ヘッドスライディング:01
ほんとうのところどうなのか
ヘッドスライディングより真っすぐ駆け抜けた方が速い、という説は、あまりにも強固に信じられている。「怪我のリスクとかはさておき、はやさだけで言ったら頭からダイブした方がはやいんじゃないか」なんて言ったら大変だ。ナニ言っとるや、そんなわけないわ、絶対遅いって、決まっとるがや、おまさんアタマ大丈夫かや、という激烈な反応が返ってくる。その論拠としてネット上でよく見かけるのは「言うまでもなく」「当然ながら」だ。Wikipediaの「スライディング」の項の「履歴」を見ると、例えば「2007年5月13日 (日) 16:07時点における版」にはこういう記述がある。
打者走者の一塁へのスライディングは、本来全く必要性が無い。(中略)当然ながらスライディングよりも走りぬけたほうが速いから、早く一塁に達するために、通常はスライディングを行わず、そのまま一塁を踏んで駆け抜ける。
「もちろん」とか「明らかに」なども多く用いられる。
「当然ながら」が論拠と呼べないのは言うまでもないと思うが、論拠の必要性すら意識されないまでに当然視されている現状の、ひとつの理由はたぶん、素人受けする派手なプレーだからだろう。クルマの世界におけるドリフト走行のようなものだ。ドリフト? はん、確かに派手で速そうに見えるだろうが、オレらから言わせりゃあんなものは無意味なケツ振りダンスよ。本当に速いのはグリップ走行よ。そう発言する人はしばしば得意げに鼻の穴をふくらませ、素人を見下ろす目線になる(想像)。正直なところ、「ヘッスラ? ププッ、宙を飛ぶから速いってか?」と言う人々の口調にも似たものを感じることが(たまに)ある。素人受けするものを無意味だと貶すのは、通っぽくてカッコイイのである。「推進力を失う上に、ズルズル滑れば摩擦で減速するばかり」と言われるところなんかも、ヘッドスライディングとドリフト走行は妙に似ている。
ドリフトにもいろいろあるんだろうが、ヘッドスライディングにもいろいろある。仮に、ベースのはるか手前で踏み切ってズルズル・ズザーーーッと滑るのを「ズザー」、荒木雅博や蔵本英智が見せるような、滑る距離が極少(場合によってはゼロ)なのを「ダイブ」「ダイビング」または「ダイレクトダイビング」と呼ぼう。スライディングとはすなわちブレーキをかけることなので当然遅い、とかよく言われるのは「ズザー」のことだろう。それでも下図の通り、リーチの点ではアドバンテージがある。そしてダイブなら、ブレーキがかかるのは触塁後だ。
ダイレクトダイブなんて怪我するに決まってる、ともよく言われる。イチローが二塁をまっすぐ駆け抜けようとしてセカンド井口資仁とぶつかった、という話などを知ると、駆け抜けとヘッスラのどっちが危険かは場合によるとも言えるが、たしかにヘッスラで怪我した実例は多い。1994年の「国民的行事」10.8決戦で立浪和義が内野ゴロでヘッスラしてセーフになったが肩を脱臼して退場、という例はよく知られているし、プロと違ってほとんど報道されることはないが、少年野球での骨折や脱臼の例も多いはずだ。ただ、だからといって「怪我するに決まってる」はないだろう。ダイブして左手でダイレクト(あるいはほぼダイレクト)にベースタッチ、その後ベースの右をズザーッと滑って停まる、というヘッスラ(仮に「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」、略して「左手ダイブ」と呼ぼう)を、観測所員は2008年のわずか1週間の間に二度目撃した。一度は6月27日の中日対横浜戦一回表、横浜から移籍したばかりの二番小池正晃が三ゴロでヘッスラ決めてセーフになった(記録はサード村田のエラー)例。もう一度はその翌週、7月3日の中日阪神戦八回表、荒木雅博がセーフティバントを試み一塁に雨中のヘッスラ敢行、しかしピッチャー渡辺の絶妙のグラブトスでアウトになった(記録は投ゴロ)例。左手ダイブなら絶対安全だ、と言いたいわけではない。げんに怪我しない実例の方が(プロでは)圧倒的に多いのであり、「怪我するに決まってる」はあまりに乱暴な言い分だ、と言いたい。
しかしながら7月3日の荒木のヘッドスライディングには、こんな後追い記事が出た。
荒木「全身痛い」 7・9ヘッドスライディング後遺症(名古屋タイムス)
中日の荒木雅博内野手(30)が「ヘッドスライディング後遺症」に悩まされている。3日の阪神戦(甲子園)の八回にセーフティーバントを試み、一塁へヘッドスライディング。アウトになったものの、落合博満監督(54)は「ああいうやつがいる限り大丈夫」と賛辞を送った。だが体へのダメージが大きく、思い切りプレーできない状態に陥っている。
ユニホームが破れ、ぼろぼろになったヘッドスライディングから5日がたった8日の広島戦前、荒木は「まだ体全体が痛い。全身に(痛み止めの)注射を打ちたいくらい」と「症状」を話した。気迫あふれるプレーの衝撃は、それほど大きかった。
手負いの切り込み隊長は「バットが振れない」と嘆く。3日の阪神戦まで7試合連続で安打を放ち、打撃は上昇気配をみせていたが、その後4試合は19打数2安打の打率1割5厘。体が思うように動かない。
守備にも影響。「できればあまり飛び込みたくない」と話しており、ダイビングキャッチに不安を感じている。8日の広島戦ではダイビングをためらって一、二塁間のゴロを捕球できずに悔しがる場面があった。
今季から中日の選手会長に就任。「何とかチームを鼓舞しよう」との思いが強い。気持ちを前面に押し出す選手が少ないチーム。だから荒木はリスクを承知でヘッドスライディングした。
中日は8日の広島戦に敗れて3連敗。首位阪神に今季最大の12・5ゲーム差をつけられ、目標を見失っている。今は2位を死守することに全力を注がなければならない。このままでは荒木が高い代償を払っただけになってしまう。(高柳 隆)
(2008年7月9日更新)
たったひとつのセーフと引き換えに、5日たっても全力プレーできないというのでは、本人にとってもチームにとっても野球ファンにとってもプラスとは言えない(まして、このときの荒木はアウトになったんだし)。やっぱり危ないのだろうか。通常の「ズザー」と「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」の違いは、すべってから触塁するか触塁後にすべるかだけなので、なぜそんなに全身打撲になるのか理解できないんだが。
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いずれにせよ、安全だと主張する気はぜんぜんない。高校野球で横行する「ひたむきさのアピールとしての九回二死でのヘッドスライディング」がアホらしい(或いは醜い)という意見にも同感だ。ただ、怪我のリスクも審判の心証も、また美学としてどうか、というような話も無視して早いか遅いかだけを考えるとして、ほんとうにヘッドスライディングは遅いのだろうか。
この話題を語るとついつい人は「速いか遅いか」にフォーカスしがちだが、野球では(だけでなく、陸上競技も自動車レースも)じつは、速度を競うわけではない。男子100m走の世界記録保持者は「人類最速の男」と呼ばれたりするが、それは慣用表現であって厳密にはちょっと違う。勝敗(アウト/セーフ)を決するのは速度(fast or slow)ではなく所要時間(early or late)だ。「スライディングよりも走りぬけたほうが速い」というのが仮に事実だとしても、そのこと自体に意味はない。問題は「どっちが触塁が早いか」である。速くなくても早けりゃいいのだ。
陸上競技は胴体で判定する決まりなので、走者はたいてい胸を張ってゴールインする。もし「胴体に限らず体のどこか」でいいとしたらどうか。ランナーが象なら鼻を使うだろうし、キリンさんも鼻、あるいは舌か? ツノか? 人間の場合は手でしょう。手を前方に伸ばすことには速度面のマイナスがあるはずだが、リーチ(腕の長さ)を生かすことのプラスは、それをはるかに上回る(と、いうのは想像で言ってるのだが、下の写真なんか見れば明らかだと思う)。ちなみに水泳選手は、腕を真っすぐのばした体勢でタッチしないと損なので、「ゴールまであと1掻き半」と判断しても、体勢によっては1掻きで止めたりする。半掻きぶんの推進力を捨ててでもリーチの有利さをとる、すなわち
「速さを捨てて早さをとる」
のである。これは想像ではなくて、水泳選手がそう語るのを聞いたことがある。競っているのは速度ではなく早さなのだから、それが当然だろう。
では、短距離走でゴールテープが地上80センチの高さに張ってあり、それに触れないとゴールが認められないとしたらどうか。やっぱりゴールの瞬間に上体を倒して手で触りに行くでしょう。地上3センチだったらどうですか。馬なら踏みに行くだろうが、人間は(怪我のリスクを無視して言えば)ダイブが有利なような気がする。「人間も馬と同様に前肢、すなわち手をのばす」という言い方をしてもいい。下の2枚のシルエットはよく似ているではないか。
マーティ・キーナートは「ヘッドスライディングは遅い」と主張しているらしい。
ヘッドスライディングは禁止せよ:Simple-憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記
スポーツジャーナリストのマーティ・キーナートは『スター選手はなぜ亡命するか』(KKベストセラーズ 1998)で次のように述べている。
絶対に無理なことでもとりあえずは死ぬ気で努力しているのだというポーズを見せることが美徳とされる日本では、誰もこの(一塁への)ヘッドスライディングを変だと思わないようで、だからこそ頻繁に目にすることができる。(p.200)
そして、アメリカではヘッドスライディングをした場合、アウトにしてしまうことすらあるらしい。
ヘッドスライディングをした場合、アメリカの審判は必ずといっていいほど、アウトのコールをするのだ。アメリカの審判はみなヘッドスライディングが走者のスピードを低下させるうえに、ケガも招きやすい無意味なプレーであることを、じゅうぶんわかっているからである。(中略)審判たちにしてみれば、スピードを低下させ、ケガの危険を冒してまで、一塁にヘッドスライディングするようなばかは、アウトとコールされても当然なのだろう。」(p.202-3)
「1:アメリカではほとんど誰もが一塁へのヘッドスライディングのバカバカしさを知っている」「2:まれにやってしまうバカもいるが、そんなのは(たとえセーフでも)審判がアウトのコールをする」という主張のようだが、ところで、しかし、事実だろうか。
たまたまだが、観測所員は「メジャーリーガーが一塁にヘッドスライディングしてセーフになった」例をふたつ発見した。
ひとつは第2回WBC2次ラウンド1組第3試合、カリフォルニア州サンディエゴ、ペトコ・パークにて行われたメキシコ対キューバ戦(2009年3月17日)の記録。4回裏メキシコの攻撃、1死一二塁でガルシアの打球が投手を強襲、一塁にヘッドスライディングしてセーフ、1死満塁となった、というプレーがあったらしい。もうひとつは同じ年のMLB ペナントレース、メッツ対ヤンキース戦(2009年6月27日)の記録。5回裏メッツの攻撃でタティースが三塁線に抜けそうな打球を放ち、飛びついた三塁手ロドリゲスが送球するも、ヘッドスライディングで一塁へ飛び込みセーフ、というプレーがあったらしい。ガルシア(Karim García)というのはメキシコ出身、メジャー在籍10年間で通算488試合に出場、打率.241、66本塁打、212打点という選手。2005-2006年には日本のオリックス・バファローズでプレーしたらしい。タティース(あるいはタティス? Fernando Tatis)についてはあまりネット上に情報がないが、とにかく2009年6月にメッツに所属していたメジャーリーガーであることは間違いない。
高校野球は別として、プロでの一塁へのヘッドスライディングなんて、もともとあまりないプレーである。同じ年の3月と6月に北米大陸でこういうことが起きているということは、「けっこう起きてる」というか、「日本と大差ない」のではなかろうか。マーティ・キーナートの話をまるっと鵜呑みにしていいものかどうか、深刻な疑念を覚えざるを得ない。仮にこれが「まれにやってしまうバカ」がたまたま奇跡的に数ヶ月の間にふたりも出現した希有な例だとしても、2例ともセーフになっているのである。少なくとも「必ずといっていいほど、アウトのコールをする」というのは、かなり怪しいのではないか。
アウトになった例だが、動画もひとつ見つけた。2007年9月1日、レッドソックスのルーキー右腕クレイ・バクホルツ(Clay Buchholz 23歳)はオリオールズを相手に、メジャーデビュー2戦目(初先発)にしてノーヒットノーランという近藤真市ばりの快挙を達成した。これはその試合の七回表の映像。先頭打者、オリオールズの四番ミゲル・テハダ(Miguel Tejada 33歳)の放った打球はセンター前に抜けるかと見えたが、ボストンのセカンド、ダスティン・ペドロイア(Dustin Pedroia 24歳)が必死のダイビングで危うく止め(こういうプレーを Diving Stop と呼ぶらしい)、立ち上がりざまに一塁送球、打者走者テハダは一塁ベースに向けて同じく必死のダイビング、しかし間一髪アウトッ!!!!。場内興奮の坩堝、やんやの大喝采。これが「ヘッスラなんて速度を低下させるだけの無意味なプレー」というコンセンサスがある国の光景だとは、到底見えない。上のリンクが機能しない場合、このページのスコアボードの七回表のところをクリックすると見れます。
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また同じブログによると、トレイ・ヒルマン監督時代の日本ハムは、一塁へのヘッドスライディングを禁止していたそうだ。
ヘッドスライディングは禁止せよ:Simple-憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記
プロ野球チームの日本ハムでは、1塁へのヘッドスライディングは禁止されているらしい。選手がその規則を破り、1塁へヘッドスライディングをし、負傷する出来事があった。その時、ヒルマン監督は次のようにコメントしている。
手首には小さな骨も多く、けがをしやすい。一塁にヘッドスライディングをしても走り抜けても大した差はないんだ。それ以上にリスクが大きすぎる。ファイティングスピリットの表現としては違うと思う。(asahi.com 北海道版より)
はじめて読んだときは、この発言がまるで「ヘッスラ遅い説」の仲間であるかのように錯覚してしまったが、考えてみればぜんぜん違う。ヒルマンは
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| 1: 強いて言えばヘッスラの方が多少は早いのかも知れない。 |
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| 2: だが、大した差はない。 |
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| 3: その割に、怪我のリスクは大差がある。 |
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| 4: また、ファイティングスピリットの表現としてヘッスラするのは馬鹿げている。 |
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| 5: だから私のチームでは禁止する。 |
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と言っているわけだ。5のような言い方は私はとても好きです。ヘッスラは禁止すべきだ、と訴えるでもなく、禁止にしましょうよ、とどこかに掛合うでもなく、ただ、私のチームでは禁止する、と。押し付けがましさがない。見事である。私もヒルマンを見習い、禁止自体については(日ハムファンではないので)意見を控えます。3についても意見を控える。私にはわからない。4には同感。問題は1と2だ。いずれも非常に珍しい見解である。
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| 1: 強いて言えばヘッスラの方が多少は早いのかも知れない。 |
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| 2: だが、大した差はない。 |
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多くの人はそうは考えず、「走り抜けた方がもちろん、明白に、絶対に早い」と主張する。私も長い間そう信じてきた。しかし。走り抜けた方が明白に早いなら、どうしてTBS 筋肉番付「ショットガンタッチ」では、誰もが頭から飛び込むのか。
ヘッドスライディング:02
「ヘッスラは遅い」説を疑う(ショットガンタッチとの比較)
思えば少なくとも20年間、まっすぐ駆け抜ける方が早い、と信じて疑ったことはなかった。ちょっと興味を持ったのは2007年暮れ、「五輪予選で一塁にヘッドスライディングした川崎宗則にイチローが激怒」という記事を見かけてからだ。すこし検索して「ヘッスラなんて遅いに決ってます」というのが世間の常識であることを確認し、安心した。ところが一方、「ショットガンタッチではみんな頭からいくではないか」という指摘に出会い、ハッとした。それに対して膨大な反論があることも知った。そもそも「ヘッスラは遅い」論とはどのようなものなのだろうか。
ベースへの滑り込みは、ベースを駆け抜けるよりも不利だと思うのですが(HATENA)
1 回答者:2007-08-09 09:49:48
駆け抜けた方がもちろん早いです。
2 回答者:2007-08-09 09:51:02
明らかにスライディングよりは走り抜けた方が早いでしょう。
4 回答者:2007-08-09 09:54:49
不利です。おっしゃる通りブレーキがかかります。ファーストへは走り抜けた方が速いです。
7 回答者:2007-08-09 14:21:51
当然ながらスライディングよりも走りぬけたほうが速いから、早く一塁に達するために、通常はスライディングを行わず、そのまま一塁を踏んで駆け抜ける。
ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
ANo.9 / どんな人:経験者 / 自信:自信あり / 回答日時:07/07/04 12:04
地面に固定されたベースを踏むと言う行為においては、手で触りに行くよりも足で触りに行った方が早いことは明白です。
「もちろん」「明らかに」「当然ながら」「明白です(自信あり)」。宗教かこれは。ちょっと無気味だ。私の意見は上記ヒルマンコメント2項目の通りだが、こういうみなさんを見て特に思うのは「2」ですね。「ヘッドスライディングをしても走り抜けても大した差はない」。そりゃそうでしょう。所詮「最後の数メートルをどうするか」の話だ。どっちが早いとしてもまさに「タッチの差」、どうせ大した差にはならないのではないか。だからどっちが早いとしても「もちろん」とか「明らかに」とか言われることには違和感がある。
ヘッドスライディングと、全速力でベースを駆け抜けるのと(Yahoo! 知恵袋)
回答日時:2007/6/1 15:07:45 回答番号: 37,729,012
走り抜ける方が早いです。争いのない事実です。ジャンプするために踏み切る時間。ジャンプするための無駄なエネルギー。地面から1m近い高さにある手をわざわざ地面近くのベースにまで持っていく無駄な時間。様々なことを考えて、明らかにヘッドスライディングは遅いです。
ジャンプするためのエネルギーが無駄かどうかを議論するのに、それが無駄だという前提を用いるのは変でしょう。神の存在を証明するために「神は全能である」という前提を用いるのと似ていて、なぜだかどうにも宗教っぽい。そりゃジャンプするには時間もエネルギーも使うだろうが、走り抜けるのにだって時間もエネルギーも使う。どちらが早いか、という話だ。
「地面から1m近い高さにある手をわざわざ地面近くのベースにまで持っていく無駄な時間」とある。その動作の間前進が止まるのであればたしかに無駄な時間と言えるだろう。だが実際には上図のように、落下と前進は同時に進行し、手は落下によって当然に地面に近付く。特に無駄と呼ぶべき要素は見当たらない。
それとも、倒れ込むのは時間がかかり過ぎるという指摘なんだろうか。それなら(目標まであと2歩の距離でダイブするとして、走っている時の重心が地面から1mの高さにあるとして、触塁のためにはそれが地上30cm の高さまで落ちる必要があるとすれば)、70cmの高さを自由落下するのに要する時間が、2歩を走る時間より短いか、あるいは同等程度であればそれで充分だろう。
全力疾走時に1歩を走るのに要する時間は、『DVD 日本人に適した最速の走り方(西東社/¥1,500)』によればトップレベルの短距離走者でも0.25 秒前後だという。2歩あたり0.5 秒。一方、地球上の、地表近辺での重力加速度を9.8として、物体が初速ゼロ(垂直方向の初速の話です)から70センチの距離を自由落下するのに要する時間は、高校物理公式集(1)によれば約 0.38秒だ。2歩を走るより余裕で速い。
ちなみに1メートルの自由落下に要する時間は約 0.46秒だ。「ヘッスラで跳んでる間に何歩走れると思ってるんだよwww」、みたいな意見もよく見かけるが、おおざっぱに言って2歩前後ということになる。0.46秒で3歩走れるようなランナーなら3歩だが、そういうランナーならダイブした場合も 0.46秒で(単純計算で)3歩ぶんの距離を跳べる理屈になる(もっとも、どの時点を落下開始とみなすべきか、厳密に決めるのはむずかしそうだが)。
ヘッドスライディングについて(MSN 相談箱)
直感とか感情論とか根性論とか物理方程式を持ち出すまでもありません。実際にハッキリとしています。1/100を争うような陸上競技の短距離走でのゴールシーンを思い出して下さい。誰一人としてスライディングなんてしませんよね。走り抜けた方が速い事はタイムが如実に語っています。
ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
>駆け抜けた方が早ければ、何でそのまま走り抜けて足でタッチしに行かないんでしょう?(nobio 註:ショットガンタッチのこと)
ただ、これは、競技が違いますので何とも言えません。貴方の例えのようないいかたで逆のことを言うと、「ダイブした方が早いなら、陸上の100m走は最後にダイブして入った方が早い」と言うことになりますが。100走が最後にダイブしないのですから駆け抜ける方が早いのではないかと思いますけどね。
「陸上競技では誰一人としてしない」ことが不合理の証明になる、と主張する人は、陸上競技の走者が誰一人として決してしない下図のような動作(いわば「片足飛び込み」)を、どうして今江やイチローがするのか、イチローがアホだからなのかどうか、考えてみていただきたい。陸上は胴体がゴールする必要があり、その点で野球より条件が厳しい。しかし胴体でいいということは歩幅合わせの心配がゼロということなので、その意味では野球(や水泳)より楽だ。また、陸上ではゴールライン上空ならどういう高さの通過でも認められ、その点でも地面(とほぼ同じ高さ)に触る必要がある野球より自由だ。ちなみに陸上短距離走でゴールすることを、漢字二文字では「入線」と表現するらしい。ご存じの通り野球では「触塁」。陸上と野球はルールが違う。
左:今江敏晃、右:イチロー
高校野球の宗教
上からのボールの話(nobio 註:ショットガンタッチのこと)は確かにそうでしょう。走っていれば腕は地上1mにあり、滑り込めば腕は床の高さになるわけで、この話は条件が違いますね。
一方、ショットガンタッチは野球とよく似ている。走っていれば腕は地上1mにあり、滑り込めば腕は床の高さになる。その通り、それは野球でもショットガンタッチでも同じだ。「条件が違いますね」とあるが、何が違うのかわからない。
ヘッドスライディングについて(MSN 相談箱)
ヘッドスライディングでは跳躍するための「ため」が必要になります。これがロスとして助走の段階で速度の低下を起こしてしまうわけですが、走っている状態での「ため」の動作は微妙であり、本人にも速度の低下を認識するだけの動作ではありません。試しにその場でジャンプしてみてください、足首だけでのジャンプではほとんど飛び上がることはできず、「ため」がどれほど大事なことなのか認識できるはずです。「ため」に使う力を速度の向上に振り分けた方が実用的ではないかと思います。
また、ヘッドスライディングの動作を開始する地点も理想の場所があるはずです。一定ではないバッティング動作から走行状態に入り、歩数を合わせることにもロスが発生すると考えられます。これらを総合的に考えた場合、走り抜けた方が「安定的」に早く走り抜けられるのではないかと思います。
いくらなんでも「一定ではないバッティング動作から走行状態に入り、歩数を合わせることにもロスが発生する」ことを理由にヘッスラ遅い、というのはおかしいだろ。結論はあらかじめ決めていて理由はついでに探してるとしか思えない。「一定ではないバッティング動作から走行状態に入り、歩数を合わせることにもロスが発生する」のは、駆け抜けでもヘッスラでも共通だ。そして、歩幅合わせ問題がより深刻なのは、どう考えても駆け抜けの方だ。
「野球の各寸法」によるとベースの一辺は38センチある。当然ベースの手前に触るのが一番早く、38センチ奥で触れば38センチぶん遅くなる。
ダイブの場合、走っている間は忙しいが跳んでしまえばヒマだ。踏み切る位置はけっこうアバウトでいいと思う(想像)。例えば4メートルの距離をダイレクトダイブできるランナーが3メートル30センチの距離で踏み切ったら70センチ余裕がある時点でタッチする、という具合に、歩幅を調整しなくてもタッチのタイミングを調整できる。危険は増すのかも知れないが、けがの危険をさておいて早いか遅いかだけを考えるなら、それでなんら遅滞はない。一方駆け抜けは歩幅で調整する(あるいは調整せずに奥を踏む、あるいはその折衷案)しかないわけで、その点についてのみ言えば、ヘッスラの方が「安定的」に成功するだろう。(もちろん「理想的な駆け抜け」と「理想的なヘッスラ」だけを比べるのであれば、歩幅合わせの問題は =というか安定性の問題は= 捨象してよいわけだが)
「足首だけでのジャンプではほとんど飛び上がることはできず、『ため』がどれほど大事なことなのか認識できるはずです」という文脈からすると、「ため」とはヒザと股関節の曲がりを指すのだろう。しかし、下図1-05 は「ショットガンタッチ」でのロナウジーニョのダイブのスロー再生だが、ふつうに走るときには(欽チャン走り以外では)ご覧の通りふつうにヒザも股関節も曲がるので、足首だけでのジャンプを心配する必要はない。そもそもヒザと股関節の曲げ伸ばしが速度の低下を招くのであれば、走っている間速度は低下する一方だ。
ヒザと股関節を曲げるのは構わないが、ヘッスラに行く最後のひと蹴りでは跳躍のための特別な「ため」が必要で、そのぶんがロスになるという意味だろうか。ロナウジーニョのフォームを見る限り確かに最後の踏み切りにタメ(膝と股関節の深い曲がり)を感じるが、そのせいで速度が滞っているとは感じられないのだが。踏み切りが「よっこらしょ」って感じに遅くなるとしたら、それはダイブがヘタな人なんじゃなかろうか。
図1-05 | Ronaldinho Gaucho in "Shot-Gun Touch" | TBS「筋肉番付 」2008
30分の1秒/コマ
タメによる踏み切りの速度の低下は、微妙な差だから私には視認できないのかも知れない。しかし一方リーチの差はけっこう大きく、一目でわかる。「図1-01」で判断する限り、「駆け抜け」と「ダイブ」の差は60センチ前後はありそうだ。これが、視認できないほどの微妙なロスによってひっくり返るというのは納得しがたい。1歩では微妙な差でも何歩も積み重なればけっこうな差になるだろうが、なにしろこれはダイブに行く最後のひと蹴りの話だから、積み重なりようがない。
コレコレの理由で遅くなる、と主張する人は多いが、その遅れのぶんがリーチ60センチのアドバンテージを明らかに上回る、ということを言わない限り、「明らかに遅いです」の論証にはならない。私はべつに「ヘッスラの方が絶対早い」と主張したいわけではなく、ヘッスラのさらなる普及と発展を願っているわけでもなく、どっちが早いのか正直どっちでもいい。ただ、正確にものごとを考えたいだけだ。ぜんぜん論証できないのに「明らかに遅いです」と自信満々で述べる人があまりにも多いのは、不気味だ。
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「これがロスとして助走の段階で速度の低下を起こしてしまうわけですが、走っている状態での『ため』の動作は微妙であり、本人にも速度の低下を認識するだけの動作ではありません」とまで言えるのは、よほど精密な実験を重ねて、データ取りと被験者への聞き取り調査を併せて行ったからこそ、としか思えないのだが、そのデータを教えてくれないところを見ると、もしかして想像を述べているだけなのだろうか。もしそうだとしたら、もう少しは想像らしく発言していただきたいと思う。「本人にも速度の低下を認識できないほど微妙なのではないかと私は想像する」だとか。いずれにせよ、そんな微妙なロスで60センチの差がひっくり返るのかという疑問は変わらない。
それと、この映像のロナウジーニョ(もちろんサッカーはうまい)は決してダイブ(の助走と踏み切り)がうまいとは思えず、ロナウジーニョのフォームがそうだからと言って、一般にジャンプするには踏み切りで膝と股関節を特別に深く曲げる必要がある、ということにはならない。走り幅跳びの映像なんかを見ると、「跳躍に必須の特別なタメ」なるものが、あるとしても如何に極小なのかと驚かされる。走り幅跳びの映像は、YouTubeで「Long-Jump」「Mike Powell」とかで検索すればすぐに見つかる。
ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
回答日時:07/07/03 17:46
一塁は特にスタートが万全の体制ではなくて加速がつけにくいので、飛び込むよりは一歩でも加速したほうが早いからじゃないでしょうか。
バレーボールのやつ(nobio 註:ショットガンタッチのこと)は結構スピードが乗りきるので飛び込んでも速度が変わらないからじゃないですかね。勘です。
回答日時:07/07/03 18:07
一塁に向かう場合には27mしかないので、加速段階に入った瞬間にヘッドスライディングの為に減速してしまいます。結果走り抜けた方が速いという結論が出ます。
また、筋肉番付の競技では上からボールが落ちてきますよね?
そうすると、下の方が落ちてくるのには時間がかかりますよね?
だから、飛び込んで体勢を低くして、ボールに触る時間をほんの少しでも遅らせていると思います。
自信満々星人のみなさんがひしめく中で、「じゃないですかね。勘です」という謙虚な発言スタイルに出会うと思わず敬意を抱いてしまうが、敬意を抱きつつも内容にはやはり疑問を覚える。野球の塁間距離は27m あり、ショットガンタッチはその半分以下だ。どっちが加速中かと言えばショットガンタッチではなかろうか。なにしろ「図1-05」のロナウジーニョなんて、ボタンを押してからわずか6歩(ダイブを入れて7歩)しか走っておらず、とても「結構スピードが乗りきる」とは思えない。
また、「下の方」を目指すなら飛び込んで体勢を低くすべし、というのはよくわからない。野球のベースだって地面スレスレの高さにある。地面スレスレを目指すには飛び込む方が有利だというなら、野球でも飛び込めばいいのではないか。足なら飛び込まなくても最初から「下の方」にある。「下の方」で触るのがいい、というだけの理由なら、ショットガンタッチでも足で行けばいいだろう。「27mしかないので走り抜けた方が速い」というのは、さらにわからない。そんなら12 - 3mしかないショットガンタッチでは、それ以上に走り抜けた方が速いことになる。
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ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
ひとまずショットガンタッチについてのみですが…
あれは下がマットか何かだったと思います、なので怪我の心配が小さく思いっきり飛び込めるんだと思います
ボールをほんのちょっとでも触ればいいので、頭から飛び込んでリーチを使ったほうがいいのだと思います
野球だと下が土なりなんなりで怪我の恐れがあり、なかなか思い切りよくはいけないかもしれません(プロはともかく)
「ほんのちょっとでも触ればいい」のは野球も同じだ。床面の違いについては、つまり「怪我の心配さえなければ、野球でもヘッドダイビングしたほうが早いかも知れない」という意味だろうか。だとしたら私と同じ意見だ。
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ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
回答日時:07/07/04 12:04
ちなみに真上から落ちてくる球を足で蹴る行為はサッカー選手でも難しい事です。それにあの競技は落ちてくる球の位置も微妙にズレが出ます。ただそこを駆け抜ければ自動的に足に当たるとも言い切れません。うっかり早く行き過ぎたら球が落ちきる前に自分が通過してしまうことにもなりかねません。歩幅があわなくてあわせに行ったらかえって遅くなります。球が落ちてくるタイミングに合わせて体をその位置で通過させると、タイミングの誤差は体の厚み分しかありません。人間の体は横から見たら凄く薄いですよ。左足が前の時に右足の位置に球が落ちてきたら修正が出来ません。落ちてくる球に対して落下地点を駆け抜ける行為が如何にナンセンスか、このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かります。
回答日時:07/07/04 14:09
ショットガンタッチの場合、ボールは自然落下しますから空気抵抗などの関係で多少ふらふらしながら落ちてきますし、走っているうちに微妙に自分の体がズレるということもあります。すると、ボールをタッチする体を多少修正する必要が出てきますね。それなら、足よりも手を使うほうが便利です。また目からも近いので微妙な修正がしやすいです。
落ちてくる球の位置も微妙にズレが出るだとか、空気抵抗で多少ふらふらしながら落ちてくるとかいう話はたぶん、自分の思い込みを正当化するためならば人は如何にありもしない記憶を脳内で捏造するか(しかも善意で)、ということの一例ではないだろうか。いや二例か。何故かあまり指摘されないが、下の写真の通り、ショットガンタッチでは床面に的が描いてある。私が見た範囲ではすべての試技で、球は的の中心の黒い目玉に正確に落ちていた。(この写真でボールの残像が垂直でなく放物線状に見えるのは、軌跡がブレてるのではなく、カメラがロナウジーニョを追って左から右にクビを振ってるから)
図1-06 | Ronaldinho Gaucho in "Shot-Gun Touch" | TBS「筋肉番付 」2008
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「タイミングの誤差は体の厚み分しかありません。人間の体は横から見たら凄く薄いですよ」というのもどうかと思う。まっすぐ駆け抜ける人体を「一定速度で水平移動する高さ180cmの直立したヌリカベ」だと考えると、「タイミングの誤差の許容範囲は壁の厚みぶんしかない」ように、一見思われるが、そんなことはない。べつに脳天でボールを受ける必要はない。許容範囲はヨコにないぶん、タテにある。10mの高さから落下するバレーボールの下面が「上空180cm地点」まで落ちるには約1.297秒、「床面スレスレ」までは約1.428秒、その差は 0.13秒。その間であればいつ落下点を通過しても、ヌリカベのどこかの高さに当たる。優秀なランナーなら1メートル以上走る時間だ。誤差の許容範囲はヨコに換算すれば1メートル以上ある、ということになる。(下図に表示される秒数は、ボタンを押してからの時間ではなく、ボールが落下を始めてからの時間)

また、脳天でボールを受ける必要がない、だけでなく、実際の人体はヌリカベではないし、「一定速度で水平移動する」必要もない。ゆうゆうクリアできる距離の場合、タイミングを合わせないと行き過ぎてしまうわけだが、ゆうゆうクリアできる距離なら、減速しつつ、余裕を持って手でキャッチするなりパンチするなり、あるいは落下地点で立ち止まって落ちてくるボールを待つなり、いずれにしてもタイミングを合わせるのは簡単だろう。これは試さずに想像で発言してるのだが、このくらいは簡単に実験できるので試してみれば分かるのではないだろうか。下のアニメーションを見る限り、まっすぐ走って頭頂部もしくは顔面に当たるとしたら、タイミング的にはけっこう余裕綽々で、プレイヤーの実感として「ゆうゆうクリアできる距離」じゃないかと思う。

では、距離が限界ギリギリに近付いてくるとタイミング合わせがシビアになるのか。たぶん、ならない。限界ギリギリに近付いてきたら、単に全力で走ればいい。
「限界ギリギリの距離」イコール「全力で走ればギリギリ触れる/あるいはギリギリ触れない」距離だ。限界ギリギリの距離での結果はどうしたって「ギリギリ触れる」か「ギリギリ触れない」のどちらかになる。つまり、限界ギリギリの距離に近付くにつれ、心配しなくてもタイミングは自然にピンポイントに収斂していく。しかも落ちてくる位置は正確にわかっているのだから、じつは、そもそもボールを見る必要すらなく、ただ床面の的を目指して無心で全力で走ればいい。
いちおう根拠もある。ショットガンタッチで手を前方に伸ばしてダイブしたプレーヤーの、頭や背中にボールが落ちるのを、見たことがない。あいまいな印象ではあるが、印象としては、前腕部すらないですね。私が見た成功例はすべて、手のひら、あるいは指先でボールに触れたものだ。要するに「ほぼピンポイントでタイミングが合う」か、あるいは「ほぼピンポイントでギリギリ間に合わずに失敗」かの、どっちかしか見たことない。みなさん「落ちてくる球に対して駆け抜けでタイミングを合わせるのはむずかしい」と言うけれど、「落ちてくる球に対して3、4メートルも離れた地点からのダイブを合わせる」方がよっぽどむずかしくないか。駆け抜けならギリギリの段階で最後の微調整も可能だが、ダイブは跳んだら最後、なりゆき任せですよ。ところが、それでも百発百中で、ほぼピンポイントでタイミングは合うのである。少なくとも、各プレーヤーの限界あたりでは。これを「さすが一流ぞろいのアスリート」と解釈するよりは、ギリギリを競う競技の必然、と考えた方がリーズナブルだと思う。
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ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
回答日時:07/07/04 09:39
筋肉番付の競技は空中のボールにタッチに行くもので言わば空中でのタッチ。一方でスライディングはベースタッチに行くので地面へのタッチ。空中への対応でとなればダイビングした方が早いですが、地面への対応となると走りぬけたほうが早いと思います。
回答日時:07/07/04 14:09
ショットガンタッチについてですが、あれはボールが上から落ちてきて、そのタイミングに合わせてボールに触れなければなりません。そして走るときどんな体勢になっているか考えてみてください。当然、前傾姿勢ですね。それを足からタッチしにいくとなると、前傾姿勢を後傾姿勢に変えなければなりません。当然、タイムロスになるわけです。それなら、ヘッドスライディングをしたほうが前傾姿勢をそのまま倒せばいいのですからこっちのほうが早いですね。
それに比べると、野球の一塁の場合はベースが地面に固定されているから自分は目標に向かって全力で走ればいいわけです。
ショットガンタッチでは空中でボールに触る必要がある、というのはその通りだが、そのために「微妙な修正」や「空中への対応」や指先の繊細なコントロールが必要だとかいうのは思い込みに過ぎない。繰り返しになるが、何故なら、静止した床の的に触ればいいからだ。
ショットガンタッチは
「『的』に落ちるより先に『ボール』に触る」ことを目指す競技だが、それは
「『ボール』が落ちるより先に『的』に触る」こととイコールだ。
手であれ足であれ、ボールより早く的(の中心の黒い目玉)に触ることができれば、結果としてボールは床に当たらず、プレーヤー(の手か足)に当たる。床に当たる前にプレーヤーに当たれば「空中で」当たったことになる。
皿に残ったクッキーの最後の1枚を狙って、ノビ太とスネ夫が同時に手を伸ばした。この場合のクッキーが、ショットガンタッチにおける床面の的だ。「スネ夫の手」が「落下するボール」に相当する。ノビ太がクッキーを確保するには、クッキーに届く前にスネ夫の手をブロックする必要がある。または、スネ夫の手が届く前にクッキーをブロックする必要がある。どっちでもいい。どっちでも、スネ夫の指先は「空中で」ノビ太の手の甲に当たるだろう。そういうことです。だから、地面への対応には足で行く方が有利だと思うならば、ショットガンタッチでも足で行くべきだ。「左足が前の時に右足の位置に球が落ちてきたら修正が出来」ない、なんてのもナンセンスだろう。的(の中心の目玉)はバレーボールのサイズに対して充分に小さいので、どっちの足でもいいから目玉を踏めばいい。
「微妙な修正」が必要ないだけでなく、これも繰り返しになるが、タイミングを合わせる必要もない。規定を確認したわけではないが噂によれば、ボールは床から10メートルの高さにセットされているらしい。物体が地球表面付近で初速ゼロから10メートルの距離を自由落下するのに要する時間は約 1.4286秒だ。実際にはボタンを押してから落下開始までには機械的なタイムラグがあるだろうし、厳密なことを言えば少しは空気抵抗の影響もある。まあ、約1.5秒という理解でいいだろう(「図1-05」ではボタンを押してからボールタッチまでにちょうど45コマかかっており、このことからもこの動画が30分の1秒/コマであることが確認できる)。じつはショットガンタッチは「ボタンを押してから約1.5秒で、いかに遠くの床に触れるか」を競う競技なのだ。そして一回々々の試技については(余裕の距離のうちはともかく、ギリギリの距離になってくれば)「ボタンを押してから少しでも早く的に触る」ことだけ考えればいい。つまり、ボールを見る必要すらなく、ただ無心で全力で走り、駆け抜けるのが早いと思うなら駆け抜けで、飛び込む方が早いと思うならダイブで、床面の的に触ればいい。「約1.5秒」以内で触れられればクリア。タイミングは心配しなくても結果的に合う。
ショットガンタッチで「歩幅があわなくてあわせに行ったらかえって遅くなります」というのもおかしい。それは野球の方だ。さっきから「触る」と一応書いているが、野球なら必ずベースに触る必要があるのに対して、ショットガンタッチではそれに神経を使う必要は = つまり歩幅を合わせる必要はない。踏めなくても的の上を駆け抜ければ(余裕の距離のうちはともかく、ギリギリの距離なら)、ボールはピンポイントのタイミングでつま先に当たるか、そうでなければギリギリアウトになる。
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「走るときは前傾姿勢なので、足からタッチしにいくと当然タイムロスになる」「ヘッドスライディングをしたほうが前傾姿勢をそのまま倒せばいいのですからこっちのほうが早い」のであれば、野球でもヘッドスライディングの方が早いのではないだろうか。例えばイチローは一塁へは必ず「足からタッチしにいく」けれど、あれは「当然タイムロスになる」ような手段をわざと選んでいるのだろうか。
そもそも、走るときは「当然、前傾姿勢ですね。それを足からタッチしにいくとなると、前傾姿勢を後傾姿勢に変えなければなりません」のような説明がいかにリアリティのない空理空論か、上のアニメーションを見ても下の写真を見ても明らかだと思うが、どうか。
図1-07 | Ichiro Suzuki 2009.06.03 / Yuichi Honda 2009.05.31
ちなみに右はピンクリボンキャンペーン中。一塁手はトニ・ブランコ
ヘッドスライディングについて(Yahoo! 知恵袋)
回答日時: 2007/8/23 14:53:49/回答番号: 40,044,937
走っている体勢からそのまま倒れこむ事は無理です。
滑り込む体勢にするにはかがみこまなければなりません。それによって減速するのです。
かがまないようなすばらしい前傾姿勢で走れれば 別ですけど。
「走っている体勢からそのまま倒れこむ」のがなぜ無理なのかわからない。「かがまないようなすばらしい前傾姿勢で走れれば 別」とあるが、「すばらしい前傾姿勢」と「かがんだ姿勢」はどう違うのか、それもわからない。よくわからないが、「ダイブするためにはその前にかがむ必要がある」というのがこの発言の主旨だとしよう。ほんとうにそうだろうか。
走るという動作は「脚を後ろに蹴っては急いで前へ戻して腿を振り上げ、前に伸ばして着地」の繰り返しだ。「後ろへ蹴ったまま、前へ戻すのをやめる」だけで、ダイブする気がなくても否応なくダイブになるのではないか。倒れ込もうという意識は必要かも知れないが、事前にかがむとか重心を下げるとかの予備動作が必要とは思えない。「後ろへ蹴ったまま、前へ戻すのをやめる」だけで、重力で「図1-04」の通り体は放物線を描いて落ちて行く。「走って来て重心を下げて、そこから斜め上方向にジャンプ」じゃロスが多い。「走って来た水平方向の勢いをそのまま水平方向に生かす」方が速いだろう。そんなことは無理です、と主張されているように読めるが、根拠はなにも書いてない。無理なのか? 無理どころか、いちばん無理もロスもないダイブの心得じゃないかと思うんだが。「胸、あるいは腰の高さにある手をわざわざ下に持って行くことの不合理」というような指摘もよく見かけるが、意味がわからない。体が落ちていくのに伴い、肩も落ちていく。必要なのは前に手を伸ばすことだけだ。荒木や英智や平野恵一にインタビューしたら、「素早いヘッドスライディングのコツは、かがまないこと」とか言うんじゃないだろうか。どのていど減速するかしないかは、個人差も含め、検証しないとわからない。
図1-08 | Keiichi Hirano 2009.05.14
ロナウジーニョのダイブよりずっと速そうだ。重心を下げずに踏み切ってそうな感じ。
ヘッドスライディングについて(Yahoo! 知恵袋)
回答日時:2007/8/24 10:49:55
ヘッドスライディング直前の状態では、体勢は極端な前傾姿勢になってます。自分の足を前後に振った距離と上下に上げ下ろしした距離を比べればすぐに分かりますが、前者の方が遙かに長いです。極端な前傾姿勢では足を動かす距離は、後者の足の上げ下ろしの距離にしかなりませんので、上記の理由により走る速度は極端に低下します。これがまずヘッドスライディングでは急に減速する理由の第一です。
まるで「極端な前傾姿勢になってから地面を蹴る」かのような解説だが、「タッタッタッタッタッと同じリズムで走ってきたのに最後の1歩だけ地面を蹴ることをパタッとやめて前傾し、極端な前傾姿勢になってからあらためて地面を蹴る」なんて、あり得ないでしょう。ヘッドスライディングの踏み切りは「前傾姿勢になってから地面を蹴る」のではなく、「前傾しながら地面を蹴る」「地面を蹴りながら前傾する」のである。だいたい「これがまずヘッドスライディングでは急に減速する理由の第一です」とか、どうしてみなさんこうも「ヘッスラは遅い」前提でものを言うのだろう。仮に減速するとしても「急に減速」はいかにも怪しい。だって、惰性で速度を保つのがいちばん簡単なわけで、急に減速するのはそれより難しいんですよ。
また、「脚を前後に振る距離」は「膝の曲げ伸ばしの距離」よりも遥かに長い、だから前傾して地面を蹴ると速度が低下する、という主張のようだが、ほんとうにそうだろうか。前傾しながら地面を後ろに蹴ることによって、最後のひと蹴りは通常の1歩よりも強力に、ランナーの重心を前に運ぶのではないだろうか。
そう思う理由その1:一般的に前蹴りよりもドロップキックの方がパワーが出るし、立ち幅跳びよりも真上にジャンプする方が力強い。つまり頭部及び胴体に対して直角方向の蹴りよりも、頭部及び胴体に直列する方向の(ロケット状の)蹴りの方が、股関節+膝+足首のバネを有効に使え、強力である。立った体勢で地面を後ろに蹴るよりも、(靴底のグリップ力さえ充分なら)前傾姿勢で地面を後ろに蹴る方がビョーンと強く蹴ることができる。水平に近く前傾するのはほぼ地面を蹴り終わった時点かも知れないが、それでも最後の最後の脚のひと伸びに差が出るのではないか。
理由その2:理由1と同じことなのかも知れないが、通常の1歩は重心を前に運ぶと同時に(転ばないように)上に保つ。前傾しながらダイブに行く最後の1歩には「転ばないようにする」成分が不要なので、そのぶん前に集中できる。
理由その3:靴底のグリップ力が充分であれば、パタンと前に転ぶことによる(重力による)加速が加算される、ような気がする。
下図Aは駆け抜けの、Bはダイブにいく直前のフォーム(の例)。この時点で両者のスピードは同じだとして、少しでも強く地面を蹴り、少しでも速度の乗ったロケットダッシュをキメたいなら、どっちの姿勢が有利だろう。3歩以上先を考えるのであればAだろうが、「次の瞬間」だけの勝負ならBじゃなかろうか。相撲取りAと相撲取りBが向き合って激突すれば、Bが一気に押し込みそうな気がする。
3歩以上先を考えるのであればAだろうが、「次の瞬間」だけの勝負なら、私なら断然Bの姿勢をとる。
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ヘッドスライディングと、全速力でベースを駆け抜けるのと(Yahoo! 知恵袋)
2007/6/1 15:44:51 回答番号: 37,730,000
ベースに達する寸前に、全速で倒れ込む。
タイミングが良ければ、走り抜けるより一瞬早くなる。ただし、良くて打撲、悪くて骨折で、もう走れなくなる。
最後の一歩を全速で倒れ込むのがベスト、という説はたまに見かけるが、誤解だと思う。たぶん、一歩を走るより速く転ぶことはできない。あと一歩走れば届く距離であえて手でタッチにいくなんて、リーチのメリットはないし、他にも何もメリットがない。「トムとジェリー」じゃあるまいし、全力疾走から全力で転ぶと物凄いスピードで転べる、という考え自体が眉唾である。天井か手すりを補助に使えない限り、しゃがんだり倒れたりという下向きの動作(重心を下げる動作)の速度には限界がある。全力疾走の勢いは水平方向にあり、それを垂直方向に直接生かすことはできない。げんに陸上のハイジャンプの選手の助走なんて、全力疾走とはほど遠い。いくら勢いつけても垂直方向には直接生かせないからだ。他方、ロングジャンプの選手の助走はいかにも全力疾走っぽいが、あれは水平方向の勢いを水平方向に生かすためだ。
- 「普通に歩いてて普通に転ぶ」のも、
- 「全力疾走から全速力で1歩の距離を転ぶ」のも、
- 「全力疾走から全速力で2歩の距離をダイブする」のも、
どれも、落下(下向きの重心移動)に要する時間は基本的に変わらないんじゃなかろうか。まあ完全に同じではないとしても、大きく違うと考える根拠も思いつかない。だとすると「全速力で1歩の距離を転ぶ」のは「2歩の距離をダイブする」のに比べて、かかる時間は同じなのに稼げる距離は丸々1歩ぶん損、ということになる。それに(というか、同じことかも知れないが)、あと1歩の距離で倒れ始めて指先で触塁するには、超人的というか漫画的というか、とにかくあり得ないような技術とエネルギーを費やして、足裏が突然地面にビタッと貼り付いたかのようなブレーキをかけねばならんではないか。「全力疾走の勢いを生かして転ぶ」どころか、「せっかくの全力疾走の勢いを無理矢理ビタッと止めて転ぶ」わけで、はなはだしく無駄、かつ危険だ。倒れるなら2歩以上の距離を飛び込むべき、と、思うんだが。
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ヘッドスライディングは無意味?(教えて! goo)
回答日時:04/08/31 13:18
1塁へのスライディングは走りこむ方が早いと思います。スライディングする地面の摩擦係数が限りなく0に近く無い限り減速するからです、身長分が有利に感じるかも知れませんが日本人の身長170cm前後腕の長さ含めても250cm程度として倒れる速度よりも3〜4歩走る方が確実に早いからです。
回答日時:04/08/31 00:40
当然ヘッドスライディングの方が遅くなります。
一見ヘッドスライディングの方が、飛ぶのだから早く思われるかの知れませんが、実際には地面に着地した時点から急激に速度が落ちるからです。
飛んでいる最中は全く加速状態になく、等速運動でもなく、空気抵抗を受け減速している状態です、まして、着地後のスライディング中なんかは急ブレーキを掛けているような物ですね。結果として、「ヘッドスライディングするより、走り抜けたほうが速い」となるわけです。
ブレーキをかけているのと同じだから遅い、というのはよく聞く説だが、程度問題でしょう。ズザーッと長い距離を滑れば遅いのは当たり前だ(高校野球の最後の打者なんか、ベースのはるか手前で止まってしまう例も多い)し、「左手ダイレクトダイビング・アンド・ズザー」ならブレーキがかかるのは触塁後なので無関係だ。その中間にさまざまな程度のブレーキがあり得る。「すべてブレーキがかかるので、すべて遅い」で片付く話ではない。
「倒れる速度よりも3〜4歩走る方が確実に早い」というのは、到底事実とは思えない。すでに見た通り、トップレベルの短距離走者が全力疾走で2歩走るよりも、物体が70cmの距離を自由落下する方が余裕で早い。「3〜4歩」なんて問題外だ。なんだよ「確実に」って。根拠もなくてきとーなことを断言しないでいただきたい。
「日本人の身長170cm前後腕の長さ含めても250cm程度として」とあるが、これは単純に身長と腕の長さを足してるのだと思われる。腕は頭のてっぺんに生えているわけではない。身長180センチの選手が手をまっすぐ上に伸ばしても、総長220センチ程度だろう。これを「倒れることによって稼げる距離」と呼ぶとすれば、「倒れることによって稼げる距離よりも3〜4歩走る方が確実に距離が長い」とは言える。しかしわざわざ立ち止まってから倒れるわけじゃないんだから、そんな比較は意味がない。そもそもトップレベルの短距離走者でも、倒れる時間に「3〜4歩」も走れない。
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「ダイブすれば推進力を失う」「飛んでいる最中は全く加速状態になく、等速運動でもなく、空気抵抗を受け減速している状態です」という主張も、その通りだとは思うが、だからと言って走り抜ければ減速しないのかどうか、それはまた別の話だ。荒木雅博なら最後の1歩で加速できるのかも知れないが、中村剛也ならむしろ遅くなるかも知れず、「荒木なら駆け抜けもダイブも速いし、中村なら駆け抜けもダイブも遅い。人それぞれ」とでも言うしかない。いずれにしても塁間距離は27メートルちょっとあり、ベース近辺では加速の余地は、あるとしてもわずかだろう。要するに、駆け抜けた場合だって、疲れて減速中かも知れないし、そうでなくても大した加速状態にはなく、ほぼ等速運動中である。「ダイブすれば推進力を失う」という人は、「失われる推進力」に幻想を抱き過ぎではないか。
(27m しかないので、野球選手は陸上の100m 走の選手に比べ、加速を終えて全力疾走に移行するタイミングが早いはずだ。「荒木なら最後で加速できるかも知れない」といちおう書いたが、優秀なランナーなら最後に加速できる、という命題が真なのかどうか、じつは私にはわからない。優秀なランナーなら速やかに加速を終えてトップスピードの区間が長いのかも知れない。最後の1歩まで加速の余地を残しているとしたら、逆に言えば全力疾走のポテンシャルを発揮できないうちに塁に着いてしまっているということなわけで、それは荒木雅博ではなく、例えばタイロン・ウッズのような、「鈍足のイメージがあるが加速に時間がかかるだけで、トップスピードは案外速い」と言われるタイプの方かも知れない。)
全力で加速中の自転車のペダルをふいに止めたら、加速を続けた場合に比べてガクンと遅くなる。足のウラに感じる負荷がガクンと消えることでそれが実感できる。だが等速運動中なら、いくらスピードが出ていようと、ペダルにかかる負荷は空気抵抗および接地抵抗に釣り合うだけのわずかなものだ。ふいにペダルを止めても、ガクンと減速するわけではない。ダイブするということは自転車で言えば「ペダルを止めると同時に宙に浮く(接地抵抗をゼロにする)」ことに当たる。しかも姿勢を考えれば、空気抵抗は走り抜けるよりも小さいだろう。
走り抜ければ減速しないと仮定しても、ダイブによるリーチのアドバンテージは60センチ前後ある。4メートルの距離をダイブするとして、(延ばした指先まで人体の総長220 センチとすれば)足首の移動距離で言えば180センチだ。3メートルダイブならわずか80センチ。それだけの間に受けるわずかな空気抵抗によって、距離にして60センチぶん遅れるのか。いや60センチでようやく同等だ。「明白に遅いです」ということが言えるには、遅れのぶんが60センチを明白に超える必要がある。あり得ないような気がするんだが、どうか。
上に掲げたショットガンタッチ駆け抜けアニメーションは1コマ0.1秒だが、同じアニメを1コマ 0.5秒にして見ると、ごらんの通り、通常のランニングフォームだって宙に浮いてる時間は結構長いことがわかる。
01から08までの8コマ中、「04」「05」「06」「07」の4コマは宙に浮き、推進力を失っている。この図は軽めのランニングのフォームだ。全力疾走ならもっとストライドが広くなり、浮いている時間の比率はもっと高くなるだろう(想像)。走り抜けたって、最後の一歩を踏み切ってからベースに着地するまでは推進力を失って宙に浮いているのである。推進力を失う時間が少ない方が速いとしたら、地上では競歩がいちばん速いことになる。じっさいには競歩よりも走る方が速い。「推進力を失う時間が少ない方が速い」という理論は、(場合によっては正しいのかも知れないが)必ず正しいわけではない。
1歩走れば1歩ぶん加速できるとしても、同時に、1歩走るには1歩ぶん時間がかかる。1歩減らせば1歩ぶんの推進力を失うのかも知れないが、そのことは同時に「ワンステップの手間をカットする」とも呼べる。
飛べば推進力を失う、だから遅いと言う人に聞きたい。あなたがボテボテのサードゴロを打って一塁に走ったとする。あなたの全力疾走時の一歩が180センチだとする。最後の1歩が2メートル残ったとする。どうしますか。歩幅を広げて1歩で行きますか。歩幅を狭めて刻みますか。私なら頑張って歩幅を広げて1歩で行く。その方が早いと思う。今江敏晃だってイチローだってそうするはずだ。ところで、走ってる時はふつうの1歩でも宙に浮いてるんですよ。走っている時に歩幅を広げるということはすなわち、推進力を放棄して飛ぶ距離を伸ばすということなのだ。推進力を失えば必ず遅いと考えるのは間違いである。
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一塁へのヘッドスライディングはやっぱり遅くなると思う
ショットガンタッチは最長でも13メートル(?)しかない。13mじゃトップスピードになる前にボールに接触する。つまり体は加速するため前傾姿勢のまま。肩の位置は低く重心よりかなり前方に出てると思う。その状態なら頭から突っ込んだ方が早い。たぶん。(中略)本塁から一塁までは27メートルとちょっと。加速の早い野球選手ならすでに上体を起こして走っている距離。だから肩の位置は高いし重心の真上あたりにきているはず。その状態からのヘッドスライディングはやはり若干タイムが遅くなるはず。
肩の位置が高いとダイブしにくい、というのは心理的にはその通りで、たしかに初心者は躊躇して遅くなるかも知れない。しかし心理的要素を除けば、肩の位置が高いとヘッドスライディングは遅くなる、と考える根拠はない。「図1-04」のように積木を倒すことを想像すると、倒れるのに要する時間は単に重心の位置に依存するのではないだろうか。もちろん重心の位置が高いと倒れるのに要する時間は長くなるわけだが、上記の計算によれば、それでも2歩走るよりは速い。
むしろ、野球では加速がほぼ終わっているから飛んでもほとんどロスはない、とも言える。上の方に、「ショットガンタッチは結構スピードが乗りきるので飛び込んでも速度が変わらない」という意見があり、こっちは逆に「ショットガンタッチはまだ加速中で前傾姿勢なので飛び込みやすい」だが、どっちも納得いかない。「ショットガンタッチはまだ加速中だから、駆け抜ければ加速できる。ダイブに行くことで失うものは大きい」のではないか。
また、重心が高い方がロングダイブが可能だ。もちろんダイブが不利だとすればロングダイブはもっと不利だろうが、ここまでのところ、ダイブが不利だという説得的な論拠は発見できない。ひとつとして、だ。
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ヘッスラは遅い、という主張の論拠として「ためらい」や「恐怖心」を挙げる人もけっこう多いようで、それも不思議だ。
- 学童に教えるのに背面跳びとベリーロールのどっちがいいか
- ママさんチームを率いて市民大会を目指すんだが、背面跳びとベリーロールのどっちがいいか
- 中高年の肥満対策に背面跳びとベリーロールはどっちがいいか
などであればいくらでも議論の余地があり、答はケース・バイ・ケースだ。しかし、単に無条件で「背面跳びとベリーロールのどっちが有利か」と言ったら、高いレベルではどうか、という話でしょう、普通は。「背面跳びとベリーロールのどっちが有利か」とただ訊かれたときに、「背面跳びはどうしても恐怖心が」とか「前向いて助走しながら背中方向に反転するのですから、助走の勢いをスムースに生かすことはなかなか難しく」とか言い出す人はいない。そんな初心者レベルの課題は克服したとして、という前提の話だからだ。ヘッドスライディングに限って、何故か初心者レベルの課題が強調されるように見える。何故なのかわからない。
野球とショットガンタッチの比較についてのまとめ
多くの人は、ショットガンタッチではダイブした方が絶対に有利だと考えている。見てると実感としてそう思わざるを得ないのだろう。しかし同時に、野球では駆け抜けた方が絶対に速いと考えている。この説のルーツは不明だが、信仰は非常に強固だ。そのため多くの人は「野球とショットガンタッチはぜんぜん条件が違う」と主張する。だが、どう違うかについては、はなはだ怪しい説ばかりだ。
時として「いや、床さえ普通ならショットガンタッチでも駆け抜けた方が速い。だからこそ駆け抜けられないような床にしてあるのだ。番組的にダイブの方が絵になるから」という主張もなされる。「ダイブは遅い」と言うならばこの方が筋は通っているだろう。しかしながら、じゃあそういう人が「何故駆け抜けた方が速いと思うのか」について説得力ある説明をしてくれるのかと言えば、残念ながらそういう例には出会ったことがない。私の知る限りでは、みなさん「言うまでもなく」「当然」「明白」とか言うばかりだ。
自分自身、まっすぐ駆け抜ける方が速いと信じていた身としては、世間の常識に援護してもらいたかったのだが、そんなこんなで逆に疑念ばかりが膨らんでしまった。なんなんだこれは。みんなどうかしてるんじゃないか。「怪しいUFO目撃談」をいくつ挙げたところでUFOの存在を否定したことにはならないが、代表的なUFO目撃談が怪しければ、とりあえず疑わしいと思った方がいい。
もしかすると「ヘッスラは遅い」というのは迷信なのではないか。一度は真剣にそう考えてみてもいいのではないか。
ショットガンタッチも、たぶん一般的にはヘッドダイブの方が有利だと思う。ただ、あれはあまりに距離が短い。ボタンを押してから最大でも8歩、まだまだ加速の余地は大きい。だから野球に比べて、最後の一歩を失うことのデメリットは大きいはずだ。個人の適正によっては「駆け抜け」にトライする価値はあると思う。最後の一歩は床が柔らかい上に表皮が向こう側に滑るように作ってあるようだが、手前方向には滑らないみたいなので、1歩くらいなんとかなるんじゃなかろうか。
▼野球とショットガンタッチの違いでひとつだけ私が思いつくのは、あれで走り抜けるのはたぶん「怖い」んじゃないか、ということだ。ボールが顔面に当たりそうだったら余裕で手でパンチできると思うが、ギリギリのタイミングなら足元あたりにボールが来るわけで、それは怖いのではないか。万一絶妙のタイミングでボール踏んじゃったら捻挫するかも、とか考えたり。だって全力疾走してる短距離走者の足元にバレーボールを放り投げたりしたら、危険じゃないですか。なんとなくそんな気がする。
だから純然たる駆け抜けよりも、「足からのスライディング」あるいは「軽いフットダイブ」の方がいいかも知れない。足からのスライディングなんて遅いに決まってる、と多くの人は考えているだろうが、それも疑ってみる価値はある。
ヘッドスライディング:foot-dive
フット・ダイブ
イチロー・スズキは決して一塁にヘッドスライディングしない。2008年現在の日本でイチローはかなりきょくたんに神格化されているので、まっすぐ駆け抜ける方がはやいとイチローが考えてる以上それが正しいんだろ、みたいな意見もけっこう見かける。しかしイチローは、まっすぐ駆け抜けるのがいちばんはやいとは、考えていない。この写真が証拠だ。
ぎりぎりのタイミングの時にはよく、この写真のように突っかい棒のように(ブレーキをかけるようでもある)脚を前へ突き出してベースを踏みにいく。これはべつに野球選手の専売特許ではなく、地面に目印、あるいはゴールを描き「先に踏んだ方の勝ちな」的な遊びをやれば、たぶんすべての子供が無意識に行う。陸上短距離の選手は決してこんなことはしないが、彼らといえども、影踏みをやればやはりこの動作をするに違いない。この動作には名前がまだない。仮にここでは「片足跳び込み」「片足ダイブ」あるいは「フットダイブ」と呼ぼう。
2009年現在、片足跳び込みは未知の研究分野だ。理想のランニングフォームを解説した書籍だとか、ヘッドスライディングの練習方法を解説したサイトだとかいうものはいくつもあるが、片足跳び込みについて解説した書籍もサイトもDVDも、まったく聞いたことがない。多くの野球選手が一塁へ片足跳び込みするが、イチローをはじめ多くの野球選手はその自覚さえなく、それを「まっすぐ駆け抜けた」と呼ぶ。片足跳び込みは目標まであと一歩の距離で行うのが理想なのか、あと一歩よりちょっと長い距離を跳ぶ方がいいのか、たまたま狭い距離が残った時にも効果はあるのか、つーかそもそも、片足跳び込みはまっすぐ駆け抜けるより早いのかどうか、いっさい何も明らかでない。「ぎりぎりのタイミングの時には」といちおう書いたが、それも「セカンドを狙う気がない時には」の方が実情に近いのかも知れないし、あるいは「最後の1歩に微妙に長い距離が残った時には」なのかも知れない。イチローが、まっすぐ駆け抜けるより片足跳び込みをした方が触塁が早いと考えているのか、それともそんな自覚はない無意識の動作なのか、それもわからない。ただ、これが一瞬でも早くベースを踏みたいという気持ちの表れなのは明らかなので、イチローに自覚があろうとなかろうと、「イチローは、まっすぐ駆け抜けるよりも片足跳び込みの方が早いと考えている」と言ってもいいだろう。まあ言わなくてもいいか。
走っている時、前脚と後ろ脚を前後に大きく開く瞬間がいちばん、重心から脚がせり出している。つまり、リーチを稼いでいる。何かを急いで踏みたいのであれば、その瞬間に踏みたい。瞬間でなくても、なるべくその辺りで踏みたい。子供もプロ野球選手も等しくそう考える。しかし、通常その姿勢のときは両足が宙に浮いている。何も優秀なアスリートでなくとも、小学生の女の子がちょこちょこっと走る程度でもそうだ。浮いているけど踏みたい。踏みたいけど浮いている。最後だけは浮かせたくない。そうして最後の一歩だけ微妙に姿勢を、いや姿勢なのか何なのかわからないが何かを無意識に調整し、なるべく大きく振り出した体勢で踏もうとするのだろう。すべて想像だが。
1塁を左足で踏むとする。左膝を振り上げると同時に、右足で地面を蹴る。右脚が地面を離れ、左足は膝から下を振り子のように前に振り出す。宙に浮いてしまうともう、惰性と重力に任せて着地を待つのみ。陸上競技と違い、次の着地が即ゴールなので、蹴った後ろ脚を大急ぎで前に運ぶ必要はないし、前脚は、次に接地しても地面を強く掻く必要はない。だから、なるべく前方に振り出したまま、リーチを保った状態で着地したい。その方が距離が稼げて得だ。だから膝を伸ばした状態で着地しようとする。深く考えなくても人はみな咄嗟に無意識にそう判断する。そういうことじゃないか。
▼要するに・・・
この図で言うと「3」の姿勢で固まったまま落下するのが片足跳び込みなのだろう。だとすると、最後の一歩が多少広めに残った場合に効果があるわけだ。
ともかく、いまのところ片足跳び込みについてはすべて想像でしか語れないが、ただ、片足跳び込みと「脚からのスライディング」の境界は、下図の通り、微妙だ。微妙にどっちが早いかは不明だが、少なくともリーチの点では後者が有利だ。後者が早いとしても不思議はない。と、いうことは。
もしも「片足跳び込みは駆け抜けよりも早い」としたら、なんと、「脚からのスライディングが駆け抜けより早くても不思議はない」ということになる。論理的に、そういうことになる、のである。
「駆け抜けより脚からのスライディングの方が速い」「ヘッスラはさらに速い」という実験データも存在する。
ヘッドスライディング:04
実験データ
スポーツ報知によると桑田真澄は2008年の年末に行った講演会でヘッドスライディングの危険性を語り、「高野連にも言っているんです。禁止にしましょうって。タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです」と述べている。この記事の存在は、親切な匿名の読者さんがメールで教えてくれました。ありがとうございます。桑田の発言とヒルマンの発言は「ヘッスラ禁止」という点では同じだが、どっちが早いかについての見解は逆のようだ。また、ヒルマンは禁止を世間に訴えることなく、私のチームでは禁止する、と言っている。桑田も高野連に言うより、早く指導者になって、僕のチームでは禁止する、と言った方が実効性が高いんじゃないか。なんとなく。あるいはとりあえず読売ジャイアンツに言うとか。まあそれはともかく。
講演を現場で聞いたわけではないのではっきりわからないがこの記事を見る限りでは、「タイムも計りました」と言いつつじつにさらっと流し、誰がどういう方法で、どういう被験者を使って測った、なんてことはいっさい説明されなかったように読める。これは別に桑田真澄に特有の横着ではなく、「駆け抜けの方が早い」派にごく典型的に見られる語り方だ。WEB掲示板とかブログとかでも「駆け抜けの方が早いって、実験で証明されてるんだよね。ソース? なんだったかな。なんかでそう聞いた。つかソースなんてどうだってよくね? ちょっと考えりゃヘッスラが当然遅いってわかるだろ」みたいな発言は多い。「駆け抜けの方が早い」派のみなさんはあまりにも自らの主張を当然視しているので、厳密に検証しようというモチベーションが湧かないのだろう。実験してみたら駆け抜けの方が当然ながら早かった、というウワサが広く存在する割に、誰がどういう方法でどういう被験者を使って測った、という実験情報は意外に見当たらず、私がひとつだけ見つけたのは以下のような話だ。
0秒12遅いにもかかかわらず滑り込む理由
「以前、日本テレビは清水隆行選手(巨人)がそれぞれのケースで要したタイムを計測したことがある。スイング後の走り出しから、1塁を駆け抜けたときが4秒06。一方、果敢にヘッドスライディングをしたときには4秒18かかった。その差は0秒12。このタイムラグにより、頭からベースに飛び込んだ方が遅くなる結果であった。手を伸ばしてベースに近づくことよりも、滑り込む際に減速してしまうことの方が影響が大きいのである。
ただ、この文章はなんとかいう単行本(タイトル思い出せないが、野球とかデータとか科学という語が入ったタイトル。本棚から出て来たらちゃんと書きます)の丸写しで、それがあまりにムチャクチャな内容の駄本なので、この話もなかなか信じにくいんだが。この引用部分だってなんだか微妙におかしいでしょう。「タイムラグによって遅くなる」ってどういうことだ。「0秒12遅かった」でよさそうなものを、「0秒12のタイムラグによって遅くなる結果であった」と書くセンスがわからない。まあそれはそれとして、「日本テレビが清水隆行で」とまで書いてあるんだから、本当なんだろうとは思うが。桑田の言う「タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです」も、もしかするとこのことを言ってるもかも知れない。
逆に、実験してみたらヘッドスライディング(というかダイビング)の方が早かった、というデータは、少数派の自覚があるせいか、説得力を感じさせるものが、というか、説得の必要性の自覚が感じられるものが多い。イヤ、多いと言ってもふたつしか知らないが、ふたつともにそれが感じられるので、確率で言えば100パーセントだ。ひとつは少年野球の指導者「紫電改」さんの実験で、打席から一塁まで(スライディングの技術さえあれば)「駆け抜けよりヘッスラが、0・1 から0・3 秒ほど速い」という結果が出たらしい。この人自身が長年「ヘッスラは遅い」と信じ込んでいて、結果を見て驚いたそうだ。で、測ってみたら意外や意外、うまい子に限って言えばヘッスラの方が速いんですよ、と、チームの父兄や野球仲間に話すと、「ほとんどが『そんな事はない!』『走り抜けたほうが絶対速い!』と」いう反応だと書いておられる。ただ計測の精度は不明。
もうひとつは萬野修平さんという人が「駆け抜け」「ヘッドスライディング(ヘッスラと略記)」「ベントレッグスライディング(足スラと略記)」「立ち止まり」の4種のうちどれが早いのか、早稲田大学の男子ソフトボール部員11名で実験したデータで、早稲田のスポーツ科学部の卒論らしい。タイトルは「ソフトボール競技の異なるスライディング技術による塁間所要時間の差」。
被験者は、ソフトボールでの1-2 塁間(18.29m)で(中略)4 つの条件(駆け抜け/ヘッスラ/足スラ/立ち止まり)での走塁を行った。その走塁を側面からビデオカメラ60 コマ/秒で撮影した。撮影したビデオより、4 つの条件下で1 塁ベースの離塁から、2 塁ベースに到達するまでのコマ数(タイム)を求めた。また、実験後に被験者へ質問を行い、選手の4 つの条件に対する主観的な情報も集めた。
スポーツ科学部で学んだ四年間の集大成だったら、11人とかじゃなく 100人くらいはやってちょうだいよ、と言いたいが、仕方ない。ビデオで撮ってコマ数を数えたというんだから、計測精度は信用していいのではないか。結果は
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| ・計測によれば11名中8名が、4種のうちヘッスラ最速だった。 |
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| ・全試行中の最速記録も、ヘッスラによるものだった。 |
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| ・全被験者の平均を見ると、速い順に「ヘッスラ」>「足スラ」>「駆け抜け」>「立ち止まり」だった。 |
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| ・平均で「ヘッスラ」「足スラ」「駆け抜け」の差はそれぞれ百分の3秒、「駆け抜け」と「立ち止まり」の差は百分の7秒だった。 |
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となっている。つまり「ヘッスラ」は「駆け抜け」より百分の6秒早い、と。サンプルがわずか11名だということを考えると、これを「ヘッスラの方が早いという明確なデータ」だとか考えるべきではないと思う(しかも、疲労が結果に影響してたら意味ないと思うんだが、どういう順序でどういうインターバルをはさんで走った、というような説明も見当たらない。ひとり何本ずつ計測したのかも不明。こうして貴重な実験データの恩恵を享受させてもらいながらこんなことを言うのは心苦しいが、卒論ってこんなレベルでいいんだろうか。もしかするとこれは卒論そのものではなく、そのほんの一部なのかも知れない。また、ふだんは無意識のうちに片足跳び込みをする選手が「駆け抜けで」と注文を受けたせいで「ふだんよりも律儀に」駆け抜けた、というようなファクターもあるかも知れない)が、それでもとりあえず
「ヘッスラなんて絶対遅い、というのを疑い得るデータ」
くらいは言ってもいいだろう。ちなみに2008年7月8日現在、Wikipediaの「スライディング」の項の「ノート」で、萬野修平論文は統計処理が甘いので引用の価値なし、との意見に対して Panpulhaさんという人が、「甘いかも知れんけど、だとしても、少なくとも萬野修平氏は測った。いっさいなんのデータも示さず論拠も挙げず『当然ながら、明らかに、ヘッスラなんて遅いに決まってます』と念仏唱えるよりかは百倍マシ」と主張しておられる(原文はもっと端正で上品)。正論だ。
百分の6秒というのは、さきほどの落下するバレーボールのアニメーションでいうとちょうど2コマ、「図1-05」で言うと2コマ弱、「図1-12」で言うと1コマ弱に相当する。「足スラ」も意外な健闘ぶりだが、脚のリーチだってなかなか侮れないことは「図1-09」、「図1-11」からも感じられるだろう。
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ところで「主観的な情報も集めた」の方はどうなったか。
実験後に行った質問では、『4 つの条件の中で「駆け抜け」が最も速く、次に速いのが「ベントレッグスライディング」』と被験者全員が回答した。
とある。聞いてみると全員が「実感としては駆け抜け最速だった」と答えた、と。
じっさい、ヘッスラは実感として遅い、と語る経験者の声はネット上にも多い。
ヘッドスライディングは本当に遅いの?(教えて! goo)
一塁へは駆け抜けた方が早いことが多いですよ。
どんな人:経験者
自信:自信あり
私は野球をしておりましたがスライディングは遅いと思いました。
どんな人:経験者
自信:参考意見
ところが、そう思った人の、実際にそう思った走りの、ビデオのコマ数を数えてみたら、11名中8名がヘッスラ最速だった、と。
「11名中8名がヘッスラ最速だった」という結果自体は、たまたまの、統計上の偏りかも知れない。現に日本テレビが清水隆行で測ったら駆け抜けの方が早かった、というデータもあるらしいし。しかしその8名を含む全員が「主観的にはヘッスラ遅い」と答えた、の方は衝撃だ。たまたまだとしても、かなり有意な結果のように思える。
ヘッスラ中はヒマなんだと思う。跳んでしまうともう、できることはあまりない。腕は振らないし腿は上げない、体は揺れない、足裏は地面を蹴らない。加速は(水平方向には)絶対にできないし、垂直方向にだってもちろん、意識的にはできない。重力任せ。もちろん自分の足音も消える。わずかな時間(1メートルの自由落下だと考えると約0.45秒)とは言え、最後の最後の決定的な時間だ。そこで惰性と重力に身を任せ、自分の呼吸音と心拍音と風の音だけを聞きながら空中でじっとしているのが、最後の最後を必死で走るのに比べて如何に悠長な、如何にベストを尽くしてないような感じがするものか、それはひじょーによくわかる。気持ちはもっともだ。ヘッスラは本人の実感としては遅いのだろう。ただしかしそれは、客観的な計測結果とは必ずしも一致しない。少なくとも、間違いなく言えるのは、
「一致しないことが、現に、ある」
ということだ。萬野修平論文を「駆け抜けとヘッスラはどっちが早いか」の検証として見ると、貴重なデータだとは思いつつ、完全な検証とはとても呼べない。「統計処理が甘い」というのが具体的にどういうことなのか無知な私にはわからないが、とにかくサンプルが少なすぎるとは思う。しかし「ランナーの実感は信用できるか」の検証として見れば、ひとつの決定的な結論をもたらす、決定的な研究結果である。「一致しないことが、現に、ある」ことを、完全に証明している。また、「多くのランナーはヘッスラを実際以上に遅く感じがちだ」ということも、あまりにもサンプル数が少ないが、まあその、強く示唆している。ように見える。経験者の主観に基づく証言はアテにならん、たとえイチローの主観であっても、と考えるべきだろう。
◆◆
もうひとつ、大阪体育大学の淵本隆文さんという人の「一塁ベースへのヘッドスライディングに関する動作学的解析」という論文を発見した。要点だけ書くと、▼本塁から一塁まで全力で走ってもらい、一塁手前8メートルの区間を高速度ビデオカメラで撮影して、8メートル地点から触塁までの所要時間を測定。▼走り抜けとヘッスラ(1)を交互に3回ずつ試行。▼その後、滑る距離をできるだけ短くしてね、とリクエストして、あらためて3回ヘッスラ(2)をやってもらって測定した。▼そしたらヘッスラ2 > 駆け抜け > ヘッスラ1、の順に速かった。▼ただしヘッスラ2と駆け抜けの差は有意なものではなかった。▼触塁時点でのベースから重心までの距離を比較すると、ヘッスラ2は駆け抜けより60センチ有利だった。だ、そうです。詳細はリンク先を見てください。
ヘッドスライディング:05
私はこう思います。
ここで私はこう主張いたします。理想的に遂行されたヘッスラは、理想的に遂行された駆け抜けよりも、たぶん早い(ヘッスラを推奨する気はない。多少早いとしても怪我のリスクを考えたら避けるべきだ、という意見に反対する気もない。怪我のリスクも審判の心証も、美学としてどうか、というような要素も捨象して早いか遅いかだけを考えるならば、という話)。私は以下の2項目について、トレイ・ヒルマンに同感だ。
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| 1: 強いて言えばヘッスラの方が多少は早いのかも知れない。 |
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| 2: だが、大した差はない。 |
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ダイブによるリーチのアドバンテージは60センチ程度ある。150km/hとか出るならともかく、人間の走る速度はせいぜいが時速30km台で、空気抵抗なんてたかが知れている。空気抵抗による減速を強調する人は、まるで駆け抜ければ空気抵抗を受けないかのような言い方をする(ことが多い)が、姿勢を考えれば、ヘッスラ中に受ける空気抵抗は駆け抜け中に受ける空気抵抗よりも小さいはずだ。「跳べば推進力を失う」ともよく言われるが、失う推進力だってたかが知れてるんじゃないか。20数メートルを全力で走って来て、なおも最後の1歩で爆発的に加速できる、と考える方がおかしい。駆け抜けたってせいぜい、「速度をキープできる」程度じゃないのか。そんなら、走ってきた勢いをいっさい殺すことなく水平ダイブできれば、そりゃそっちの方が早いでしょう(勢いをいっさい殺すことなく水平ダイブできるかどうかが論点なんだよと言われそうだが、それについての意見はもう書いた)。だって60センチですよ。下の、特に左の図を見れば、100m走の選手から見ての「100m」と「99m40cm」の違いだってかなりのものだろうに、
ヘッスラと駆け抜けの差を考えるなら(2歩の距離をダイブすると仮定して、1歩あたり180センチと仮定して、最後の2歩以外は完全に同じと仮定すると)、「3m60cm」と「3m」の差だ。走り抜ければ残り360cmの重心移動が必要な地点から、ダイブすれば300cmの重心移動で届く。「100m」と「99m40cm」の差がかなりのものだとすると、「3m60cm」と「3m」の差は圧倒的である。いやもちろんヒルマンの言う通り、大した差じゃないとも言えるが、とにかくはっきりした差だ。細かく計算するまでもない。仮にさいごの1歩で加速できるとしても、わずか3m60cmの区間で60cmの差を逆転できるほどの加速なんて、あり得るだろうか。
「理想的に遂行されたフットダイブ」と比べるのであれば60センチの差はないかも知れないが、やはり多少の優位性はあるんじゃなかろうか(理想的なフットダイブが成立するには「たまたま最後の一歩が微妙に広く残る」ことが条件、なような気もするので、だとすればあまりにも偶然期待度が大き過ぎるようにも思う。単に推測だが)。
ただし、「理想的ヘッスラは理想的駆け抜けより早い」と「ヘッスラは駆け抜けより早い」は違う。その点はご留意ください。「理想的なジャストミートさえできれば谷繁はダルビッシュからホームラン打てる」と「谷繁は必ずダルビッシュからホームラン打つ」は、ぜんぜん違うでしょう。「当たれば競馬は儲かる」と「競馬は儲かる」もぜんぜん違う。それと同じだ。競馬でがっぽり儲けた例があるからといって「競馬は儲かる」とは言えないように、「理想的ヘッスラは理想的駆け抜けより早い」としても、「ヘッスラは駆け抜けより早い」と言えるかどうかはわからない。遅いことだって多いだろう。現に清水隆行は駆け抜けの方が早いというデータもあるそうだし。ヘッスラは駆け抜けより早い、と主張する気は、ない。どっちでもいい。ただ、「理想的ヘッスラは理想的駆け抜けより早い」と主張する。そして、理想的ヘッスラが理想的駆け抜けより早いとしたら、少なくとも、「当然ながら駆け抜けのほうが早いです。明白です」というのは間違いだ、とは言うべきだろう。以上によって、「当然ながら駆け抜けのほうが早いです」というのは迷信だ、とも主張します。
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ついでに、「実際にストップウォッチで測ってみたら○○の方が早かったらしいですよ」とかじゃ結論は出ない、とも、主張する。
ヘッドスライディングについて(Yahoo! 知恵袋)
回答日時:2007/8/24 10:49:55
どちらが勝るかの結論をここで計算で示すことは出来ませんが、実際に野球選手が両方の方法を行ってストップウォッチでかかる時間を計測するというきちんとした科学的な実験を行った結果、駆け抜ける方が速いというのが得られた結論です。
桑田氏、育成3か条…ヘッドスライディング禁止&ヤジ禁止&失敗OK
タイムも計りました。駆け抜けた方が速いんです。
きちんと科学的に測りさえすれば必ず結論が出る、と考えるのはまったく科学的でない。測ってわかるのは測った範囲の結果だけだ。じゃあどれほどのサンプルを測ればじゅうぶんなのかと言うと、どれほど測ってもじゅうぶんとは言えない。
例えばスキージャンプの選手が滑走の時に中腰で両手を平行に後ろへ揃える(バックハンドスタイル)のを、2009年現在我々は議論の余地のない唯一の合理的な正解であるかのように思い込んでいるけれど、▼Wikipedia「スキージャンプ」の項によれば、そんな常識が定着するまでには、1877年にノルウェーで行われた世界最初のジャンプ競技会から数えて、なんと、百年かかったらしい。V字飛行が発明されるまでには120年かかった。例えばバタフライは平泳ぎより速い、というのも現在では常識だが、▼Wikipedia「バタフライ」の項によれば、そんな常識が定着するまでには、初期型バタフライ(上半身がバタフライ、脚は平泳ぎのかたち)の登場から20年以上を要している。ドルフィンキックの登場はさらにそのあとだ。結論に至るまでに百年かかったり20年かかったりした実例が現に存在する以上、ほんとうのことって案外なかなかわからないのだなあ、と考えるしかない。もしかするとこれらの常識だって、来年くつがえるかも知れない。
▼Wikipedia「背面跳び」の項より
アメリカのディック・フォスベリー選手が正面跳びの練習中にヒントを得て開発したものとされる。英語では「フォスベリー・フロップ(Fosbury Flop)」と言う。自己流で走り高跳びを始めたフォスベリーは、高校に入り記録を伸ばすためにベリーロールを取り入れようとした。しかし記録会でベリーロールをうまく跳べなかったフォスベリーは、得意であるはさみ跳びに途中から切り替えて(中略)身体が地面と平行になる感覚にインスピレーションを与えられたフォスベリーはそのあと、背中を地面に向ける跳び方に磨きをかけていった。しかし背面跳びは当時は誰もやっていなかったので皆の笑いものになり、フォスベリーの跳び方を嘲笑するためにわざわざ来る人がいるくらいであった。
大学に入ると、記録の伸び悩みから三段跳びに転向することを薦められたフォスベリーは一念発起し、2m10cmの記録をたたき出した。そのあと大学選手権優勝、オリンピック代表選考通過と順調に結果を出して行った。そしてメキシコオリンピック参加選手中唯一の背面跳び採用選手ながら当時のオリンピック新記録で金メダルを手にした。
Dick Fosbury in Mexico City Olympic, 1968
高校時代にぐうぜん背面跳びを発明したディック・フォスベリーは大学に進んで記録が伸び悩み、三段跳び転向を薦められたという。ベリーロールより背面跳びが有利だというのは現在常識だが、もし彼が転向していたら、変人ダメジャンパーがいっとき試みた珍奇な跳び方は忘却され、現在もベリーロールがベストとされていたかも知れない。2009年現在は背面跳びがベストとされているが、未来永劫にわたってそうかどうかは誰にもわからない。
「現代のトップアスリート(と、そのスタッフ)たちは1/100秒、1/1000秒の為に科学的に実験を繰り返してフォームや健康管理やらユニフォームの素材やらそれこそありとあらゆるものを研究してるんだから、彼らの採用する方法がベストに決まっている」みたいなこと言う人がたまにいるけど、科学への信頼も度が過ぎるとオカルトだ。何がベストか、科学の見解なんて年々変わる。変わらないものも多いが変わるものも多い。例えばバッティングフォームについて「振り子打法がベストな打ち方かどうか」「スタンスはオープンとスクウェアとクローズドのどれがベストか」などを考えてみても、唯一の完全な結論なんて出そうもないでしょう。「出そうもない」というのが結論だ。背面跳びすら当初は嘲笑で迎えられた、という事実を胸に、我々はあらゆる可能性に対して、より謙虚であるべきだと思う。メキシコオリンピック以前には、「言うまでもなく、当然ながら、明らかに、背面跳びなんて無意味です」「誰それが実際に跳んでみてきちんと科学的に測った結果、やっぱりベリーロールの方がいい記録が出たらしいですよwww」みたいな声が、ディック・フォスベリー周辺に、たくさんあったに違いない。
………と、こう書いてしまうと最早ここから下は蛇足だが、かと言って削除する気にもなれない(現在2009年6月です。ここから下は1年以上前に書きました。こういう認識に達するのに1年以上かかった、ということになる。ここから下はいま読むと冗長に思えるんだが、図には愛着がある)のでいちおう残しておきます。
ヘッドスライディング:06
あらためてショットガンタッチ
60センチの歩幅で1秒2歩のペースで歩けば秒速120センチ、というように、ストライド(歩幅)にピッチ(秒あたりの歩数)をかけたものが足の速さである。足が速い人はストライドが長いのかピッチが速いのかと言えばそりゃもちろん両方だが、人類の場合、全力疾走時のピッチは毎秒4歩がほぼ限界で、それを上回るのは難しいとされる。じゃあ、ストライドを伸ばそう。・・・と、意識すると、少しでも前方に足を着地させたくなるのが人情だ。しかしそれだと自分に突っかい棒をかけることになり、むしろ遅くなる。ストライドを伸ばすには、股関節を動かす筋肉を鍛え、「着地している間に体を前方に移動させる力」を高めることが肝心なのだ。
・・・と、『DVD 日本人に適した最速の走り方』に書いてあった。なるほどそういうものか。YouTubeで1992年バルセロナと2004年アテネのオリンピック男子100m決勝の映像を見てみたら、たしかに多くの選手が50歩弱で走っている。10秒前後で50歩弱ということは、平均して毎秒5歩弱か。スタート直後は平均よりピッチが速いに違いないので、なるほど「全力疾走時のピッチは毎秒4歩がほぼ限界」に符合する。一方歩幅は、100mを50歩弱だから平均でも2メートルを超えているということで、スタート直後は平均よりかなり狭いことを考えると、短距離走のエキスパートの全力疾走時の歩幅は2メートルを大きく上回るらしい。へー。というわけで、歩幅を意識しながらあらためてロナウジーニョの走りを図にしてみよう。「踊るスパイダーマン」という有名なGIFアニメがあるが、目指すはあんなイメージだ。
「踊るスパイダーマン」には程遠いが、こうなりました。1コマ当たり15分の1秒。これは信用していただいていい。信用できないのは歩幅だ。目分量で描きました。どの程度正確に描けているのか、それはみなさん、映像と見比べて判断してください。まあまあリアルなんじゃないか、と自分では思うんだけど。
左から1歩ずつ「V」「W」「X」「Y」「Z」と呼ぶとして、右のように(図1-14)「X」以降は明らかにダイブを意識して重心を下げており、そのためストライドが狭くなっている。
もちろんここでロナウジーニョのストライドが狭いのは、走り出したばかりで加速が不充分だから(ストライドが狭いから遅いとも言えるが、まだスピードが乗ってないからストライドが出ないとも言える。ちなみに「X」は、ボタンを押してから5歩目)だが、それだけではなく、重心の下降が影響している。標準的な走りでは着地と着地の間に両足が宙に浮く時間があり、移動距離をいちばん大きく稼げるのはそこだ。重心を下げようと意識すると、それがなくなる。或いはスケールダウンする。サッカー選手が低空の球にダイビングヘッドに行く場合には体勢を低くして飛び込むのが当然なので(想像)、そういうことも関係あるのかも知れない。
「X」以降をダイブに行かずに走り抜けたらどうなるのだろうか。『DVD 日本人に適した最速の走り方』に載っている理想のランニングフォームは、こんな感じだ。ストライドは身長くらい。
躍動感のない、素人目にはつまらないフォームに見えるが、リアリズムとはそういうものかも知れない。「人類の場合ピッチは毎秒4歩(すなわち、1歩を四分割すると1コマあたり16分の1秒)が限界」という記述を信じるなら、この図の1コマを「おおよそ15分の1秒」と考えてもいいと思う。それなら「図1-12」と同じだ。だから、「X」以降をこれに置き換えてみよう。
置き換えてみたらたまたま最後の1歩が微妙に狭いので、そこは「フットダイブ」させてみた。こんなにうまくいくのかどうかわからんけど、まあいいじゃないですか。するとご覧の通り、理想のスプリント走法で真っすぐ走り抜け、最後の1歩を理想的に「フットダイブ」した場合、ロナウジーニョのダイブとほぼ同着、という結果になった。もちろんここでのロナウジーニョはまだ数歩しか走ってない段階なので、理想のフォームに置き換えて比べるのは酷なんだが。
それにしても1.5 歩の距離を一息に飛び込むことの有利さは圧倒的だ。コマ「14」の時点では上がかなり遅れているのに、そこから一気に挽回している。「ダイブすると最後の数歩を失うから遅い」とよく言われるが、この図を見ると「失う」という言葉がふさわしいのかどうか怪しくなる。「カットする」「省略する」「省く」と呼ぶ方が実情に近いのではないか。
ダイブのデメリットは飛んだ後にはなく、飛ぶ前にある。人は跳ぶための予備動作として重心を下げがちで、するとストライドが狭くなり、遅くなるのだ。ここでのロナウジーニョはダイブへの予備動作に少なくとも2歩(図のXとY)を費やしており、大いに改善の余地がある。
上の方に書いたことを繰り返すが、走るという動作は「脚を後ろに蹴っては急いで前へ戻す」の繰り返しだ。「後ろへ蹴ったまま、前へ戻すのをやめる」だけで、ダイブする気がなくても否応なくダイブになる。重心を下げようと意識する必要もない。飛べば重力で、自然に体は放物線を描いて落ちて行く。というわけで、私が考える最速のヘッドスライディングは下図「C」です。
これで最後の1歩(「Z」)をカットでき、1コマ、つまり 15分の1秒(0.06666666666 秒)だけ、「走り抜け、プラス、軽いフットダイブ」より速いことになる。この図は
1コマ15分の1秒 / それが4コマで1歩 / 1歩のストライドは180センチ
を想定してるのだから、15分の1秒は単純計算では45センチに相当する。45センチねえ・・・「図1-01」を見るとそこまでの差がつくはずはないと思えるが、これは「1コマ15分の1秒、すなわち45cm」を最少単位とした乱暴なモデルなので、仕方がない。
いずれにせよ目分量と想像と勝手な理想化に基づく無茶な考察なんだが、これによるならば理想のダイブは「理想の駆け抜け、プラス、軽いフットダイブ」より、圧倒的かどうかはともかく、少しは速い(というか触塁が早い)のではないかと思われる。危険と引換えにするほどの価値があるかどうかは、なんとも言えない。