングにもいろいろある。仮に、ベースのはるか手前で踏み切ってズルズル・ズザーーーッと滑るのを「ズザー」、荒木雅博や蔵本英智が見せるような、滑る距離が極少(場合によってはゼロ)なのを「ダイブ」「ダイビング」または「ダイレクトダイビング」と呼ぼう。スライディングとはすなわちブレーキをかけることなので当然遅い、とかよく言われるのは「ズザー」のことだろう。それでも下図の通り、リーチの点ではアドバンテージがある。そしてダイブなら、ブレーキがかかるのは触塁後だ。

ichiro_Ronaldinho


匿名さんから最近、この図のいちばん上の踏み方はいくらなんでもあり得ないだろ、実際は誰だってもっと足を前に伸ばして前で踏むだろ、この図は駆け抜けの不利さを無理矢理強調してるだろ、というメールをいただいたのですが、僕にはそうは思えない。例えば一塁ベース近辺でのあなたの理想の歩幅が180cmだとします。ある日ある時三塁線にボテボテの打球が転がり、あなたは全力で一塁に向かいました。そしてたまたまある瞬間、着地した足の爪先から一塁までが540センチだったとします。スライディングは念頭にないとします。これ以外にどういう踏み方が可能だろうか。あえて足を前に伸ばしてもベースの奥を踏むだけで、早くはならない。3歩でこう踏むのがベストでしょう。実際には530センチだったり520センチだったりすることも多いはずで、その場合はさらに刻んで手前で踏む(あるいはベースの奥を踏む)破目になる(歩幅合わせ的に不利)。550センチだったり560センチだったりしたら「軽いフットダイブ」でベースの手前を踏めるだろう(歩幅合わせ的に有利)。このいちばん上の図は不利さを強調した図ではなく、不利と有利の中間の図だ。

この話題を語るとついつい人は「速いか遅いか」にフォーカスしがちだが、野球では(だけでなく、陸上競技も自動車レースも)じつは、速度を競うわけではない。男子100m走の世界記録保持者は「人類最速の男」と呼ばれたりするが、それはロマンチックな表現であって厳密にはちょっと違う。勝敗(アウト/セーフ)を決するのは速度(fast or slow)ではなく「どっちが先か(early or late)」だ。速くなくても早けりゃいいのだ。

陸上競技は胴体で判定する決まりなので、走者はたいてい胸を張ってゴールインする。もし「胴体に限らず体のどこか」でいいとしたらどうか。ランナーが象なら鼻を使うだろうし、人間の場合は手でしょう。手を前方に伸ばすことには速度面のマイナスがあるはずだが、リーチ(腕の長さ)を生かすことのプラスは、それをはるかに上回る(と、いうのは想像で言ってるのだが、下の写真なんか見れば明らかだと思う)。ちなみに水泳選手は、腕を真っすぐのばした体勢でタッチしないと損なので、「ゴールまであと1掻き半」と判断しても、体勢によっては1掻きで止めたりする。半掻きぶんの推進力を捨ててでもリーチの有利さをとる、すなわち

「速さを捨てて早さをとる」

のである。これは想像ではなくて、水泳選手がそう語るのを聞いたことがある。競っているのは速度ではなく早さなのだから、それが当然だろう。

100m Men's Final

では、短距離走でゴールテープが地上80センチの高さに張ってあり、それに触れないとゴールが認められないとしたらどうか。やっぱりゴールの瞬間に上体を倒して手で触りに行くでしょう。地上3センチだったらどうですか。馬なら踏みに行くだろうが、人間は(怪我のリスクを無視して言えば)ダイブが有利なような気がする。「人間も馬と同様に前肢、すなわち手をのばす」という言い方をしてもいい。下の2枚のシルエットはよく似ているではないか。

人間も馬と同様に前肢、すなわち手をのばす。


◆◆

マーティ・キーナートも、ヘッスラなんぞバカのやることだと主張している。

ヘッドスライディングは禁止せよ:Simple-憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記

スポーツジャーナリストのマーティ・キーナートは『スター選手はなぜ亡命するか』(KKベストセラーズ 1998)で次のように述べている。
絶対に無理なことでもとりあえずは死ぬ気で努力しているのだというポーズを見せることが美徳とされる日本では、誰もこの(一塁への)ヘッドスライディングを変だと思わないようで、だからこそ頻繁に目にすることができる。(p.200)
そして、アメリカではヘッドスライディングをした場合、アウトにしてしまうことすらあるらしい。
ヘッドスライディングをした場合、アメリカの審判は必ずといっていいほど、アウトのコールをするのだ。アメリカの審判はみなヘッドスライディングが走者のスピードを低下させるうえに、ケガも招きやすい無意味なプレーであることを、じゅうぶんわかっているからである。(中略)審判たちにしてみれば、スピードを低下させ、ケガの危険を冒してまで、一塁にヘッドスライディングするようなばかは、アウトとコールされても当然なのだろう。」(p.202-3)

:「アメリカではほとんど誰もが一塁へのヘッドスライディングのバカバカしさを知っている」
:「まれにやってしまうバカもいるが、そんなのは(たとえセーフでも)審判がアウトのコールをする」
という主張のようだが、ところで、しかし、事実だろうか。

たまたまだが、「メジャーリーガーが一塁にヘッドスライディングしてセーフになった」例をふたつ発見した。

ひとつは第2回WBC2次ラウンド1組第3試合、カリフォルニア州サンディエゴ、ペトコ・パークにて行われたメキシコ対キューバ戦(2009年3月17日)の記録。4回裏。もうひとつは同じ年のMLB ペナントレース、メッツ対ヤンキース戦(2009年6月27日)の記録。5回裏。高校野球は別として、プロでの一塁へのヘッドスライディングなんて、もともとあまりないプレーである。同じ年の3月と6月に北米大陸でこういうことが起きているということは、「けっこう起きてる」というか、「日本と大差ない」のではなかろうか。しかも、2例ともセーフになっている。 ▼more... アウトになった例だが、動画もひとつ見つけた。

2007年9月1日、レッドソックスのルーキー右腕クレイ・バクホルツ(Clay Buchholz 23歳)はオリオールズを相手に、メジャーデビュー2戦目(初先発)にしてノーヒットノーランという近藤真市ばりの快挙を達成した。これはその試合の七回表の映像。

先頭打者、オリオールズの四番ミゲル・テハダの放った打球はセンター前に抜けるかと見えたが、ボストンのセカンド、ダスティン・ペドロイアが必死の Diving Stop、立ち上がりざまに一塁送球。テハダは一塁ベースに向けて同じく必死のダイビング(見ればわかるが、まさに「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」)、しかし間一髪アウトッ!!!!。場内興奮の坩堝、やんやの大喝采。これが「ヘッスラなんて速度を低下させるだけの無意味なプレー」というコンセンサスがある国の光景だとは到底見えない。

僕の心証としては、この件についてのマーティ・キーナートの主張はぜんぜん信用できない。

ヘッドスライディング:Thomas Brad "Trey" Hillman

ヒルマンの意見

トレイ・ヒルマン監督時代の日本ハムは、一塁へのヘッドスライディングを禁止していたそうだ。

ヘッドスライディングは禁止せよ:Simple-憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記

プロ野球チームの日本ハムでは、1塁へのヘッドスライディングは禁止されているらしい。選手がその規則を破り、1塁へヘッドスライディングをし、負傷する出来事があった。その時、ヒルマン監督は次のようにコメントしている。
手首には小さな骨も多く、けがをしやすい。一塁にヘッドスライディングをしても走り抜けても大した差はないんだ。それ以上にリスクが大きすぎる。ファイティングスピリットの表現としては違うと思う。(asahi.com 北海道版より)

これはどっちかと言うと「ヘッスラ遅い派」に親和的な発言、に、一見、見える。実際「Simple-憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記」でもそういう文脈で紹介されている、ように読める。だけどじつはぜんぜん違う。ヒルマンは

1:    強いて言えばヘッスラの方が多少は早いのかも知れない。
2:    だが、大した差はない。
3:    その割に、怪我のリスクは大差がある。
4:    また、ファイティングスピリットの表現としてヘッスラするのは馬鹿げている。
5:    だから私のチームでは禁止する。

と言っている。僕は3には同感。プロについては、大人なんだしプロなんだからオウン・リスクでやるのもアリだと個人的には思うが、アマチュアのみなさん、ヘッスラなんてやめた方がいいですよ。ヘッスラで怪我ったってせいぜい突き指だろ、と、僕も思ってたのですが、小指付け根の骨折だとか肩の脱臼だとか手の甲の骨折だとかいう実例を知るにつれ、次第にそういう気分になりました。プロと違ってほとんど報道されることはないが、少年野球での骨折や脱臼の例も多いはずだ。特に利き手はやめた方がいいです。ここに匿名さんからいただいたメールを一部紹介します。

私は以前決勝戦1点ビハインドの最終回で先頭打者としてセーフティーバントを試み、ヘッスラした際に手を怪我した経験があります。(中略)ちなみにその試合は後続が敢えなく倒れ負けました…

結果、後のバッティングに影響するだけでなく、本来全うすべき社会人としての仕事にまで影響を及ぼしました。(バッティンググローブのグリップ力が作用し手の甲の骨が折れたからです)



怪我の話題はさておいてどっちが早いかに絞ると、ヒルマンの見解はこうだ。

1:    強いて言えばヘッスラの方が多少は早いのかも知れない。
2:    だが、大した差はない。

いずれも非常に珍しい見解である。多くの人は「走り抜けた方がもちろん、明白に、絶対に早い」と主張する。僕も長い間そう信じてきた。しかし。ヒルマンは真っ向からそれと対立する主張をしている。ほんとうのところはどうなのか。例えば、走り抜けた方が明白に早いなら、どうしてTBS 筋肉番付「ショットガンタッチ」では、誰もが頭から飛び込むのだろうか。

ヘッドスライディング:shot-gun-touch

「ヘッスラは遅い」説を疑う(ショットガンタッチとの比較)

思えば少なくとも20年間、まっすぐ駆け抜ける方が早い、と信じて疑ったことはなかった。ちょっと興味を持ったのは2007年暮れ、「五輪予選で一塁にヘッドスライディングした川崎宗則にイチローが激怒」という記事を見かけてからだ。すこし検索して「ヘッスラなんて遅いに決ってます」というのが世間の常識であることを確認し、安心した。ところが一方、「ショットガンタッチではみんな頭からいくではないか」という指摘に出会い、ギョッとした。たしかにそうだ。それに対して膨大な反論があることも知った。そもそも「ヘッスラは遅い」論とはどのようなものなのだろうか。

ベースへの滑り込みは、ベースを駆け抜けるよりも不利だと思うのですが(HATENA)

1 回答者:2007-08-09 09:49:48
駆け抜けた方がもちろん早いです。

2 回答者:2007-08-09 09:51:02
明らかにスライディングよりは走り抜けた方が早いでしょう。

4 回答者:2007-08-09 09:54:49
不利です。おっしゃる通りブレーキがかかります。ファーストへは走り抜けた方が速いです。

7 回答者:2007-08-09 14:21:51
当然ながらスライディングよりも走りぬけたほうが速いから、早く一塁に達するために、通常はスライディングを行わず、そのまま一塁を踏んで駆け抜ける。

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

ANo.9 / どんな人:経験者 / 自信:自信あり / 回答日時:07/07/04 12:04
地面に固定されたベースを踏むと言う行為においては、手で触りに行くよりも足で触りに行った方が早いことは明白です。

■ちょっとした疑問や質問はここに書いてね86■ / 物理(学問・理系)-2ちゃんねる過去ログ倉庫

773 ご冗談でしょう?名無しさん 投稿日:2008/01/05(土) 21:49:21
一旦トップスピードに乗ったのなら駆け抜けるのが一番いいのは物理的に自明。

もちろん」「明らかに」「当然ながら」「明白です(自信あり)」「自明」。宗教かこれは。かなり無気味だ。

僕の意見は上記ヒルマンコメント2項目の通りだが、こういうみなさんを見て特に思うのは「2」ですね。「ヘッドスライディングをしても走り抜けても大した差はない」。そりゃそうでしょう。所詮「最後の数メートルをどうするか」の話だ。どっちが早いとしてもまさに「タッチの差」、どうせ大した差にはならないのではないか。だからどっちが早いとしても「もちろん」とか「明らかに」とか言われることには違和感がある。

ヘッドスライディングと、全速力でベースを駆け抜けるのと(Yahoo! 知恵袋)

回答日時:2007/6/1 15:07:45 回答番号: 37,729,012
走り抜ける方が早いです。争いのない事実です。ジャンプするために踏み切る時間。ジャンプするための無駄なエネルギー。地面から1m近い高さにある手をわざわざ地面近くのベースにまで持っていく無駄な時間。様々なことを考えて、明らかにヘッドスライディングは遅いです。

ジャンプするために使う時間やエネルギーが無駄かどうかを論じるのに、それが無駄だという前提を用いるのは変でしょう。そりゃヘッスラには時間もエネルギーも使うだろうが、走り抜けるのにだって時間もエネルギーも使う。どちらが早いか、という話だ。

この人に限らず、ここまでの主張はすべて、カレーに肉は必要ですかという質問に対し、「肉を買ってくるための無駄な時間と無駄なお金、肉をカットするための無駄な手間、肉に火が通るまでの無駄な時間と無駄な光熱費、様々なことを考えて、明らかにカレーに肉は不要です。自明です。明白です」と答えてるようなものじゃないか。


実験


この図で、ほらね、ヘッスラの方が早いっしょ? と言いたいわけではない。この図で、ふたつのことを主張する。ひとつ:「地面から1m近い高さにある手をわざわざ地面近くのベースにまで持っていく無駄な時間」なんてものは机上の空論であって、実際にはそんなタイムロスは存在しないということ。ふたつ:ダイブの基本は「走ってきた勢いのままバタンと転ぶ」である、ということ。

ただし人体はカマボコ板ではなく、足は二本あるので、バタンと転ぶと言っても実際には「2歩で転ぶ」。いやバレーのフライングレシーブならそんな手間はかけないのかも知れないが、フライングレシーブは走ってない状態からいきなり飛ぶことが多いのでヘッスラとはちょっと違う。ヘッスラには2歩かけた方が効率いいような気がする。具体的には、

(2015年9月時点での想像)最後に右足で踏み切ってヘッスラする場合、予備動作はその前の左足で踏み切る瞬間に始まる(そこまでに屈まないのが理想。屈むとストライドが狭くなるから)。左足を後ろに蹴ったまま、戻さない。後ろに流す。それに呼応して上体がやや前傾する。歩きながら片足を後ろに伸ばしてみると上体が自然に前傾するのがわかるし、歩きながら上体を前傾させてみると、片足が後ろに上がるのがわかる。そんな感じ。

だがまだ転ばない。すでに右足を大きく前に振り出しているからだ。で、右足で着地。すぐに人体重心がつま先を追い越す。この一歩に限らず全ての一歩がそうなんだが、重心がつま先を追い越すと「力のモーメント」が発生して転び始めるのである。通常走行中はそれを追い足で支えて不断に阻止するんだけど、今回ばかりは積極的に転ぶ。さらに上体の前傾を深めつつ、右足で最後のキック。この時点でかなり上体の前傾が進んでる、のではないか。想像だけど。右足も蹴ったまま、戻さない。後ろに流す。蹴った0.25秒後が下図。(想像終わり)

「ヘッスラで跳んでる間に何歩走れると思ってるんだよwww」、みたいな意見もよく見かけるが、仮にヘッスラで跳んでる間に2歩走れるとしたら、その間にヘッスラで(空気抵抗を無視できるとすれば)惰性で2歩の距離を跳べることになるし、仮にヘッスラで跳んでる間に10歩走れるとしたら、その間にヘッスラで10歩の距離を跳べるわけで、何歩走れるのだろうが関係ないのではないか。ちなみに何歩走れると思ってるのか、僕の意見では「距離にして2歩前後」だ。「跳んでる間に何度地面を蹴れるか」であれば、1度ということになる(全力疾走時に1歩を走るのに要する時間は、『DVD 日本人に適した最速の走り方(西東社/¥1,500)』によれば、小学生でもトップレベルの短距離走者でも同じく 0.25 秒前後だという。2歩で0.5 秒)。




◆◆



ヘッスラの方が速いなら陸上の100m でみんなヘッスラするだろ、という説も、非常に人気がある。

ヘッドスライディングについて(MSN 相談箱)

直感とか感情論とか根性論とか物理方程式を持ち出すまでもありません。実際にハッキリとしています。1/100を争うような陸上競技の短距離走でのゴールシーンを思い出して下さい。誰一人としてスライディングなんてしませんよね。走り抜けた方が速い事はタイムが如実に語っています。

ヘッスラでゴールする選手を誰一人として見たことがないなら「タイムが如実に語っています」はないんじゃないか。

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

>駆け抜けた方が早ければ、何でそのまま走り抜けて足でタッチしに行かないんでしょう?(nobio 註:ショットガンタッチのこと)

ただ、これは、競技が違いますので何とも言えません。貴方の例えのようないいかたで逆のことを言うと、「ダイブした方が早いなら、陸上の100m走は最後にダイブして入った方が早い」と言うことになりますが。100走が最後にダイブしないのですから駆け抜ける方が早いのではないかと思いますけどね。
【野球】ヘッドスライディングは遅い?

11:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 10:57:51 S8ICS4UJ0
「100m 走で最後にヘッスラしてるか?」って聞いたらなんて答えるんだろうな。

▼more & more...
22:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 11:00:23 6sAhcU+u0
>>11
俺もヘッスラより走り抜ける方が速いとは思うけど、
100M走は胸がゴールを越えないと駄目だからその質問はおかしい。

41:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 11:06:07 Bi+cPa3h0
もしヘッドスライディングが早いのであれば、陸上の100m競争で誰かがやっているでしょ。
もしあったとして、現在は禁止になっているとかさ。そういう事実ってあるの?

44 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:06:25 ID:LLuykjqq0
オリンピック短距離走でなぜ誰も滑らないのか考えろ
答えはそこにあるだろう

49 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:07:11 ID:vSk4f0ZM0
100mは手じゃなくて胸の到達時間だから比較に出すのはどうかと思うが

141:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 11:27:21 AV+BSf7K0
陸上競技でヘッドスライディングしてゴールするやついないだろ?
駆け抜けたほうが断然早いんだよ

158 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:31:46 ID:Ec8Ofei90
ヘッドスライディングのほうが速かったら100分の1秒を争う陸上100メートル走で
ヘッドスライディングでゴールする選手がいるはず。
駆け抜けたほうが速いんだよ

167 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:34:20 ID:2GI8Yojp0
>>158
100m走は胸の到達タイムを競う競技です

173:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 11:34:54 I5eFFGq7P
もしスライディングの方が速ければ、陸上競技のゴール間際でみんなスライディングしてるw

309:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:04:05 HXzl2gw50
つか、ヘッスラのほうが速いなら、陸上の短距離競技でゴールする時に使えばいいんじゃね?

315:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:06:03 37ggmvQb0
>>309
陸上短距離は胸がゴールの基準だからヘッスラは意味がないと散々既出

332:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:10:47 HXzl2gw50
>>315
胸が基準だろうが、関係なくね?
ダイビングした際に胸がゴールライン超えればいいんだろ
タイミングの問題だけじゃん

339:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:13:20 AYVoNXq00
>>11で完璧な答がでてたw
ヘッスラのが速いとかプロが恥ずかし過ぎるわ

583:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 14:29:33 yAYwZZ7v0
ヘッドスライディングの方が早いなら
陸上100mの選手はみんな最後ヘッドスライディングするだろ

749:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 18:01:26 d8re03Jq0
ヘッドが早いんなら陸上の短距離走でもゴールの時はダイビングするだろ
そうじゃないってことはそういうことだ





Posted by at 2010年07月28日 00:30
陸上を例に出す奴の文章読まない率ハンパねえな


陸上競技場で、あんな鮫肌硬質ゴムの地面で、ランニングシャツと短パンでヘッスラできるわけないじゃん。男子ならチンチン、女子ならオッパイがペースト状に擦り潰れて血まみれになったらどうするんですか。

それはさておき。

ヘッスラの主たるメリットは腕のリーチを生かせる点にある。陸上は、指先がゴールラインに触れてもゴールと判定されないんだから、ヘッスラしても意味はない(とは言え、多少はある。胸もトルソーだが肩もトルソーだ。走って胸でゴールラインに達するよりも、ダイブして肩がゴールラインに達する方が、人体重心からのリーチは数十センチ有利なはずだ。為末大も「血まみれ&骨折覚悟なら最後は倒れ込んでゴールした方が早い」と発言している)。

いや、待ってください、みなさん。

みなさん、さっそく為末説に対する反論を考えたいところかも知れないが、この話のポイントはそこじゃない。「○○の方が早いなら陸上100mでもそうするはず」という理屈が本当に正しいのかどうか、だ。例えば今江やイチローや平野が下図のような動作(いわば「片足飛び込み」)をするのは、その方が早いと思っているからだろう。しかし、陸上100mでこんなことをする選手はひとりもいない。では、イチローがこんなことをするのは、イチローがアホだからなのか。あるいは、陸上の選手がこれをしないのは、陸上の選手がアホだからなのか。どちらでもない。「○○の方が早いなら陸上100mでもそうするはず」という言い分が間違っているのだ。

左:今江敏晃、中:イチロー、右:平野恵一
突っかい棒のように脚を前へ突き出して一塁ベースを踏みにいく。左:今江敏晃、中:イチロー、右:平野恵一

陸上はゴールラインを「通過する」だけでいい。つまり「駆け抜ける」だけで。要するに駆け抜けに最適化された競技である。それが「最速を追求する」というロマンにとって都合がいいからだ。

一方野球は「通過」だけではダメで、「踏む(あるいは触る)」必要がある。また、野球は指先で触れても可だが陸上は指先が通過してもゴールとは認められない。ルールが違うんだから、野球で有効な動作が陸上にとって有効でないことは普通にあり得る。(ちなみにスピードスケートは足の爪先(ブレードの先端)でゴール判定する決まりなので、これと似た動作がよく見られる。ブレードは空中でも認められるので、その点が野球とちょっと違う。何故スピードスケートはトルソーではなくブレードの先端で計るのか。トルソーだと膝を曲げてダイブする選手が出て危険、あるいはカッチョ悪いからじゃなかろうか。んなわけないか)

高校野球の宗教

上からのボールの話(nobio 註:ショットガンタッチのこと)は確かにそうでしょう。走っていれば腕は地上1mにあり、滑り込めば腕は床の高さになるわけで、この話は条件が違いますね。

「地面すれすれの高さで触ることを目指す」という点で、ショットガンタッチはスケート以上に野球と似ている。走っていれば腕は地上1mにあり、滑り込めば腕は床の高さになる。その通り、それは野球でもショットガンタッチでも同じだ。「条件が違いますね」とあるが、何が違うのかわからない。

◆◆

ヘッドスライディングについて(BIGLOBEなんでも相談室 > 学問・教育 > 科学)

ヘッドスライディングでは跳躍するための「ため」が必要になります。これがロスとして助走の段階で速度の低下を起こしてしまうわけですが、走っている状態での「ため」の動作は微妙であり、本人にも速度の低下を認識するだけの動作ではありません。試しにその場でジャンプしてみてください、足首だけでのジャンプではほとんど飛び上がることはできず、「ため」がどれほど大事なことなのか認識できるはずです。「ため」に使う力を速度の向上に振り分けた方が実用的ではないかと思います。

また、ヘッドスライディングの動作を開始する地点も理想の場所があるはずです。一定ではないバッティング動作から走行状態に入り、歩数を合わせることにもロスが発生すると考えられます。これらを総合的に考えた場合、走り抜けた方が「安定的」に早く走り抜けられるのではないかと思います。

「足首だけでのジャンプではほとんど飛び上がることはできず、『ため』がどれほど大事なことなのか認識できるはずです」という文脈からすると、「ため」とはヒザと股関節の曲げ伸ばしを指すのだろう。その「ため」が速度の低下を招くのだと。ムチャクチャ言うなあ。ヒザと股関節を曲げずにどうやって走るのか。ヒザを曲げずに走れるのなんて、欽チャン走りだけだ。股関節を曲げずに走ることは、通常、人類にはできない。

下図1-05 は「ショットガンタッチ」でのロナウジーニョのダイブのスロー再生だが、ちょっと下手糞だと思う。わざわざ身を屈めている(結果として歩幅が狭くなってる)し、微妙によっこらしょ感がある。ダイビングヘッドを狙うなら身を屈めるのは当然なので、サッカー選手の習性なのかも知れない。

図1-05 | Ronaldinho Gaucho in "Shot-Gun Touch" | TBS「筋肉番付 」2008
Ronaldinho2008
30分の1秒/コマ


「これがロスとして助走の段階で速度の低下を起こしてしまうわけですが、走っている状態での『ため』の動作は微妙であり、本人にも速度の低下を認識するだけの動作ではありません」とまで言えるのは、よほど精密な実験を重ねて、データ取りと被験者への聞き取り調査を併せて行ったからこそ、としか思えないのだが、そのデータを教えてくれないところを見ると、もしかして想像を述べているだけなのだろうか。もしそうだとしたら、もう少しは想像らしく発言していただきたいと思う。「本人にも速度の低下を認識できないほど微妙なのではないかと私は想像する」だとか。

水平方向に身を投げ出せばよいダイブと違い、走り幅跳びは「斜め上」へ向かって跳ぶ。だから走り幅跳びの最後のひと蹴りはダイブ以上に特別なひと蹴りのはずだ。にもかかわらず、映像で見ると「跳躍に必須の特別なタメ」が、如何に極小なのかと驚かされる。走り幅跳びの映像は、YouTubeで「Long-Jump」「Mike Powell」とかで検索すればすぐに見つかる。

1991/08/30 IAAF World Championships in Tokyo


【野球】ヘッドスライディングは遅い?

639:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 15:00:56 XFSmPk8O0
走り幅跳びも飛び込むように跳んで手から砂について一回転すれば距離が伸びるはず、
でもだれもやらないのはなぜだ?
ヘッスラと関係ないけど、走り幅跳びの理想のフォームについて。 ▼more...

「飛び込むように跳んで手から砂について一回転」というと、こんなヤツだな(0:22、3人目の生還。リプレイなし)。実況が何度もカナーキーと叫んでるけど、Brian Kownacki はバッターで、奇跡の前転を決めたのは1塁走者・・・じゃないかなー。たぶん。


もうひとつ。こちらはたぶんアマチュア。素晴らしい映像だ。モンティ・パイソンみたい。こういうの見ると、怪我するからヘッスラやめろ、とかいうのが狭量なようにも無粋なようにも、思えて、来なくもない。


しかし、以前たまたま見た「トリビアの泉」によると、これを超えるフォームがあるらしい。1974年にアメリカのスポーツ力学者トム・エッカーが考案し、世界に衝撃を与え、数ヶ月で世界に広がり、しかし危険だという理由で、その年の8月にあっさり禁止された禁断の跳躍法。上のもこれも英語では同じく「Front Flip Jump」だが、日本語で言うと上のはいわば前転跳び、こっちは前宙跳びか。Wikipedia「走幅跳」の項にも「かつて前方宙返りを加えて跳躍するスタイルが存在したが、危険性が高いと判断され現在は禁止されている(これについてはトリビアの泉でも紹介された)」との記述がある。具体的にはこんな感じ。




繰り返しますが、この技は危険だという理由で、国際陸連的には禁止されました。よい子は真似しないように。


◆◆

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

回答日時:07/07/03 17:46
一塁は特にスタートが万全の体制ではなくて加速がつけにくいので、飛び込むよりは一歩でも加速したほうが早いからじゃないでしょうか。
バレーボールのやつ(nobio 註:ショットガンタッチのこと)は結構スピードが乗りきるので飛び込んでも速度が変わらないからじゃないですかね。勘です。

回答日時:07/07/03 18:07
一塁に向かう場合には27mしかないので、加速段階に入った瞬間にヘッドスライディングの為に減速してしまいます。結果走り抜けた方が速いという結論が出ます。
また、筋肉番付の競技では上からボールが落ちてきますよね?
そうすると、下の方が落ちてくるのには時間がかかりますよね?
だから、飛び込んで体勢を低くして、ボールに触る時間をほんの少しでも遅らせていると思います。

野球の塁間距離は27m あり、ショットガンタッチはその半分以下だ。どっちが加速中かと言えばショットガンタッチではなかろうか。なにしろ「図1-05」のロナウジーニョなんて、ボタンを押してからわずか6歩(ダイブを入れて7歩)しか走っておらず、とても「結構スピードが乗りきる」とは思えない。

「下の方」を目指すなら飛び込んで体勢を低くすべし、というのもわからない。野球のベースだって地面スレスレの高さにある。地面スレスレを目指すには飛び込む方が有利だというなら、野球でも飛び込んだ方がいいのではないか。足なら飛び込まなくても最初から「下の方」にある。「下の方」で触るのがいい、というだけの理由なら、ショットガンタッチでも足で行けばいいだろう。「27mしかないので走り抜けた方が速い」というのは、さらにわからない。そんなら12 - 3mしかないショットガンタッチでは、それ以上に走り抜けた方が速いことになる。

◆◆

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

ひとまずショットガンタッチについてのみですが…
あれは下がマットか何かだったと思います、なので怪我の心配が小さく思いっきり飛び込めるんだと思います
ボールをほんのちょっとでも触ればいいので、頭から飛び込んでリーチを使ったほうがいいのだと思います
野球だと下が土なりなんなりで怪我の恐れがあり、なかなか思い切りよくはいけないかもしれません(プロはともかく)

「ほんのちょっとでも触ればいい」のは野球も同じだ。床面の違いについては、つまり「怪我の心配さえなければ、野球でもヘッドダイビングしたほうが早いかも知れない」という意味だろうか。だとしたら僕と同じ意見だ。

◆◆

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

回答日時:07/07/04 12:04
ちなみに真上から落ちてくる球を足で蹴る行為はサッカー選手でも難しい事です。それにあの競技は落ちてくる球の位置も微妙にズレが出ます。ただそこを駆け抜ければ自動的に足に当たるとも言い切れません。うっかり早く行き過ぎたら球が落ちきる前に自分が通過してしまうことにもなりかねません。歩幅があわなくてあわせに行ったらかえって遅くなります。球が落ちてくるタイミングに合わせて体をその位置で通過させると、タイミングの誤差は体の厚み分しかありません。人間の体は横から見たら凄く薄いですよ。左足が前の時に右足の位置に球が落ちてきたら修正が出来ません。落ちてくる球に対して落下地点を駆け抜ける行為が如何にナンセンスか、このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かります。

回答日時:07/07/04 14:09
ショットガンタッチの場合、ボールは自然落下しますから空気抵抗などの関係で多少ふらふらしながら落ちてきますし、走っているうちに微妙に自分の体がズレるということもあります。すると、ボールをタッチする体を多少修正する必要が出てきますね。それなら、足よりも手を使うほうが便利です。また目からも近いので微妙な修正がしやすいです。

落ちてくる球の位置も微妙にズレが出るだとか、空気抵抗で多少ふらふらしながら落ちてくるとかいう話はたぶん、自分の思い込みを正当化するためならば人は如何にありもしない記憶を脳内で捏造するか(しかも善意で)、ということの一例ではないだろうか。いや二例か。下の写真の通り、ショットガンタッチでは床面に的が描いてある。僕が見た範囲ではすべての試技で、球は的の中心の黒い目玉に正確に落ちていた。(この写真でボールの残像が垂直でなく放物線状に見えるのは、軌跡がブレてるのではなく、カメラがロナウジーニョを追って左から右にクビを振ってるから)

図1-06 | Ronaldinho Gaucho in "Shot-Gun Touch" | TBS「筋肉番付 」2008
赤い的が床に描いてある


「サッカー選手でも難しい」というのはたぶんボレーシュートのことだと思う。落ちてくる球にボレーを合わせて正確にコントロールするのは確かにサッカー選手でも難しいプレーだが、ショットガンタッチとは何の関係もないだろう。

「タイミングの誤差は体の厚み分しか」ない、「人間の体は横から見たら凄く薄い」「このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かります」ということだが、この人自身、試した上で発言しているとは思えない。

まっすぐ駆け抜ける人体を「一定速度で水平移動する高さ180cmの直立したヌリカベ」だと考えると、なるほど「タイミングの誤差の許容範囲は壁の厚みぶんしかない」ように、一見思われるが、誤解だ。べつに脳天でボールを受ける必要はなく、顔面(の高さ)でも胸(の高さ)でも腹(の高さ)でも膝(の高さ)でもいい。つまり許容範囲はヨコにないぶん、タテにある。10mの高さから落下するバレーボールの下面が「上空180cm地点」まで落ちるには約1.297秒、「床面スレスレ」までは約1.428秒、その間 0.13秒。その間であればいつ落下点を通過しても、ヌリカベのどこかの高さに当たる。優秀なランナーなら1メートル以上走る時間だ。誤差の許容範囲はヨコに換算すれば1メートル以上ある、ということになる。(下図に表示される秒数は、ボタンを押してからの時間ではなく、ボールが落下を始めてからの時間)

ショットガンタッチのアニメーション図解

また、脳天でボールを受ける必要がない、だけでなく、実際の人体はヌリカベではないし、「一定速度で水平移動する」必要もない。ゆうゆうクリアできる距離の場合、タイミングを合わせないと行き過ぎてしまうわけだが、ゆうゆうクリアできる距離なら、減速しつつ、余裕を持って手でキャッチするなりパンチするなり、あるいは落下地点で立ち止まって落ちてくるボールを待つなり、いずれにしてもタイミングを合わせるのは簡単だろう。これは実験せずに想像で発言してるのだが、このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かるのではないだろうか。下のアニメーションを見る限り、まっすぐ走って頭頂部もしくは顔面に当たるとしたら、タイミング的にはけっこう余裕綽々で、プレイヤーの実感として「ゆうゆうクリアできる距離」じゃないかと思う。

ショットガンタッチのアニメーション図解-2

では、距離が限界ギリギリに近付いてくるとタイミング合わせがシビアになるのか。たぶん、ならない。限界ギリギリに近付いてきたら、単に全力で走ればいい。

「限界ギリギリの距離」イコール「全力で走ればギリギリ触れる/あるいはギリギリ触れない」距離だ。限界ギリギリの距離での結果はどうしたって「ギリギリ触れる」か「ギリギリ触れない」のどちらかになる。つまり、限界ギリギリの距離に近付くにつれ、心配しなくてもタイミングは自然にピンポイントに収斂していく。しかも落ちてくる位置は床に描いてあるのだから、じつは、そもそもボールを見る必要すらなく、ただ床面の的を目指して無心で全力で走ればいい。

いちおう根拠もある。ショットガンタッチで手を前方に伸ばしてダイブしたプレーヤーの、頭や背中にボールが落ちるのを、見たことがない。あいまいな印象ではあるが、印象としては、前腕部すらないですね。僕が見た成功例はすべて、手のひら、あるいは指先でボールに触れたものだ。要するに「ほぼピンポイントでタイミングが合う」か、あるいは「ギリギリ間に合わずに失敗」かの、どっちかしか見たことない。みなさん「落ちてくる球に対して駆け抜けでタイミングを合わせるのはむずかしい」と言うけれど、「落ちてくる球に対して3、4メートルも離れた地点からのダイブを合わせる」方がよっぽどむずかしくないか。駆け抜けならギリギリの段階で最後の微調整も可能だが、ダイブは跳んだら最後、なりゆき任せですよ。ところが、それでも百発百中で、ほぼピンポイントでタイミングは合うのである。少なくとも、各プレーヤーの限界あたりでは。これを「さすが一流ぞろいのアスリート」と解釈するよりは、ギリギリを競う競技の必然、と考えた方がリーズナブルだと思う。繰り返す。ショットガンタッチにおいて、

タイミングを合わせる必要は、ない。

◆◆

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

回答日時:07/07/04 09:39
筋肉番付の競技は空中のボールにタッチに行くもので言わば空中でのタッチ。一方でスライディングはベースタッチに行くので地面へのタッチ。空中への対応でとなればダイビングした方が早いですが、地面への対応となると走りぬけたほうが早いと思います。

回答日時:07/07/04 14:09
ショットガンタッチについてですが、あれはボールが上から落ちてきて、そのタイミングに合わせてボールに触れなければなりません。そして走るときどんな体勢になっているか考えてみてください。当然、前傾姿勢ですね。それを足からタッチしにいくとなると、前傾姿勢を後傾姿勢に変えなければなりません。当然、タイムロスになるわけです。それなら、ヘッドスライディングをしたほうが前傾姿勢をそのまま倒せばいいのですからこっちのほうが早いですね。
それに比べると、野球の一塁の場合はベースが地面に固定されているから自分は目標に向かって全力で走ればいいわけです。

ショットガンタッチでは空中でボールに触る必要がある、というのはその通りだが、そのために「微妙な修正」や「空中への対応」や指先の繊細なコントロールが必要だとかいうのは思い込みに過ぎない。何故なら、繰り返しになるが、静止した床の的に触ればいいからだ。

ショットガンタッチは
「『的』に落ちるより先に『ボール』に触る」ことを目指す競技だが、それは
「『ボール』が落ちるより先に『的』に触る」こととイコールだ。
手であれ足であれ、ボールより早く的(の中心の黒い目玉)に触ることができれば、結果としてボールは床に当たらず、プレーヤー(の手か足)に当たる。床に当たる前にプレーヤーに当たれば「空中で」当たったことになる。

赤い的が床に描いてある

皿に残ったクッキーの最後の1枚を狙って、ノビ太とスネ夫が同時に手を伸ばした。このとき、スネ夫の手を「落下するバレーボール」だと考えよう。クッキーが、床面の的だ。ノビ太がクッキーを確保するには、クッキーに届く前にスネ夫の手をブロックする必要がある。または、スネ夫の手が届く前にクッキーをブロックする必要がある。どっちでもいい。どっちでも、スネ夫の指先は「空中で」ノビ太の手の甲に当たるだろう。そういうことです。だから、地面への対応には足で行く方が有利だと思うならば、ショットガンタッチでも足で行くべきだ。「左足が前の時に右足の位置に球が落ちてきたら修正が出来」ない、なんてのも、およそナンセンスだろう。的(の中心の目玉)はバレーボールのサイズに対して充分に小さいので、どっちの足でもいいから目玉を踏めばいい。

「微妙な修正」が必要ないだけでなく、これも繰り返しになるが、タイミングを合わせる必要もない。風の噂ではボールは床から10メートルの高さにセットされているらしい。物体が初速ゼロから10メートルの距離を自由落下するのに要する時間は、約 1.4286秒だ。実際にはボタンを押してから落下開始までには機械的なタイムラグがあるだろうから、ここでは1.5秒ということにしておこう。

じつはショットガンタッチは、




「ボタンを押してから1.5秒で、いかに遠くの床に触れるか」



を競う競技なのだ。ボールは 1.5 秒という時間をスリリングに可視化するためのギミックに過ぎず、本質的に必要なわけではない。

ボールの存在しないショットガンタッチというものを、想像してみよう。スタート時に押す例のボタン。あれが、ストップウォッチの計測開始ボタンになっている。いっぽう床面の的はタッチセンサー式の、計測停止ボタンになっている。ストップウォッチは 1.5 秒でブザーが鳴るようにセットされている。競技者はボタンを押すや否や一目散に走り出し、計測を止める。つまり、何らかの方法で的に触る。ブザーが鳴らなければセーフ、ブザーが鳴ればアウト。ボール抜きでもじゅうぶん成立することがわかるでしょう。

ショットガンタッチで「歩幅があわなくてあわせに行ったらかえって遅くなります」というのもおかしい。それは野球の方だ。さっきから「触る」と一応書いているが、野球なら必ずベースに触る必要があるのに対して、ショットガンタッチではそれに神経を使う必要は = つまり歩幅を合わせる必要は = ない。踏めなくても的の上を駆け抜ければ(余裕の距離のうちはともかく、ギリギリの距離なら)、ボールはピンポイントのタイミングでつま先に当たるか、そうでなければギリギリアウトになる。タイミングは心配しなくても結果的に合う。

◆◆

「走るときは前傾姿勢なので、足からタッチしにいくと当然タイムロスになる」「ヘッドスライディングをしたほうが前傾姿勢をそのまま倒せばいいのですからこっちのほうが早い」のであれば、野球でもヘッドスライディングの方が早いのではないだろうか。例えばイチローは一塁へは必ず「足からタッチしにいく」けれど、あれは「当然タイムロスになる」ような手段をわざと選んでいるのだろうか。

そもそも、走るときは「当然、前傾姿勢ですね。それを足からタッチしにいくとなると、前傾姿勢を後傾姿勢に変えなければなりません」のような説明がいかにリアリティのない空理空論か、上のアニメーションを見ても下の写真を見ても明らかだと思うが、どうか。

図1-07 | Ichiro Suzuki 2009.06.03 / Yuichi Honda 2009.05.31
ちなみに右はピンクリボンキャンペーン中。一塁手はトニ・ブランコ


ヘッドスライディングについて 野球で一塁ベースに向かうとき、野球経験者などは...(Yahoo! 知恵袋)
◉Yahoo! 知恵袋 > 教養と学問、サイエンス > 数学、サイエンス

回答日時: 2007/8/23 14:53:49/回答番号: 40,044,937
走っている体勢からそのまま倒れこむ事は無理です。
滑り込む体勢にするにはかがみこまなければなりません。それによって減速するのです。
かがまないようなすばらしい前傾姿勢で走れれば 別ですけど。

「走っている体勢からそのまま倒れこむ」のがなぜ無理なのかわからない。「すばらしい前傾姿勢」とは何か、すばらしい前傾姿勢とかがんだ姿勢の違いは何か、それもわからない。

走るという動作は「脚を後ろに蹴っては急いで前へ戻して腿を振り上げ、膝下を前に伸ばして着地」の繰り返しだ。「後ろへ蹴ったまま、前へ戻すのをやめる」だけで、重力で「図1-04」の通り体は放物線を描いて落ちて行く。つまり、ダイブする気がなくても否応なくダイブになる。事前にかがむとか重心を下げるとかの予備動作が必要とは思えない。

「走って来て重心を下げて、そこから斜め上方向にジャンプ」じゃロスが多い。「走って来た水平方向の勢いをそのまま水平方向に生かす」方が速いだろう。そんなことは無理です、と主張されているように読めるが、根拠はなにも書いてない。無理なのか? 無理どころか、いちばん無理もロスもないダイブの心得じゃないかと思うんだが。荒木や英智や平野恵一にインタビューしたら、「素早いヘッドスライディングのコツは、かがまないこと」とか言うんじゃないだろうか。どのていど減速するかしないかは、個人差も含め、検証しないとわからない。

図1-08 | Keiichi Hirano 2009.05.14
ロナウジーニョのダイブよりずっと速そうだ。重心を下げずに踏み切ってそうな感じ。

◆◆

ヘッドスライディングについて 野球で一塁ベースに向かうとき、野球経験者などは...(Yahoo! 知恵袋)
◉Yahoo! 知恵袋 > 教養と学問、サイエンス > 数学、サイエンス

回答日時:2007/8/24 10:49:55
ヘッドスライディング直前の状態では、体勢は極端な前傾姿勢になってます。自分の足を前後に振った距離と上下に上げ下ろしした距離を比べればすぐに分かりますが、前者の方が遙かに長いです。極端な前傾姿勢では足を動かす距離は、後者の足の上げ下ろしの距離にしかなりませんので、上記の理由により走る速度は極端に低下します。これがまずヘッドスライディングでは急に減速する理由の第一です。

上のと同じ質疑応答より。「数学、サイエンス」カテゴリーにしてこれだ。仮に減速するとしても「急に減速」はいかにも怪しい。だって、惰性で速度を保つのがいちばん簡単なわけで、急に減速するのはそれより難しいんですよ。

そもそも、最後の一歩は地面を蹴りながら前傾し、前傾しながら蹴るわけで、極端な前傾姿勢になってから地面を蹴る、という前提が怪しい。それと、転びながら地面を蹴ることにより、最後の一歩は通常の一歩よりも長時間蹴ることができるのではないか(想像)。

平均時速50キロが限界? 人類が走る最高速度−足の接地時間が制約・米大学
2010年1月26日5時41分配信 時事通信

 人類が走って出せる速度の限界は、平均時速にして約50キロ(秒速14メートル)、瞬間的には約69キロ(同19.3メートル)との試算を、米サザンメソジスト大などの研究チームが26日までにまとめ、米生理学会の専門誌電子版に発表した。
 速く走れば走るほど、足が地面に接している時間が短くなるが、地面をける力を強くする限界より、この接地時間を短くできる限界の方が影響が大きいという。
 陸上100メートルの世界記録は、ジャマイカのウサイン・ボルト選手が昨年8月の世界選手権で樹立した9秒58で、平均時速は約37.6キロ(秒速約10.4メートル)。トップスピードは時速40キロ台半ばに近い。
 研究チームは、7人の運動選手にランニングマシン上で、できるだけ速く走ってもらった。また、ベルトをける力の限界を調べるため、連続して片足で跳ぶ実験も行い、ける力や足がベルトに接している時間などを測定した。
 その結果、走ったときに一歩でける力がベルトに伝わっている時間は0.11秒前後と判明。一歩でける力は、片足跳びの場合に出せる力が最高と仮定すると、走る速度の限界は平均時速50キロになるという。

この記事からはいろんなことがわかるが、とりあえずこの研究チームの考えでは、「地面を蹴る力」と「接地時間」を掛合わせたものが「速度」らしい。であるならば、通常の一歩よりも長時間蹴ることができれば、通常の一歩よりも速度が出る、のかも知れない。

◆◆

ヘッドスライディングと、全速力でベースを駆け抜けるのと(Yahoo! 知恵袋)

2007/6/1 15:44:51 回答番号: 37,730,000
ベースに達する寸前に、全速で倒れ込む。
タイミングが良ければ、走り抜けるより一瞬早くなる。ただし、良くて打撲、悪くて骨折で、もう走れなくなる。

最後の一歩を全速で倒れ込むのがベスト、という説はたまに見かけるが、誤解だと思う。あと一歩走れば届く距離であえて手でタッチにいくなんて、(1歩の歩幅がだいたい身長に等しいとすれば)腕の長さのメリットが生かせないし、他にも何もメリットがない。「トムとジェリー」じゃあるまいし、全力疾走から全力で転ぶと物凄いスピードで転べる、という考え自体が眉唾である。天井か手すりを補助に使えない限り、しゃがんだり倒れたりという下向きの動作(重心を下げる動作)の速度には限界がある。全力疾走の勢いは水平方向にあり、それを垂直方向に直接生かすことはできない。げんに陸上のハイジャンプの選手の助走なんて、全力疾走とはほど遠い。いくら勢いつけても垂直方向には直接生かせないからだ。他方、ロングジャンプの選手の助走はいかにも全力疾走っぽいが、あれは水平方向の勢いを水平方向に生かすためだ。たぶん、一歩を走るより速く転ぶことはできない。

  • 「普通に歩いてて普通に転ぶ」のも、
  • 「全力疾走から全速力で1歩の距離を転ぶ」のも、
  • 「全力疾走から全速力で2歩の距離をダイブする」のも、

どれも、落下(下向きの重心移動)に要する時間は基本的に変わらないんじゃなかろうか。まあ完全に同じではないとしても、大きく違うと考える根拠も思いつかない。だとすると「全速力で1歩の距離を転ぶ」のは「2歩の距離をダイブする」のに比べて、かかる時間は同じなのに稼げる距離は丸々1歩ぶん損、ということになる。

それに(というか、同じことかも知れないが)、あと1歩の距離で倒れ始めて指先で触塁するには、超人的というか漫画的というか、とにかくあり得ないような技術とエネルギーを費やして、足裏が突然地面にビタッと貼り付いたかのようなブレーキをかけなくてはならない。「全力疾走の勢いを生かして転ぶ」どころか、「せっかくの全力疾走の勢いを無理矢理ビタッと止めて転ぶ」わけで、はなはだしく無駄、かつ危険だ。倒れるなら2歩以上の距離を飛び込むべき、と、思うんだが。

逆に言ってみる。最後の1歩を全速で倒れ込むのが早いとしたら、最後の2歩をダイブするのは、さらに丸々1歩ぶん早いはずだ。何故なら、かかる時間は同じだからだ。

◆◆

ヘッドスライディングは無意味?(教えて! goo)

回答日時:04/08/31 13:18
1塁へのスライディングは走りこむ方が早いと思います。スライディングする地面の摩擦係数が限りなく0に近く無い限り減速するからです、身長分が有利に感じるかも知れませんが日本人の身長170cm前後腕の長さ含めても250cm程度として倒れる速度よりも3〜4歩走る方が確実に早いからです。

回答日時:04/08/31 00:40
当然ヘッドスライディングの方が遅くなります。
一見ヘッドスライディングの方が、飛ぶのだから早く思われるかの知れませんが、実際には地面に着地した時点から急激に速度が落ちるからです。

ブレーキをかけているのと同じだから遅い、というのはよく聞く説だが、程度問題でしょう。ズザーッと長い距離を滑れば遅いのは当たり前だ(高校野球の最後の打者なんか、ベースのはるか手前で止まってしまう例も多い)し、「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」ならブレーキがかかるのは触塁後なので無関係だ。その中間にさまざまな程度のブレーキがあり得る。「すべてブレーキがかかるので、すべて遅い」で片付く話ではない。

「倒れる速度よりも3〜4歩走る方が確実に早い」というのは、到底事実とは思えない。すでに見た通り、トップレベルの短距離走者が全力疾走で2歩走るよりも、物体が70cmの距離を自由落下する方が余裕で早い。なんだよ「確実に」って。根拠もなくてきとーなことを断言しないでいただきたい。

「日本人の身長170cm前後腕の長さ含めても250cm程度として」とあるが、これは単純に身長と腕の長さを足してるのだと思われる。腕は頭のてっぺんに生えているわけではない。身長180センチの選手が手をまっすぐ上に伸ばしても、総長220センチ程度だろう。これを「倒れることによって稼げる距離」と呼ぶとすれば、「倒れることによって稼げる距離よりも、3-4歩走る方が確実に距離が長い」とは言えるが、倒れる間に3-4歩も走れない。

もちろん、たとえ2歩でも「倒れることによって稼げる距離よりも、2歩走る方が確実に距離が長い」とは言える。しかしわざわざ立ち止まってから倒れるわけじゃないんだから、そんな比較は意味がない。


◆◆

ヘッドスライディングは無意味?(教えて! goo)

回答日時:04/08/31 00:40
飛んでいる最中は全く加速状態になく、等速運動でもなく、空気抵抗を受け減速している状態です。
ヘッドスライディングについて 野球で一塁ベースに向かうとき、野球経験者などは...(Yahoo! 知恵袋)

回答日時:2007/8/23 17:39:03
タイムだけで見るなら、駆け抜けた方が速いハズです.駆けている間というのは常に足で駆動している訳で、少しでも余力が残っていればさらに加速する事だって可能ですが、飛び込むと体は駆動力を失い全くの慣性に移行します.

「飛べば推進力を失うからそのぶん遅くなる」と、僕も数十年にわたって信じてきました。しかし、片足ダイブ(仮称)に「飛距離を伸ばすことによって触塁を早める」効果があることはたぶん間違いなく、であるならば「推進力を失えばそのぶん必ず遅い」とは言えない。現に水泳選手だってゴールするとき、推進力を捨ててでもリーチの有利さをとる。

そもそもが「少しでも余力が残っていれば」という仮定の話なのに、どうして結論が「無条件に駆け抜け有利」みたいになってるのか。20メートルも走れば疲れて減速中、という人くらい、草野球だったら普通にいるはずだ。

もうひとつそもそもを言えば、走っている間のほとんどの時間、人の体は宙に浮いているのだ。推進力を放棄して。もし、推進力を失う時間が少ない方が速いとしたら、競歩こそ地上最速ということになるが、実際には競歩より走る方が速い。飛べば推進力を失うから必ず遅くなる、という理論は、明らかに間違っている。

ストライド(歩幅)とピッチ(脚の回転の速さ)について

ここで1つ、陸上短距離界で良く言われるある事実を挙げます。
それは、ピッチに関して普通の小学生のピッチとカール・ルイスのピッチはほとんど同じという事。
つまり、人間はストライドを広げることによって、記録を短縮してきたという事実です。

一歩を走るのに要する時間は、普通の小学生も普通のおっさんもオリンピック選手も、大体みな0.25秒。普通のおっさんとオリンピック選手の差はストライドの差、なのだそうだ。仮に信じておく。100mを走るのに、女子のトップレベル(11秒後半)で50歩。日本の男子トップレベル(10秒前半)で45歩。カールルイスは44歩。アサファパウエルは42歩。ウサインボルト(9秒69)は41歩。このレベルだと、後半では一歩の歩幅が3m近いんだそうだ。ボルトの走りは「3メートルずつ宙に浮く」動作の繰り返しなのだ。(この記事は2008年 8月のもの。ウサインボルトはその後、2009年の世界選手権で9秒58を記録した)

1歩走れば1歩ぶん加速できるとしても、同時に、1歩走るには1歩ぶん時間がかかる。1歩減らせば1歩ぶんの推進力を失うのかも知れないが、それは同時に「1歩の手間と時間をカットする」ことでもある。

ついでに言うと推進力失う理論の人はしばしば、ダイブした場合の空気抵抗による減速を強調するが、当然ながら空気抵抗は駆け抜けにも作用する。姿勢を考えると、空気抵抗に関してはむしろダイブの方が有利なのではないか。


◆◆

一塁へのヘッドスライディングはやっぱり遅くなると思う

ショットガンタッチは最長でも13メートル(?)しかない。13mじゃトップスピードになる前にボールに接触する。つまり体は加速するため前傾姿勢のまま。肩の位置は低く重心よりかなり前方に出てると思う。その状態なら頭から突っ込んだ方が早い。たぶん。(中略)本塁から一塁までは27メートルとちょっと。加速の早い野球選手ならすでに上体を起こして走っている距離。だから肩の位置は高いし重心の真上あたりにきているはず。その状態からのヘッドスライディングはやはり若干タイムが遅くなるはず。

肩の位置が高いとダイブしにくい、というのは心理的にはその通りで、たしかに初心者は躊躇して遅くなるかも知れない。しかし心理的要素を除けば、肩の位置が高いとヘッドスライディングは遅くなる、と考える根拠はない。「図1-04」のように積木を倒すことを想像すると、倒れるのに要する時間は単に重心の位置に依存するのではないだろうか。もちろん重心の位置が高いと倒れるのに要する時間は長くなるわけだが、上記の計算によれば、それでも2歩走るよりは速い。

むしろ、野球では加速がほぼ終わっているから飛んでもほとんどロスはない、とも言える。上の方に、「ショットガンタッチは結構スピードが乗りきるので飛び込んでも速度が変わらない」という意見があり、こっちは逆に「ショットガンタッチはまだ加速中で前傾姿勢なので飛び込みやすい」だが、どっちも納得いかない。「ショットガンタッチはまだ加速中だから、駆け抜ければ加速できる。ダイブに行くことで失うものは大きい」のではないか。

また、重心が高い方がロングダイブが可能だ。もちろんダイブが不利だとすればロングダイブはもっと不利だろうが、ここまでのところ、ダイブが不利だという説得的な論拠は発見できない。ひとつとして、だ。

◆◆

【野球】ヘッスラ○はダメ?普通に走った方がいいの?

> http://dragox.jpn.org/about/dive.html
読んだけど単純にヘスラと駆け抜け比較してるだけだね。
野球の場合一塁駆け抜けは特例でベースを踏んだ後ベースから離れてもアウトにならない。
ヘスラの場合、特例が適用されないのでベースタッチ後ベースから離れるとタッチアウトになる可能性がある。
この点が考慮されていない。
最速でベースタッチ後に減速し、タッチを継続するようなスライディングがはたして可能かね?
回り込まないで、ベース上を滑るようなヘスラなら可能性がある?
見たこと無いわw

なにを言ってるのかよくわからないが、公認野球規則は「バッターランナーが1塁に走るときだけは」「直ちに帰ることを条件として」「オーバーランまたはオーバースライドはオッケー」となっており、これについて駆け抜けとスライディングを区別していない。

公認野球規則 7・08『ランナーのアウト』

次の場合、ランナーはアウトとなる。
(c)ボールインプレイでランナーが塁を離れているときにタッチされた場合。
「付記1」バッターランナーが1塁に走るときは、直ちに帰ることを条件としてならば、オーバーランまたはオーバースライドして1塁を離れているときタッチされても、アウトにはならない。
◆◆









………うーむ。以上を見る限り、どうもヘッスラ遅い論の大半は「ヘッスラは遅い」を大前提とし、それを疑うことなく、ただその理由を考えただけのように見える。誰も「どっちが早いんだろうか」とは考えておらず、しかも、その自覚がない。がっかりだ。例えばこういう発言とか。

また、ヘッドスライディングの動作を開始する地点も理想の場所があるはずです。一定ではないバッティング動作から走行状態に入り、歩数を合わせることにもロスが発生すると考えられます。これらを総合的に考えた場合、走り抜けた方が「安定的」に早く走り抜けられるのではないかと思います。

「これらを総合的に考えた場合、〜〜〜のではないかと思います」と言うのだから、この人自身は「どっちが早いんだろうか」と考えた結果「走り抜けた方が早いのではないか」という結論を得たと思っているのだろう。しかし、だ。

「一定ではないバッティング動作から走行状態に入」るのも「歩数を合わせることにもロスが発生する」のも、駆け抜けでもヘッスラでも同じでしょう。そこを理由にヘッスラが遅いと言うには、駆け抜けと比べてヘッスラの方がよりシビアな歩幅合わせが要求される、ということを言わなければならない。しかし、どう考えてもそんなことは言えない。歩幅合わせ問題がよりシビアなのは、駆け抜けの方だ。結論をあらかじめ決めていて理由は後から探したのでなければ、こんな珍妙な理屈が出て来るはずがない。

▼more...「歩幅合わせ問題がよりシビアなのは、駆け抜けの方だ」


駆け抜けにつきまとう歩幅合わせ問題は、陸上短距離走には存在しない、野球特有のものだ。それは草野球で一塁に駆け込んだ経験がある人なら誰でも体感として知っているはずで、説明するまでもないと思うが、一応。

「野球の各寸法」によればベースの一辺は38センチある。当然ベースの手前に触るのが一番早く、38センチ奥で触れば38センチぶん遅くなる。
 ダイブの場合、跳んでしまえばヒマだ。踏み切る位置はけっこうアバウトでいいと思う(想像)。例えば4メートルの距離をダイレクトダイブできるランナーが3メートル30センチの距離で踏み切ったら70センチ余裕がある時点でタッチする、という具合に、歩幅を調整しなくてもタッチのタイミングを調整できる。けがの危険をさておいて早いか遅いかだけを考えるなら、それでなんら遅滞はない。一方、駆け抜けでベースを踏むには(運よく調整なしで踏める場合以外は)歩幅で調整するしかない。また当然、調整なしで踏める場合でもベースの手前を踏めるとは限らず、奥を踏めば不利だが、だからといって手前を踏むために歩幅を合わせることにもロスが発生すると考えられます。というわけで、歩幅合わせ問題についてのみ言えば、ヘッスラの方が「安定的」に成功するだろう。

【野球】ヘッドスライディングは遅い?

451:名無しさん@恐縮です 2010/07/20(火) 12:56:05 v6AUkagd0
ベース踏むのに歩幅調整が・・・それならヘッスラが・・・とか言ってるけど、
野球ってその距離を何歩で走るとかそういう練習しねえの?
幅跳びとかそういう練習を反復的にやるぜ?
そういう練習しねえと思う。そもそも陸上でやる「そういう練習」とは、助走の距離とリズムと歩幅と歩数を一定に保つ練習、すなわち「歩幅と歩数を調整しないで助走する練習」である。野球の場合、走り出す位置とそのときの姿勢は一定ではなく、それを歩幅(と、ベースのどこを踏むか)で調整する以外には手段がない。

「勘がいい選手はうまく調整する」のかも知れないが、だとしても歩幅で調整してることには変わりがないわけで、理想的駆け抜けとは呼べないだろう。つまり理想的駆け抜けが成立する条件は、「歩幅合わせの心配をいっさいせずにひたすら無心で走ったら、たまたまベース手前角を踏めた」であり、じつは、運次第だ。その確率は、一般に考えられているほど高くはないだろう。「ヘッスラより駆け抜けの方が安定的に成功する」という定説は、意外に怪しい。以下に、駆け抜けで「最後の1歩が数十センチだけ残ってしまった」ように見える写真を3枚挙げる。たぶんこういうことは、日常的に起きているはずだ。

◆◆

まとめ。多くの人は、ショットガンタッチではダイブした方が絶対に有利だと考えている。見ていると実感としてそう思わざるを得ないのだろう。しかし同時に、野球では駆け抜けた方が絶対に速いと考えている。この説のルーツは不明だが、信仰は非常に強固だ。そのため多くの人は「野球とショットガンタッチはぜんぜん条件が違う」と主張する。だが、どう違うかについては、はなはだ怪しい説ばかりだ。

時として「いや、床さえ普通ならショットガンタッチでも駆け抜けた方が速い。だからこそ駆け抜けられないような床にしてあるのだ。番組的にダイブの方が絵になるから」という主張もなされる。「ダイブは遅い」と言うならばこの方が筋は通っているだろう。しかしながら、じゃあそういう人が「何故駆け抜けた方が早いと思うのか」について説得力ある説明をしてくれるのかと言えば、残念ながらそういう例には出会ったことがない。僕の知る限りでは、みなさん「言うまでもなく」「当然」「明白」とか言うばかりだ。

自分自身、まっすぐ駆け抜ける方が速いと信じていた身としては、世間の常識に援護してもらいたかったのだが、そんなこんなで逆に疑念ばかりが膨らんでしまった。なんなんだこれは。みんなどうかしてるんじゃないか。「怪しいUFO目撃談」をいくつ挙げたところでUFOの存在を否定したことにはならないが、代表的なUFO目撃談が怪しければ、とりあえず疑わしいと思った方がいい。

もしかすると「ヘッスラは遅い」というのは迷信なのではないか。一度は真剣にそう考えてみてもいいのではないか。

◆◆

野球とショットガンタッチの違いでひとつだけ思いつくのは、あれで走り抜けるのはたぶん「怖い」んじゃないか、ということだ。ボールが顔面に当たりそうだったら余裕で手でパンチできると思うが、ギリギリのタイミングなら足元あたりにボールが来るわけで、それは怖いのではないか。万一絶妙のタイミングでボール踏んじゃったら捻挫するかも、とか考えたり。だって全力疾走してる短距離走者の足元にバレーボールを放り投げたりしたら、危険じゃないですか。なんとなくそんな気がする。

だから純然たる駆け抜けよりも、「足からのスライディング」あるいは「軽い片足ダイブ」の方がいいかも知れない。足からのスライディングなんて遅いに決まってる、と多くの人は考えているだろうが、それも疑ってみる価値はある。

ヘッドスライディング:foot-dive

片足ダイブ

イチロー・スズキは決して一塁にヘッドスライディングしない。2008年現在の日本でイチローはかなりきょくたんに神格化されているので、まっすぐ駆け抜ける方が早いとイチローが考えてる以上それが正しいんだろ、みたいな意見もけっこう見かける。しかしイチローは、まっすぐ駆け抜けるのがいちばん早いとは、考えていない。この写真が証拠だ。

突っかい棒のように脚を前へ突き出して一塁ベースを踏みにいく。左:今江敏晃、右:イチロー

ぎりぎりのタイミングの時にはよく、この写真のように突っかい棒のように(ブレーキをかけるようでもある)脚を前へ突き出してベースを踏みにいく。これはべつに野球選手の専売特許ではなく、地面に目印、あるいはゴールを描き「先に踏んだ方の勝ちな」的な遊びをやれば、たぶんすべての子供がこれを行う。陸上競技のランナーは決してこんなことはしないが、彼らといえども、影踏みをやればやはりこの動作をするに違いない。この動作には名前がまだない。仮にここでは「片足ダイブ」あるいは「影踏み飛び込み」と呼ぼう。

◆◆

最後の一歩を踏み切ったまま、前脚を掻くのをやめる。後ろ脚を前へ戻すのもやめる。つまり、次の一歩に備えることを放棄する。そうして足先のリーチを保ち、その姿勢で固まったまま落下する。そうすることで歩幅がかせげる。こんなふうに。

さらに1歩、2歩と走るのであれば、当然上の方が早い。しかしベースを踏んだところが終点なのであれば、下の方が早い。「後ろ脚を前に戻さず惰性で飛ぶのが片足飛び込み、両脚を戻さず上体を惰性で前に投げ出すのがヘッスラ」ということだ。この図の通りだとすると、片足飛び込みによって歩幅を数十センチ伸ばせることになる。実際にこの図の通りだとは思わないが、まあ原理はこんなもんじゃないかと。

この図を見る限り、駆け抜けと片足飛び込みはずいぶん大きく違う。多くの野球経験者はしばしば片足飛び込みを実行しておきながら「言うまでもなく駆け抜けがいちばんはやいです」「自明です」「駆け抜けよりはやい方法があるなら陸上100mでやるはずでしょwww」とか言うんだぜ。ほんとうのことが知りたいなら、疑ってみるべきだろう。

◆◆

いまのところ片足飛び込みについてはすべて想像でしか語れないが、ただ、片足飛び込みと「足からのスライディング」の境界は、下図の通り、微妙だ。微妙にどっちが早いかは不明だが、リーチの点ではたぶん後者が有利だ。後者が早いとしても不思議はない。

だとすれば。

もしも「片足飛び込みは駆け抜けよりも早い」としたら、なんと、「足からのスライディングが駆け抜けより早くても不思議はない」ということになる。論理的に、そういうことになる、のである。

「軽い片足ダイブ」と「足からのスライディング」はよく似ている。

図1-10の通り、片足飛び込みをする選手は普通、脚を突き出しながら同時に上体をも無理矢理前傾させて「くの字」になる。言い換えると腰を引く。その方が早いからだろうか? 違う。そうしないと後ろに倒れてしまうからだ。早いか遅いかだけで言えば、たぶん、腰を引かずに心ゆくまで重心を投げ出し、後ろに転んだ方が早いだろう。幅跳びなら後ろに転ぶのは致命的だが、野球ではべつに問題ない。転ぶとどうなるか。足スラになる。こんなふうに。

鈴木隆行


駆け抜け最速論者はこの図とこの映像を見て、「バカだなあ鈴木、飛び込まない方が絶対早いから余裕もって触れるし、体勢も崩れないからその意味でも余裕持って確実にシュートできたのに。自明じゃん。オレなら間違いなくそうするね」と言えるのか。たぶん「いや、これはキーパーをかわす必要が」とか言うだろう。じゃあキーパーなしで「このボールに先に足で触ったヤツの勝ちな。せーのっ、ほいっ!」という遊びだったらどうか。キーパーなしでもやはり、ギリギリだったら足から飛び込むのではないか。あなたも。
 そして、もし手を使ってもいいとしたら、頭から飛び込んだのではないか。鈴木も。
 地面が芝生で、手でも足でも胴体でもなんでもいいからこのボールに先に触ったヤツの勝ちな。せーのっ、ほいっ! ってことだったら、僕ならたぶん頭から飛び込みますね。ショットガンタッチで、誰もがそうするように。

「駆け抜けより足からのスライディングの方が速い」「ヘッスラはさらに速い」という実験データも存在する。

ヘッドスライディング:data

実験データ

スポーツ報知によると桑田真澄は2008年の年末に行った講演会でヘッドスライディングの危険性を語り、「高野連にも言っているんです。禁止にしましょうって。タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです」と述べている。この記事の存在は、親切な匿名の読者さんがメールで教えてくれました。ありがとうございます。桑田真澄とトレイ・ヒルマンは「ヘッスラ禁止」という点で一致しているが、どっちがはやいかについての見解は逆のようだ。

講演を現場で聞いたわけではないのではっきりとはわからないが、この記事を見る限り「タイムも計りました」と言いつつじつにさらっと流し、誰がどういう方法で、どういう被験者を使って測った、なんてことはいっさい説明されなかったように読める。これは別に桑田真澄に特有の横着ではなく、「駆け抜けの方が早い」派にごく典型的に見られる態度だ。WEB掲示板とかブログとかでも「駆け抜けの方が早いって、実験で証明されてるんだよね。ソース? なんだったかな。なんかでそう聞いた。つかソースなんてどうだってよくね? ちょっと考えりゃヘッスラが当然遅いってわかるっしょ」みたいな発言は多い。

【野球】ヘッドスライディングは遅い?

78 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:11:34 ID:cxn9D2ET0
科学的なデータはないのかよ

85 :名無しさん@恐縮です:2010/07/20(火) 11:12:39 ID:6rtOl+pJ0
>>78
前に科学的にもヘスラは遅くなると出てたぞ
筑波大かどっかの先生が調べてた

「駆け抜けの方が早い」派のみなさんはあまりにも自らの主張を当然視しているので、厳密に検証しようというモチベーションが湧かないのだろう。実験してみたら駆け抜けの方が当然ながら早かった、というウワサが広く存在する割に、誰がどういう方法でどういう被験者を使って測った、という実験情報は意外に見当たらず、僕がひとつだけ見つけたのは以下のような話だ。

0秒12遅いにもかかかわらず滑り込む理由

「以前、日本テレビは清水隆行選手(巨人)がそれぞれのケースで要したタイムを計測したことがある。スイング後の走り出しから、1塁を駆け抜けたときが4秒06。一方、果敢にヘッドスライディングをしたときには4秒18かかった。その差は0秒12。このタイムラグにより、頭からベースに飛び込んだ方が遅くなる結果であった。手を伸ばしてベースに近づくことよりも、滑り込む際に減速してしまうことの方が影響が大きいのである。

これは『野球の科学』(2008年3月10日 株式会社ナツメ社発行 / 監修者:日本体育大学准教授 筒井大助)という本に書いてあるんだけど、なんだか微妙におかしい。「タイムラグによって遅くなる」ってどういうことだ。「0秒12遅かった」でよさそうなものを、「0秒12のタイムラグによって遅くなる結果であった」と書くセンスがわからない。まあそれはそれとして、「日本テレビが清水隆行で」とまで書いてあるんだから、本当なんだろうとは思うが。桑田の言う「タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです」も、もしかするとこのことを言ってるのかも知れない。

逆に、実験してみたらヘッドスライディング(というかダイビング)の方が早かった、というデータは、少数派の自覚があるせいか、説得力を感じさせるものが、というか、説得の必要性の自覚が感じられるものが多い。いや、多いと言ってもふたつしか知らないが、ふたつともにそれが感じられるので、確率で言えば100パーセントだ。ひとつは少年野球の指導者「紫電改」さんの実験で、打席から一塁まで(スライディングの技術さえあれば)「駆け抜けよりヘッスラが、0・1 から0・3 秒ほど速い」という結果が出たらしい。この人自身が長年「ヘッスラは遅い」と信じ込んでいて、結果を見て驚いたそうだ。で、測ってみたら意外や意外、うまい子に限って言えばヘッスラの方が速いんですよ、と、チームの父兄や野球仲間に話すと、「ほとんどが『そんな事はない!』『走り抜けたほうが絶対速い!』と」いう反応だと書いておられる。ただ計測の精度は不明。

もうひとつは「ソフトボール競技の異なるスライディング技術による塁間所要時間の差」。これは萬野修平さんという人が2006年に書いた、早稲田のスポーツ科学部の卒論らしい(いま知ったんですが 2005年8月、ミネソタ州マンケイト市でソフトボールのワールドシリーズというのが開催され、この年早稲田のソフトボール部は見事優勝を遂げた。萬野修平選手 [3年] はこの大会で二塁手としてベストナインに選出されたという、名選手だ)。PDF でわずか1ページなので読んでください。一応抜粋すると、

 被験者は早稲田大学ソフトボール部員11名であった。実験は早稲田大学所沢キャンパス野球場にて行った。被験者は、ソフトボールでの1-2塁間(18.29m)で「駆け抜け」「ベントレッグスライディング」「ヘッドスライディング」「立ち止まり」の4つの条件での走塁を行った。その走塁を側面からビデオカメラ60コマ/秒で撮影した。撮影したビデオより、4つの条件下で1塁ベースの離塁から、2塁ベースに到達するまでのコマ数(タイム)を求めた。
 また、実験後に被験者へ質問を行い、選手の4つの条件に対する主観的な情報も集めた。

スポーツ科学部で学んだ四年間の集大成だったら、11人とかじゃなく 100人くらいはやってちょうだいよ、と言いたいが、仕方ない。部員も100人はいないのかも知れない。ビデオで撮ってコマ数を数えたというんだから、計測精度は信用していいのではないか。結果は

・計測によれば11名中8名が、4種のうちヘッスラ最速だった。
・全試行中の最速記録も、ヘッスラによるものだった。
・全被験者の平均を見ると、速い順に「ヘッスラ」>「足スラ」>「駆け抜け」>「立ち止まり」だった。
・平均で「ヘッスラ」「足スラ」「駆け抜け」の差はそれぞれ百分の3秒、「駆け抜け」と「立ち止まり」の差は百分の7秒だった。

となっている。つまり、ヘッスラは駆け抜けよりも

百分の6秒

早かった、と。サンプルがわずか11名だということを考えると、「ヘッスラの方が早いという明確なデータ」とはとても言えないが、それでも「タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです」だの「前に筑波大かどっかの先生が調べてた」だのいう怪しげな発言よりは百倍信用できる。とりあえず

「ヘッスラなんて絶対遅い、というのを疑い得るデータ」

くらいは言ってもいいと思う。ちなみに2008年7月8日現在、Wikipediaの「スライディング」の項の「ノート」で、萬野修平論文は統計処理が甘いので引用の価値なし、との意見に対して Panpulhaさんという人が、「甘いかも知れんけど、だとしても、少なくとも萬野修平氏は測った。いっさいなんのデータも示さず論拠も挙げず『当然ながら、明らかに、ヘッスラなんて遅いに決まってます』と念仏唱えるよりかは百倍マシ」と主張しておられる(原文はもっと端正で上品)。正論だ。

単純計算すると百分の6秒というのは、百メートルを10秒で走るランナーがちょうど60センチ走る距離だ。この実験の被験者のみなさんはそこまで速くはないだろうし、それに塁間距離も野球以上に短いので、なおのことスピードは出ない。彼らがベース近辺の最後の百分の6秒で、仮に45センチ走る(駆け抜けで)としよう。ロスのない完璧なヘッスラは60センチぶん有利だ。しかしそれほど完璧でもなかったので、平均15センチぶんロスがあった。その結果、平均45センチ速かった。そう考えるとパズルのピースが不気味なほどぴったりはまるが、都合良すぎな解釈だろうか。都合良すぎかも知れないがこの解釈によると、この実験結果は「ロスのない完璧なダイブ(仮に可能だとして)は駆け抜けよりも

60センチ

ぶんだけ有利」という仮説に整合する。「足スラ」も意外な健闘ぶりだが、私見ではもはや意外ではない。


◆◆



ところで「主観的な情報も集めた」の方はどうなったか。

実験後に行った質問では、『4 つの条件の中で「駆け抜け」が最も速く、次に速いのが「ベントレッグスライディング」』と被験者全員が回答した。

とある。聞いてみると全員が「実感としては駆け抜け最速だった」と答えた、と。

じっさい、ヘッスラは実感として遅い、と語る経験者の声はネット上にも多い。

ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)

一塁へは駆け抜けた方が早いことが多いですよ。
どんな人:経験者
自信:自信あり

私は野球をしておりましたがスライディングは遅いと思いました。
どんな人:経験者
自信:参考意見

ところが、そう思った人の、実際にそう思った走りの、ビデオのコマ数を数えてみたら、11名中8名がヘッスラ最速だった、と。

「11名中8名がヘッスラ最速だった」という結果自体は、たまたまの、統計上の偏りかも知れない。現に日本テレビが清水隆行で測ったら駆け抜けの方が早かった、というデータもあるらしいし。しかしその8名を含む全員が「主観的にはヘッスラ遅い」と答えた、の方は衝撃だ。たまたまだとしても、かなり有意な結果のように思える。

ヘッスラ中はヒマなんだと思う。跳んでしまうともう、できることは何もない。腕は振らないし腿は上げない、体は揺れない、足裏は地面を蹴らない。加速は(水平方向には)絶対にできないし、垂直方向にだってもちろん、意識的にはできない。重力任せ。自分の足音も消える。わずかな時間(1メートルの自由落下だと考えると約0.45秒)とは言え、最後の最後の決定的な時間だ。そこで惰性と重力に身を任せ、自分の呼吸音と心拍音と風の音だけを聞きながら空中でじっとしているのが、最後の最後を必死で走るのに比べて如何に悠長な、如何にベストを尽くしてないような感じがするものか、それはひじょーによくわかる。気持ちはもっともだ。ヘッスラは本人の実感としては遅いのだろう。ただしかしそれは、客観的な計測結果とは必ずしも一致しない。少なくとも間違いなく言えるのは、


「一致しないことが、現に、ある」

ということだ。萬野修平論文を「駆け抜けとヘッスラはどっちが早いか」の検証として見ると、完全とはとても呼べない。「統計処理が甘い」というのが具体的にどういうことなのか無知な僕にはわからないが、とにかくサンプルが少なすぎるとは思う。しかし「ランナーの実感は信用できるか」の検証として見れば、ひとつの決定的な結論をもたらす、決定的な研究結果である。「一致しないことが、現に、ある」ことを、完全に証明している。また、「多くのランナーはヘッスラを実際以上に遅く感じがちだ」ということも、あまりにもサンプル数が少ないが、まあその、強く示唆している。ように見える。経験者の主観はアテにならん、たとえイチローの主観であっても、と考えるべきだろう。

◆◆

追記:もうひとつ、大阪体育大学の淵本隆文さんという人の「一塁ベースへのヘッドスライディングに関する動作学的解析」という論文を発見した。要点だけ書くと、▼本塁から一塁まで全力で走ってもらい、一塁手前8メートルの区間を高速度ビデオカメラで撮影して、8メートル地点から触塁までの所要時間を測定。▼走り抜けとヘッスラ(1)を交互に3回ずつ試行。▼その後、滑る距離をできるだけ短くして(つまり「ズザー」じゃなくてダイブで)ね、とリクエストして、あらためて3回ヘッスラ(2)をやってもらって測定した。▼そしたらヘッスラ2 > 駆け抜け > ヘッスラ1、の順に速かった。▼ただしヘッスラ2と駆け抜けの差は有意なものではなかった。▼触塁時点でのベースから重心までの距離を比較すると、ヘッスラ2は駆け抜けより60センチ有利だった。▼ヘッスラ2の踏切位置は、ベースから平均 3.2 メートルだった。だそうです。詳細はリンク先を見てください。3.2 メートルって、意外に短いですね。「0.2 秒ごとに描いたスティックピクチャ」というのがリアルで素敵だ。

ヘッドスライディング:bottom line

私はこう思います。

ここで私はこう主張いたします。「当然ながら駆け抜けのほうが早いです。明白です」というのは迷信だ。理想的に遂行されたヘッスラは、理想的に遂行された駆け抜けよりも、たぶん早い。僕は以下の2項目について、トレイ・ヒルマンに同意する。

1:    強いて言えばヘッスラの方が多少は早いのかも知れない。
2:    だが、大した差はない。

実験する能力がないので図を見ての単なる印象だが(しかもその図は自分で描いたんだが)、ダイブによるリーチのゲインはたぶん、標準的な体格で60センチ程度ありそうだ。ならば走ってきた勢いをいっさい殺すことなく水平ダイブできれば、そりゃそっちの方が早いでしょう。下の、特に左の図を見れば、100m走の選手にとっての「100m」と「99m40cm」の違いだってかなりのものだろうに、

100m Men's Final

ヘッスラと駆け抜けの差を考えるなら(2歩の距離をダイブすると仮定して、1歩あたり180センチと仮定して、最後の2歩以外は完全に同じと仮定すると)、「3m60cm」と「3m」の差だ(走り抜ければ残り360cmの重心移動が必要な地点から、ダイブすれば300cmの重心移動で届く)。「100m」と「99m40cm」の差がかなりのものだとすると、「3m60cm」と「3m」の差は圧倒的である。細かく計算するまでもない。仮にさいごの1歩で加速できるとしても、わずか3m60cmの区間で60cmの差を逆転できるほどの加速なんて、あり得るだろうか。

水泳選手にとって、腕を真っすぐ伸ばして指先でゴールにタッチするのと、脳天でゴールにタッチするのとでは雲泥の差らしいが、ちなみに60センチというのは、標準的な体格での指先と脳天の差よりも大きいはずだ(腕が長くて指先と脳天の差が60cmを上回るようなスイマーも多いだろうが、そういう人ならダイブと駆け抜けの差もやはり、60cmを大きく上回るだろう)。60センチというのは「雲泥の差を上回る決定的な差」なのだ。

swimmer
すいえいせんしゅ。じょうずに描けなくてくやしいです。


もちろん「走ってきた勢いをいっさい殺すことなく水平ダイブ」「最後の2歩以外は完全に同じ」という条件を100%達成するのは困難なのかも知れないが、困難だからといって不可能だと考える根拠は何もないし、100%でなくても100%近く達成できれば意味はある(想像)。逆に「どれほど理想的に遂行しても60センチのアドバンテージをフイにするだけの失速は免れない」なんてことを論証した人は存在しない。少なくとも、僕にそういう論証メールをくれた人は、まだいない(2010年10月現在)。

ただし、「理想的ヘッスラは理想的駆け抜けより早い」と「ヘッスラは駆け抜けより早い」は違う。その点はご留意ください。「理想的なジャストミートさえできれば谷繁はダルビッシュからホームラン打てる」と「谷繁は必ずダルビッシュからホームラン打つ」は、ぜんぜん違うでしょう。「当たれば競馬は儲かる」と「競馬は儲かる」もぜんぜん違う。それと同じだ。競馬でがっぽり儲けた例があるからといって「競馬は儲かる」とは言えないように、「理想的ヘッスラは理想的駆け抜けより早い」のだとしても、「ヘッスラは駆け抜けより早い」と言えるかどうかはわからない。遅いことだって多いだろう。現に清水隆行は駆け抜けの方が早いというデータもあるそうだし。ヘッスラは駆け抜けより早い、と主張する気は、ない。どっちでもいい。ただ、「理想的ヘッスラは理想的駆け抜けより早い」、かつ、「理想的駆け抜けが成立する確率は、案外、高くない」と主張します。

また、あまり厳密に考えても仕方ないということも言っておきたい。何故なら、判定はあまり厳密に行われないからだ。一塁でのアウト / セーフに、水泳や競馬のような機械判定が取り入れられるようになったら、そのとき初めて厳密な検証が意味を持ち、厳密な検証が各所で始まるだろう。そして、そんな日はたぶん、永遠に来ないだろう。プロ野球選手が「どう判定されるとかじゃなく、自分の中でベストを追求するのがボクのベースボール・スタイル」と考えるか、「有利だとしてもたかだか数十センチだし、その数十センチすらも厳密に判定してもらえないんだからヘッスラなんか無意味」と考えるかは、好みの問題、でもある。

◆◆

もし、この60センチという数字に意味があるとすると、逆にこうも言えるかも知れない(イマイチ自信なし)。理想の歩幅よりも60センチ余計に片足ダイブできる選手が、たまたま最後の一歩で理想の歩幅よりも60センチ長い距離を残した場合は、片足ダイブはヘッスラと同等の効果を持つ。

◆◆

ついでに、「実際にストップウォッチで測ってみたら○○の方が早かったらしいですよ」とかじゃ結論は出ない、とも、主張する。

ヘッドスライディングについて 野球で一塁ベースに向かうとき、野球経験者などは...(Yahoo! 知恵袋)

回答日時:2007/8/24 10:49:55
どちらが勝るかの結論をここで計算で示すことは出来ませんが、実際に野球選手が両方の方法を行ってストップウォッチでかかる時間を計測するというきちんとした科学的な実験を行った結果、駆け抜ける方が速いというのが得られた結論です。

桑田氏、育成3か条…ヘッドスライディング禁止&ヤジ禁止&失敗OK

タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです。

このように「実際に測ってみたら○○の方が早かった」式の主張をする人は多いが、きちんと科学的に測りさえすれば必ず結論が出る、と考えるのはまったく科学的でない。測ってわかるのは測った範囲の結果だけだ。じゃあどれほどのサンプルを測ればじゅうぶんなのかと言うと、どれほど測ってもじゅうぶんとは言えない。

【野球】ヘッドスライディングは遅い?

802:名無しさん@恐縮です 2010/07/21(水) 06:19:25 wCbR3Y6E0
こんなんちょっと調べればわかりそうなもんだがなあ。
この程度のことさえいまだに科学的に調べたり結論出すこともできないってのはちょっと驚き。
もしかしたらとっくに結論出てて、いまだにがちゃがちゃ言ってる奴が馬鹿なだけなのかも知れんが。

ちょっと調べればわかる、という意見には、根拠が何もない。

例えばスキージャンプの選手が滑走の時に中腰で両手を平行に後ろへ揃える(バックハンドスタイル)のを、2010年現在我々は議論の余地のない唯一の合理的な正解であるかのように思い込んでいるけれど、Wikipedia「スキージャンプ」の項によれば、そんな常識が定着するまでには、1877年にノルウェーで行われた世界最初のジャンプ競技会から数えて、なんと、百年かかったらしい。V字飛行が発明されるまでには120年かかった。

例えばバタフライは平泳ぎより速い、というのも現在では常識だが、Wikipedia「バタフライ」の項によれば、そんな常識が定着するまでには、初期型バタフライ(上半身がバタフライ、脚は平泳ぎのかたち)の登場から20年以上を要している。ドルフィンキックの登場はさらにそのあとだ。

結論に至るまでに百年かかったり20年かかったりした実例が現に存在する以上、ほんとうのことって案外なかなかわからないのだなあ、と考えるしかない。もしかするとこれらの常識だって、来年くつがえるかも知れない。「ちょっと調べればわかる」? とんでもない。百年実験しても確実とは言えないんだぜ。

▼Wikipedia「背面跳び」の項より

アメリカのディック・フォスベリー選手が正面跳びの練習中にヒントを得て開発したものとされる。英語では「フォスベリー・フロップ(Fosbury Flop)」と言う。自己流で走り高跳びを始めたフォスベリーは、高校に入り記録を伸ばすためにベリーロールを取り入れようとした。しかし記録会でベリーロールをうまく跳べなかったフォスベリーは、得意であるはさみ跳びに途中から切り替えて(中略)

身体が地面と平行になる感覚にインスピレーションを与えられたフォスベリーはそのあと、背中を地面に向ける跳び方に磨きをかけていった。しかし背面跳びは当時は誰もやっていなかったので皆の笑いものになり、フォスベリーの跳び方を嘲笑するためにわざわざ来る人がいるくらいであった。

大学に入ると、記録の伸び悩みから三段跳びに転向することを薦められたフォスベリーは一念発起し、2m10cmの記録をたたき出した。そのあと大学選手権優勝、オリンピック代表選考通過と順調に結果を出して行った。そしてメキシコオリンピック参加選手中唯一の背面跳び採用選手ながら当時のオリンピック新記録で金メダルを手にした。

Dick Fosbury in Mexico City Olympic, 1968


高校時代にぐうぜん背面跳びを発明したディック・フォスベリーは大学に進んで記録が伸び悩み、三段跳び転向を薦められたという。ベリーロールより背面跳びが有利だというのは現在常識だが、もし彼が転向していたら、変人ダメジャンパーがいっとき試みた珍奇な跳び方は忘却され、現在もベリーロールがベストとされていたかも知れない。2009年現在は背面跳びがベストとされているが、未来永劫にわたってそうかどうかは誰にもわからない。

「現代のトップアスリート(と、そのスタッフ)たちは1/100秒、1/1000秒の為に科学的に実験を繰り返してフォームや健康管理やらユニフォームの素材やらそれこそありとあらゆるものを研究してるんだから、彼らの採用する方法がベストに決まっている」みたいなこと言う人がけっこういるけど、科学への信頼も度が過ぎるとオカルトだ。何がベストか、科学の見解なんて年々変わる。変わらないものも多いが変わるものも多い。例えばバッティングフォームについて「振り子打法がベストな打ち方かどうか」「スタンスはオープンとスクウェアとクローズドのどれがベストか」などを考えてみても、唯一の完全な結論なんて出そうもないでしょう。

背面跳びすら当初は嘲笑で迎えられた、という事実を胸に、我々はあらゆる可能性に対して、より謙虚であるべきだと思う。メキシコオリンピック以前には、「言うまでもなく、当然ながら、明らかに、背面跳びなんて無意味です」「誰それが実際に跳んでみてきちんと科学的に測った結果、やっぱりベリーロールの方がいい記録が出たらしいですよwww」みたいな声が、ディック・フォスベリー周辺に、たくさんあったに違いない。



ケーブルを隠さない男の人って・・・