野球にとって重い球とは何か

it has been called "the heavy ball"

it has been called "the heavy ball"

以下、「野球にとって重い球とは何か」から「ジャストミートが困難な球」「ジャストミートしても重い球-1」「ジャストミートしても重い球-2」「あらためて球の重さを考える」「改メテ球質ヲ論ズ」まではあまりにも長く、複雑で、結局何が言いたいんだか、自分で読んですらよくわからない。数年ぶりに読み返してみたけど、ひどいもんだ。だけど削ることもできない。削って削った結果がこれなんすよ。なので、わかってもらうために、概要を書いておきます。

球の重さとは何か

球の重さってないの? という話題では多くの場合、
A:「ジャストミートしにくいために重いと感じられがちな球」
B:「ジャストミートしても重い球」
のふたつが曖昧に混同されて語られる。
本気で考えたいのであれば、このふたつは、はっきり分けて考えるべきだ。AはBではないし、BはAではない。両者はぜんぜん違うものだ。そして、Aの存在は疑いようがないわけで、疑念があるとすればBの方だけである。

まず、「ジャストミートしにくいために重いと感じられがちな球」について

  • そう感じられるメカニズム(振動節とスイートスポット)
  • そう感じてるメジャーリーガーたちの証言
  • ただし、だからと言って「球が軽いと言われる投手はジャストミートしやすい」と考えるのも間違いだ。ジャストミートしやすい投手なんてものはただ単にダメな投手なわけで、プロになんてなれっこない。「江川卓は球が軽い」だなんてよく言われたが、決して常時ジャストミートしやすかったわけではなく、むしろなかなかジャストミートを許さなかったからこそ、たまに打たれるホームランが強く印象に残ったのである。

「ジャストミートしても重い球」について

  • 世間で主張されてるのはバカみたいな説ばかりである。ちょっとは疑おうよ。(回転説とか体重説とか腕力説とか、ひたすら羅列)
  • 球威があればジャストミートされても飛ばないだとか、球威があればジャストミートされてもバットをへし折るとかいうのはタワゴトである。球威というのはジャストミートされたバットを圧倒するチカラではなく、ジャストミートを阻むためのチカラである。打者が「ジャストミートしても重い球」と感じるのは、要するにジャストミートに失敗した場合に過ぎない。気合いを乗せるだの体重を乗せるだのも同じ。要するに「ジャストミートしても重い球」というのは誤解(迷信)だと思う。

ただまあ、迷信も野球のうちである。

  • たとえば「物理的にどうかって言われたら、球の重さ軽さなんてものはないのかも知れませんよ、そりゃね。ただ、球が軽いように、見えちゃいますよね、どうしてもね。こういう結果だけにね」だなんて言われたら、反論してもしょうがない。

以上、だいたいそんな感じ。
全部読むのがめんどくさい人は、この要約だけで満足してください。感想、疑問、間違いの指摘、嘲笑、ツッコミ、タレコミ新情報、御主張、御教示などはお気軽に nobio 宛にメールしてください。もれなく感謝します。










球の重さとは何か

野球の、硬球の、いわゆる公式球の重さは5オンスから5オンス1/4(だいたい145グラム前後)と決められていて、もちろん重くなったり軽くなったりはしない。にもかかわらず何故か、捕ると(あるいは打つと)重く感じる球というのが存在する。そういうことになっている。

この話題が野球界だけのものだと思っている人も多いと思うが、そういう人は試しに「テニス 重い球」「ビリヤード 重い球」「ゴルフ 重い球」「バドミントン 重い球」等でネット世界を検索してみれば、意外な裾野の広さに驚かれると思う。例えばゴルフ界で重い球と言ったら「風に負けない球」を意味することが多く、そして「回転が少ないのが重い球」という説が主流らしい。

テニスやビリヤードやゴルフやバドミントン界では「どうしたら重い打球を打てるか」という方向で話題にされるのだが、野球ではそんなことを言う人はまずいない。野球で「重い球」と言ったら打球ではなく、投球の話だ(例外はあるが)。テニスやビリヤードやゴルフやバドミントン界では、重い球の謎を解明することが競技力の向上に直接結び付く、と、野球以上に本気で考えられている節があり、そのぶん議論も熱い。ちなみに観測所あてに最近いただいたメールが面白かったので、ご了承いただいた上で引用します。

テニスにおいても重い球という言葉は頻繁に使用され、時には信仰に近い感じを受けることすらあります。
それと同様に「ボールを潰す」という表現が多くなされ、重い球理論と結びつけて語られます。それらの多くは野球と同じように、とても納得できるものとは思えないにも関らず、当然のように語られています。
テニスの場合、最近は球速と回転量(基本となるトップスピンストロークにおいて)を両立したものが重い球とされ、速いだけのフラットでは軽いといった傾向が顕著に見受けられます。

ただし、これは最近のテニス事情がトップスピン主体であるからと思われ、昔からある説は他にもいろいろあります。例えば、体重を乗せるとか、重いラケットで打たないとダメだとか、ボールを潰して打つとか、押し出すように打つとかであり、今でもよく使われています。

◆ ◆

テニスやゴルフと同じく野球界でも、「重い球」をめぐるもっともらしい理論が当然のように語られるわけだが、じつは、ピッチャー自身はあまり重さを語らない。中学や高校ではともかく、プロの投手やコーチが「球の重さ」を身に付けることの重要さを語るのなんて聞いたことがない。「この時期はまだ重さがイマイチっす」とか「自分でも、この三年間で速球に重さが出て来た実感が」とか、ぜんぜん聞かないでしょう。その点、ことあるごとに語られる「キレ」とはずいぶん様子が違う。

被本塁打が多いことで有名な和田毅はその理由を聞かれて「僕の球が軽いってことなんでしょうね」と答えている。また、2005年、第77回選抜高校野球大会鹿児島代表神村学園のエース野上亮磨は、55キロだった体重を「監督から『球が軽い』と言われ、食べまくった」おかげで、65キロに増やしたと言う。ピッチャーは自分の球の「キレ」を自分で実感するらしいが、球の「重さ」を実感しない。和田も野上も、被本塁打数とか監督の言葉とかによって間接的に推定しているだけであり、その点、私のような素人となんら変わりがない。野球でいう球の重さというのは、バッター(またはキャッチャー、または見てる監督や観客や解説者)の側が勝手に感じるものだ。(ビリヤードでは、突いた本人が「お、いま重い球が突けたっ!」とか感じることがあるらしい。言われてみればいかにもありそうな話だ)

「キレ・ノビ」がもともと感覚的でブンガク的な感じがするのに比べて、「重さ/軽さ」という言葉はなんとなく「計測可能な物理量」に聞こえるが、それは単に言葉のイメージだ。「むっちゃ速いのに軽い球」とか「遅いのにズシンとくる重い球」なんてものが、ほんとうに存在するんだろうか。

・・・などと考える時点ですでにオカシイ。そんなものあるわけがない。当たり前だ。灰皿でもリンゴでもなんでもいい、何か手頃な重さの物を至近距離から顔面めがけて思いっきり投げ付けられたらどうなるか、想像してみればわかる。怖いでしょう。怪我するでしょう。拳骨でも灰皿でもクルマでも、速いものは危険で、当たると痛い。同じ灰皿なら、速さと痛さは比例する。誰でも経験的に知っていることだ。「むっちゃ速いのに痛くない灰皿」なんてものが、ある訳がない。そういう意味で、速い球は必ず重い。問題は

同じ速さの球で、重い球と軽い球、なんてものが存在するんだろうか

だ。なのについ、「むっちゃ速いのに軽い球とは」とか考えてしまう。我々は何故か、意識下だか無意識下だかで「むっちゃ速いのに軽い球」の存在を強く信じているのである。「何故か」と言うか、もしかすると星飛雄馬のせいかも知れないが。






 野球で重い球と呼ばれるものには2種類ある。「ジャストミートが困難な球」と、「ジャストミートしても重い球」だ。

重い球、概説

この図の左、「ジャストミートが困難な球」の存在(また、ミートに失敗した場合しばしば重く感じられること)を疑う者はいないだろう。重い球なんてほんとにあるのか、と言う場合、したがってとうぜん右の「ジャストミートしても重い球」の話だ。ヘッスラは速いか遅いか、なんていうのに比べて、これは遥かに複雑微妙な問題である。ヘッスラだって結論は出ていないが、それは「今のところ不明」なだけであって、じゅうぶんな時間をかけてじゅうぶんな実験を行えば、とりあえずどっちかに結論は出る。「バタフライと平泳ぎはどっちが速いか」などと同じように。とりあえずの結論はまたいつの日か覆るかも知れないが、だとしても、とりあえずの結論は出るのである。

一方、「ジャストミートしても重い球ってあるのか」という問題には、たぶん永遠に答は出ない。「球の重さ選手権・世界大会」を開くとしても、何をどう測ればいいのかわからない。彫像か何かに球をぶつけて、ぶっ壊すパワーを競うのか。それじゃあ球速コンテストと変わらない。では、例えば球速を「130km/hから135km/h 以外はエラー」とかのように制限した上で、衝撃荷重を測るのか。それで仮に歴然と衝撃力の強い球が存在したとして、それが重い球なのか。しかしそういう球が存在するとすれば、(作用反作用の法則を信じるならば)ジャストミートすればよく飛ぶはずだ。よく飛ぶ球を重い球と呼ぶのはおかしくないか。重い球イコールよく飛ぶ球なら、野上亮磨は一体なんのために体重を増やしたのか。

◆ ◆

捕る方での重さと打つ方での重さは別物、と考えることで、このパラドクスを回避するのはどうだろう。よろしい。じゃあ感触のことは無視して、重い球とは「同じようにジャストミートしても飛距離が出ない球」のことだと定義しようか。その上で「球の重さ選手権・世界大会」を開こう。例えば球速を「130kmから135km/h 以外はエラー」と制限した上で、不動の壁にぶつけて跳ね返る距離が小さいものが重い、ということでいいのか。だとすると、バックスピンが強ければ強いほど下向きに跳ね返るので、飛距離は小さくなる。だからバックスピンの効いたストレートほど重い、ということになるだろう。

だがしかし。ゴルフ中継で、バックスピンをかけたショットがグリーン上でポーンと跳ね、シュルシュルーッと手前に転がって来るシーンをよく見かける。また、両手で持ったドッジボールを1メートル先の床面に向けて軽く下手で放ると、ポーンポンポンポンコロコロ・・・と向こうに転がって行くが、投げるときに指先で軽くバックスピンをかけてやると、ちょうどバウンドした辺りで停めることができる。サッカー選手がフリーキックの時によくやるヤツだ。もっと強くバックスピンをかければ手前に転がって戻って来る。いずれも「スピンのかかった球は跳ね返った後もスピンの方向を保つ」例だ。これらの事実から類推すると、バックスピンの効いたストレートは「跳ね返る飛距離は小さくても、シュルシュルーッと手前に転がって来る距離は長い」のかもしれない。一方回転の少ないストレートは、「飛距離は出るが転がる距離は短い」のかもしれない。トップスピンの落ちる球なら、さらにその傾向が強まる。どれを重いと判定するのがいいだろうか。

不動の壁でやるってのがナンセンスだよ、という人も多いだろうが、じゃあ何をどうすればいいのか。「どんな球でもつねに同程度に完璧な『ホームラン性のジャストミート』をする、神のバットコントロールを持つロボット」を、日立製作所にでも依頼して開発してもらうのか。そんなことは技術的に無理だし、理論的にも無理だろう。「完璧なジャストミート」をあえて定義するなら「ロスが最小のミート」とするしかないと思う。しかし「重い球」の存在は、打球に与えられるべきエネルギーがロスとなり、そのぶんが打者の手の平にズシリとダメージを残すからこそ語り継がれるわけで、つねにロスが最小だったら、そもそも何がどう重いんだかわからない。

◆ ◆

「ジャストミートしても重い球」について、万人を納得させる判定基準はできそうにない。どう定義して何を測定しようとも、いや、そういうのじゃ測れないんだよ、と言われる余地が必ず残る。その意味ではやはりオカルトみたいなものだ。未来永劫、永遠に答は出ないだろう。

ただ、というか、だからこそ、「回転の少ない球は重いのです。争いのない事実です。明白です」みたいな多数派の自信満々ぶりには大いに疑問の余地がある、と主張したい。複雑微妙な問題に、簡単に自信満々なことを言うのはアホな人である。

「ジャストミートしても重い球」の話は次ページ以降に回し、以下このページでは「ジャストミートが困難な球」について考える。

ジャストミートが困難な球

it has been called "the heavy ball"
it's hard to catch cleanly:01

速い球(プラス、迷わせる配球とか)

「ジャストミートが困難な球」のうち、いちばんわかりやすいのは「速い球」だ。2005年7月19日、阪神対横浜戦1対1の同点で迎えた延長十二回。マーク・クルーンが赤星憲広に対してクイックモーションで投じた6球目は高めの直球、甲子園球場のスピードガンで161km/hの日本最速を記録した。赤星はこれをバットに当て、球速表示を目にした甲子園の観客はどよめいた。クルーンは日本で初めて160km/hを投げた投手として、赤星は日本で初めて160km/hの手応えを体感した打者として有名になった。赤星は「やっぱり速かったね。150kmと160kmは明らかに違う。ファウルするのが精一杯でしたよ」と語った。

この赤星の感想に共感しない打者はいないと思う。速い球に対応するのは大変だ。第一怖い。頭部に来たら生命の危機。その恐怖を乗り越え、反射神経の限界に挑み、反応し、遅れず、かつバランスを崩さず正確に振り切る。それでなければフェア・ゾーンにすら飛ばない。「真直ぐとわかってりゃ160kmでも簡単だよ」とか言う打者がいるとしても、じゃあ真っすぐかスライダーかフォークか、と迷わせる配球と込みなら、やっぱり大変だろう。さらに170km/hならどうだ、180km/hならどうだ。速い球をきれいに打ち返すのがどんなに困難なことか、私のような素人でも想像はできる。

また、人がミスをミスと自覚するには、ある程度の余裕が必須条件だ。茶碗を落として割っちゃった、という場合は「ミスったー」という後悔が来るが、もっとむちゃくちゃ重くて大きくて不安定で熱くて持ちにくいものを必死で運ぼうとして落とした、という場合だと、「ダメだったー」という敗北感が来る。余裕があれば後悔、余裕がないと敗北感。この違いが大きい。速い球は打者から余裕を奪う。打ち頃の球をミスショットしたなら「あかん、力んでミスってもうた」と思うのに、超速球を必死で振ってミスショットすると、「くそっ、捉えたのに力負けや」という心理になりやすく、つまり「重い球だった」となりやすいのではないか(想像)。

it's hard to catch cleanly:02

キビシイコースの球(振動節とスウィートスポット)

内角であれ外角であれ、ギリギリのストライクはよく「キビシイ」コースと呼ばれる。それにはいろんな理由があるが、ひとつは「芯で捉えるのが困難」という意味だ。バットの「芯」というのは、バットの中心軸を通る正中線、というだけの意味ではなく、芯はその正中線上に、1点しかない。真ん中の球は芯で打ちやすい。内外角いっぱいの球は芯で打つのが難しく、したがって重く感じやすい。球質が重いという話にコースが関係あるなんておかしい、と直感的には思えるが、今は「球質が重い」の話はしていない。「ジャストミートが困難な球」の話だ。ジャストミートが困難な球は「非・ジャストミート」になりやすく、その結果、「球質が重かった」と感じられやすい。

◆ ◆

まず、振動節について。インパクトの瞬間バットは弓状にたわみ、振動する。物体が振動するとき、振動中も動かない「節」があり、それを「振動節」と呼ぶ。釣り上げられた魚が甲板でピチピチ跳ねるのをスローモーションで見ると、頭と尻尾がこっちに振れてるとき、腹は逆側に振れてるでしょう。ということは頭と腹の中間、および尻尾と腹の中間に、あんまり動いてない点があるわけだ。それが振動節。バットの場合、振動節はグリップの近くと、もうひとつは商標のあたりにある(振動と言ってもいろんな振幅の波の合成だが、ここでは細かい振動は無視して一番大きい振動の話)。

トランポリンが人体を高く跳ね上げるように、バットのたわみ(の揺れ戻り)は、タイミングが合えば当然ボールを弾き返すチカラとなるだろう。しかしバットとボールの接触時間(1000分の1秒以下)は、木製バットが揺れ戻る時間(約1000分の2秒)より短いため、実際にそのエネルギーが打球に伝わることはなく、ただバッターの手を無駄にビリビリ揺らす。振動節は「振動中も揺れない点」であると同時に、「そこで打てば振動が起きない点」でもある。無駄な振動がなければ力学的にも体感的にも音感的にも爽やかなミートとなり、飛距離も出る。

ただ、振動節は「グリップの近く」と「商標のあたり」のふたつだが、前者は芯とは呼ばない。振動節ではあってもスウィートスポットでないからだ。

◆ ◆

スウィートスポットとは何か。今度はバットの振動を無視し、完全に堅いものとして考えてみよう。さらにバットが「振る」ものであることを無視し、バントの時のように平行に前へ押し出すものと考えよう。いや、さらに単純にするために、静止したバットで考えてみよう。バッティングティーにバットを乗せる。水平に乗せるには重心点で乗せる必要がある(上図)。これをホームベースの位置に立て、時速140km の硬球をバットに激突させると、グリップにはどういう力が作用するだろうか(下図)。


  • A:みごと重心点に命中すれば、バットは平行を保ったまま真後ろに吹っ飛ぶ。グリップにかかる力は当然真後ろ方向。
  • B:重心よりもヘッド寄りに命中すれば、バットは重心点を中心に回転しようとし、したがってグリップは一瞬強い勢いで前方(ピッチャー方向)に振れる。ビール瓶のてっぺんに割り箸でもボールペンでもいいから水平に置き、はじっこを指ではじいてみれば簡易的に実験できる。1000分の数秒後(?)にはヘッドに引っ張られるようにしてバット全体が向こうに吹っ飛ぶ(私のオツムの程度ではこれ以上の理解は不能)わけだが、当たった瞬間に限ればグリップが一瞬前方に振れることは間違いない。
  • C:グリップ寄りに命中すれば、バットは重心点を中心に回転しようとし、ヘッドは一瞬ピッチャー方向に振れ、他方グリップにはAのケース以上にダイレクトに後方への力が作用する。ビール瓶と割り箸で簡易的に実験できる。

グリップにかかる力は、グリップ寄りなら強烈に後方、重心点なら真後ろ、ヘッド寄りなら逆に一瞬前方。と、いうことは。

「重心点よりもわずかにヘッド寄り」に、後方への力と前方への力が相殺し、グリップにいかなる力もかからないようなヒットポイントがあることになる。それが「完璧な当たりの時はほとんど手応えも感じない」と言われる現象の正体、つまり「スウィートスポット(sweet spot/心地よい点)」である。また、以上により、キビシイ内角球はキビシイ外角球よりもグリップにダイレクトにチカラを及ぼし、一般的に重く感じられやすい。

(とは言ってもこれはあくまで単純化した話であり、実際にはもっと複雑なんだが。実際のバットは振動節とスイートスポットが近くになるようにつくられている、んだそうだ)(この節に書いたことはほぼ全面的にJSTバーチャル科学館|スポーツの科学|ようこそ実験スタジアムへ - バッター編。の「バットの「芯」を見つけよう」「手がしびれるのはなぜ?」「スイートな感覚ってなに?」からの受け売りです。東京大学先端科学技術研究センターの河内啓ニ教授が監修、みたいなクレジットがある。航空力学とかヘリコプターとか昆虫の飛翔とかが専門の人らしい。「重心」と書いたのは引用元では「中心」と書いてある。「中心」が正しいのかも知れない。この記事のことは見知らぬ親切な方からメールで教えていただきました。多謝)

it's hard to catch cleanly":03

内角に食い込みつつ落ちる球

ここまでなら要するに、キビシイコース(とりわけキビシイ内角)の速球が重い球、という話になる。だがしかし。
打者にとってさらにジャストミートが困難な球というのが存在するらしい。イヤもちろん「ジャストミートさせないこと」こそはピッチャーの目的そのものであって、ピッチャーが投げるすべての球はそのために投げられている。それは当然そうなんだが、とりわけジャストミートの困難な(というか、重いと感じられやすい)球種というものがあり、それが「内角に食い込みつつ落ちる球」であるらしい。以下は、メジャーリーガーおよび元メジャーリーガーのインタビュー集。

この記事の存在は稲見純也さんから教えていただいた。米国 LookSmart のアーカイブ中にあった(このリンクが機能しない場合、http://www.looksmartfantasysports.com/の「Start Your Search」から「The heavy ball」を検索すると見つかります)のだが、オリジナルは2004年の『Baseball Digest』誌らしい。書いたのはNorman L. Macht。うちのサイトに載せたいので許可をいただけないか、というメールを「Baseball Digest」編集部に出してみたが、返事は来なかった。私の英文がヒド過ぎたのかも知れない。返事をもらってないから掲載しないのがスジではあるが、ここに載せることで Baseball Digest の売り上げに悪影響を与える可能性はないだろう、という手前勝手な理屈に基づいて、無断掲載します。


The Heavy Ball


[序] The heavy ball: some hurlers' offerings are described as being a different sort of pitch, often due to the ball's late-breaking movement.
[序] ある種の投手の投げる球は独特の性質(それは多くの場合 #late-breaking movement がもたらす)を持ち、そのためこう呼ばれる。「The Heavy Ball」と。
#「late-breaking movement」は「ゆっくりしたぬるい変化」ではない。それは「slow-breaking」。「late-breaking」は、「なかなか曲がらず打者の手元でいきなり曲がるかのように感じられる」鋭い変化のこと。

◆ ◆

01 EVERY OFFICIAL MAJOR LEAGUE baseball weighs between 5 and 5.2 ounces. So how come it feels like catching a feather when some pitchers throw it, and a brick when others throw it? And why do batters feel as if they're hitting a bowling ball when they connect against certain pitchers' deliveries?
メジャーの公式球はすべて、5から5.2オンスの重さと決められている。 なのに何故キャッチャーにとって、あるピッチャーの球は羽根のように、またあるピッチャーの球はまるでレンガを受けているかのように感じられるのか。そして打者はなぜ、ある投手の球を、ボーリングの球のように感じるのだろうか。

02 Physicists may say there's no such thing as a "heavy" ball if they all weigh the same. But those experts never caught Mike Flanagan or Kevin Brown or Brandon Webb, never swung a bat against Tim Hudson or Kevin Gryboski.
物理学者は、重量が同じなら「重い」ボールなんてものは存在しないと言うかもしれない。 しかし、彼らはマイク・フラナガンやケビン・ブラウンやブランドン・ウェブの球を受けたこともなく、ティム・ハドソンやケビン・グリボスキーの球を打った経験もないのである。

03 Most players, when asked why some pitchers throw beebees and others shot puts, respond like Phillies pitching coach Joe Kerrigan: "I've been catching pitchers for more than 20 years. Don't ask me why, but it's so."
ある投手は BB 弾(プラスチック製で軽い)を投げ、ある投手は砲丸を投げる。何故なのか。大抵のプレーヤーはフィリーズの投手コーチ、ジョー・ケリガンと同じように答える。「オレは20年以上キャッチャーをやった。Don't ask me why, 理由なんか知らない。but it's so. とにかく、そうなんだ」

04 But some, especially catchers, offer a few explanations for the phenomenon. First, it has nothing to do with speed. A two-seam or four-seam fast ball has a lot of backspin; it doesn't pound the hand that's catching it. That's why the likes of Randy Johnson, Curt Schilling, Bob Welch, Jim Palmer, Catfish Hunter and Ron Guidry can and could throw 90-plus feathers.
しかし、中には現象をもう少し解説してくれる者(特にキャッチャー)もいる。 まず、それは球速とは無関係だ。 ツーシームまたはフォーシームの速球には強いバックスピンがかかっていて、それはキャッチャーの手を強打することはない。ランディ・ジョンソン、カート・シリング、ボブ・ウェルチ、ジム・パーマー、キャットフィッシュ・ハンター、ロン・ギドリーなんかはそうやって90マイル(145km)超の、羽根のような快速球を投げる。(フェザーには「空気抵抗が小さい」というニュアンスもあるのかも)

05 It's the sinker that's usually the culprit. According to one-time Giants catcher and former Arizona manager Bob Brenly, "A sinker is the heaviest ball, especially if it breaks late." You don't catch it cleanly in the pocket, but lower, and it wobbles and vibrates all the way up your arm. It does the same to a batter who makes contact with it.
ジャイアンツの元捕手でダイアモンドバックスの前監督ボブ・ブレンリーによれば、キャッチャーにとって最も厄介な球はシンカーである。 「シンカーこそ最も重い球だ。鋭く曲がる(breaks late)ヤツが特に。スポット(pocket)できちんと捕るつもりが、それより下(つまり親指側?)で捕る羽目になる。球は振動して、ミットを伝って腕までビリビリ来る。インパクトの瞬間のバッターにとっても同様だ」

06 A sinker that breaks earlier is easier to track and makes a louder crack in the mitt or when a bat hits it. A straight four-seam fastball has a pure rotation and is easy to track and catch. That's the key for a catcher. It's easier to line up no matter how fast it's thrown. That's what makes it feel lighter."
シンカーでも、ドローンと曲がる(breaks earlier)のは目で追いやすく、ミットに収まるとき(またはバットに当たるとき)に大きな音を出す(makes a louder crack)。フォーシームの真直ぐは回転が素直(has a pure rotation)で追いやすく、捕りやすい。キャッチャーにとってはそこがカギで、どんなに速くても捕りやすさのぶんだけ軽く感じる」

07 Cardinals pitching coach Dave Duncan maintains that a sinker is the only kind of heavy pitch. Former Dodgers catcher Mike Scioscia agreed but went further. "When a catcher gets handcuffed, when a sinker doesn't drop the same amount or at the same angle every time, and you don't catch it fight, you feel it. It's part arm action, part delivery, the kind of spin. You can't teach a pitcher to throw a heavy ball."
カージナルスの投手コーチ、デイブ・ダンカンは、シンカーこそが唯一の重い球だと主張する。ドジャーズの前キャッチャー、マイク・ソーシアはこの見解に同意し、さらにこう言う(went further)。「キャッチャーの腕の自由が奪われてしまう(gets handcuffed)とき、つまりシンカーの落差や落ちる角度が一球一球違うときに、思い知ることになる(and you don't catch it fight, you feel it. ここの訳はぜんぜん自信なし)。それは腕の動き、delivery(「投げ方」あるいは「球離れ」)、回転とかで決まる。重い球の投げ方をピッチャーに教えることはできない」

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08 But Phillies catcher Mike Lieberthal said even a four-seamer can feel heavy if it has a lot of movement. "When it's hard to catch cleanly it reverberates in the mitt, and that's what makes it feel heavy."
しかしフィリーズのキャッチャー、マイク・リーバーサルは、4シームファーストボールであっても、よく動くボールは重く感じる、と言う。「きれいに捕れない(hard to catch cleanly)球は、ミットを通して手に衝撃が来る。それが重いって感じを生むんだ」(よく動くなら4シームファーストボールと呼べないんじゃないか、と思うが、そうでもないのかも知れない)

09 Where catchers feel it most is on the thumb. Ray Fosse, who caught Oakland's 1973-1974 world champions, called Catfish Hunter and Ken Holtzman a breeze to catch. Not Blue.
キャッチャーが球の重さを一番感じる部位は親指だ。1973-74年にオークランドでワールドチャンピオンに輝いたキャッチャー 、レイ・フォシーは言う。キャットフィッシュ・ハンターやケン・ホルツマン の球を捕るのは楽な仕事(breeze to catch)だが、ヴァイダ・ブルーは違う(Hunter、Holtzman、Vida Blueは、ともに1974年 Athletics在籍の投手)と。

10 "After catching Blue my hand was swollen so I could hardly hold a bat. With a sinkerball pitcher, if you have to turn the mitt thumb down to stop a pitch, the ball comes down and the thumb takes the worst healing."
「ブルーの球を捕ると、バットを握れないくらいに手が腫れ上がる。シンカーの場合、球を止めるために親指を下にミットをひねるだろ。そこに落ちてきて、親指が最悪のダメージ(worst healing)を受ける」

11 Longtime Pirates and Orioles pitching coach Ray Miller recalled Pittsburgh right-hander Bob Walk. "His pitch Would get about 12 feet from the plate and it would wiggle, shudder a little--you could see it. The catcher saw it and got set to catch it where he thought it would come in and it would cut back and wham him on the thumb."
パイレーツとオリオールズで長年コーチを務めたレイ・ミラーはピッツバーグの右腕、ボブ・ウォークの名を挙げた。「ヤツの球はベースの12フィート(3.7m)手前で小刻みに揺れ始める。見ればわかるよ。キャッチャーはそれを見て、ここに来る、と思ったところにミットを出す、球はカットバック(キュンっと予想以上にブレーキがかかる、くらいの意味か?)して親指にズガンと来る」

12 For all of Rick Dempsey's 21-year major league career, the Orioles coach singled out Mike Flanagan as the toughest pitcher to catch.
オリオールズのコーチであるリック・デンプシーはメジャーでの21年間のキャリアを通じて、捕るのが最もタフなピッチャーとしてマイク・フラナガンを選んだ。

13 "It was that late, last split second break and it was not always the same. Sometimes I'd have to twist the mitt thumb down to catch it and it would jar your thumb. He once broke a ligament in my index finger, too." Nor did it always stop at the thumb. "On a cold day it hurt right up to your jaw," added Orioles coach Elrod Hendricks.
「最後の最後でキュッと曲がる。しかも一球ごとに違う。時にはミットの親指を下にひねらなきゃならない。親指が軋む。オレは人差し指の靭帯を切ったこともある」。被害は親指にとどまらないのだ。「寒い日には顎まで痛む」と、オリオールズのコーチ、エルロッド・ヘンドリックスは付け加えた。

14 Dave Duncan recalled that "it was harder to catch that late-breaking drop with the round mitts used in the old days, but you'll still see catchers icing their thumb after a game when their pitcher has been throwing shot puts."
デイヴ・ダンカンは回想する。「昔はミットが丸っこくて、キュッと落ちる球(late-breaking drop)は今より以上に捕りにくかった。だけど今でも、砲丸投げみたいな球を受けた試合の後、キャッチャーが親指を氷で冷やすのを見かけるだろ?」

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15 So, if it's the break of a sinker that makes it heavy, what about the splitter, which also breaks late? Mike Scioscia called Bruce Sutter's splitter "nasty. It acted like a left-hander's curve, but it wasn't as heavy as a sinker."
では、シンカーの変化が重さの原因であるとすれば、シンカー同様に打者の手前で急激に落ちる球、フォークボール(splitter)はどうなのか。マイク・ソーシア(捕手/ドジャース/1980-92) は、 ブルース・スーターのフォークを「イヤらしい(nasty/たちが悪い/不快)」と言う。「左投手のカーブに近い感じなんだが、シンカーほど重くはなかった」

16 Athletics catcher Adam Melhuse pointed out that a splitter has less rotation. And, besides, "a catcher seldom catches a splitter. Eighty percent of the time a batter swings over it and misses and it's down in the dirt, so the catcher drops down to trap or block it. If it stays up it's usually hit."
アスレチックスの捕手、アダム・メルヒューズは、フォークの回転の少なさを指摘し、 さらに、「キャッチャーはめったにフォークを捕ることはない」と言う。「100回のうち80回はバッターは球の上を空振り(あるいは球の上ツラをミスショット?)し、球は地面に突き刺さる。キャッチャーは捕るかブロックするかのために這いつくばる。そうでなければ、ふつう、ヒットになるんだ」(キャッチャーはめったにフォークを捕ることはない。うーん、そうかあ? アメリカンジョークかも知れない)

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17 Reds hitting coach Chris Chambliss had a different theory. "A fingertip delivery, like Bob Welch's, will produce a lighter ball. Jim Bibby had huge hands. He held the ball so far back in his hand you couldn't see it. Nolan Ryan did, too. How deep they hold the ball when they throw it makes it heavy."
レッズの打撃コーチ、クリス・シャンブリスは別の原理を挙げた。「ボブ・ウェルチみたいな、指先でピュッと投げるやり方(fingertip delivery「指先投法」)だと軽い球になる。ジム・ビビーは手がデカかった。あんまり深く握るので球が見えないぐらいだった。 ノーラン・ライアンもそうだ。投げる時にボールをどれくらい深く握るかによって、球の重さが決まるんだ」

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18 So who do past and present catchers regard as the purveyors of the heaviest bone-jarring pitches?
それではかつての、あるいは現役のキャッチャーたちは、最も骨を軋ませる重い球の提供者として誰を挙げるだろうか。

Mike Scioscia:Tommy John, Orel Hershiser, the young Alejandro Pena.
マイク・ソーシアはトミー・ジョン、オーレル・ハーシュハイザー、アレハンドロ・ペーニャを。

Dave Duncan:Former A's Blue Moon Odom and Bobby Locker; present Cardinals Chris Carpenter and Jason Marquis.
デイブ・ダンカンは、アスレチックスに所属していたブルー・ムーン・オドムとボビー・ロッカー、そして現在カージナルスのクリス・カーペンターとジェイソン・マーキスを。

Bob Brenly:Greg Minton, Kevin Brown, Brandon Webb
ボブ・ブレンリーはグレッグ・ミントン、ケビン・ブラウン、ブランドン・ウェブを。

Damian Miller:Kerry Wood, Carlos Zambrano.
ダミアン・ミラーはケリー・ウッド、カルロス・ザンブラーノを。

Bob Geren, A's bullpen coach, one-time Yankees catcher:Tim Leary.
アスレチックスのブルペンコーチ(かつてヤンキースのキャッチャー)のボブ・ゲレンはティム・レアリーを。

Elrod Hendricks:Gene Brabender.
エルロッド・ヘンドリックスは、ジーン・ブラベンダーを、

Rick Dempsey:Mike Flanagan
リック・デンプシーはマイク・フラナガンを、

Sammy Snider, who has caught hundreds of pitchers in his 25 years as the Orioles bullpen catcher:Mike Timlin, Jason Grimsley.
オリオールズのブルペンキャッチャーとして、25年間にわたって何百人もの投手の球を受け続けて来たサミー・スナイダーはマイク・ティムリンとジェイソン・グリンズリーを。

Reds bench coach, former Yankees catcher Jerry Narron:Goose Gossage
--"Not a sinker, but heavy heat."
レッズのベンチコーチで、かつてヤンキースのキャッチャーだったジェリー・ナロンは、グース・ゴセージを。
--「ありゃシンカーなんてもんじゃない。HEAVY HEATだ」
(HEAVY HEATとは何か。『もうね、火の玉がね、燃えながらズドーンって飛んで来るようなもんですよ。ええ、それもねえ、とにっかく重たいんですよズドーンって。たまったもんじゃないですよ』とかそんな感じか)


AJ. Pierzynski:Jason Schmidt, Jim Brower.
AJ・ピアジンスキーは、ジェイソン・シュミレットとジム・ブラウワーを。

Jason LaRue:Reds closer Danny Graves.
ジェイソン・ラルーはレッズのクローザー、ダニー・グレイブスを。

Javy Lopez:Atlanta reliever Kevin Gryboski.
ジャビー・ロペスはアトランタのリリーフ投手、ケビン・グリボスキーを挙げた。

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19 The heavy ball experience is not confined to the major leagues. Adam Melhuse first heard the term in AAA in 1997. "I'm catching a veteran pitcher and he's not throwing as hard as some of the other pitchers, but he's pounding my hand like they never did. I asked somebody about it and was told, 'Yeah, he throws a heavy ball.' It sounds strange. It's the same ball, but it feels, well, heavy is the best way to describe it."
ボールが重く感じられるという現象は、メジャーリーグだけに存在するわけではない。アダム・メルヒューズは1997年に3Aで初めてHEAVY BALLという言葉を聞いた。「あるベテランの球を受けていて、彼はそんなにハードに投げてなかったんだけど、他のピッチャーではあり得ないくらい手にズンッと来たんだ。そのことを人に訊いたら言われたよ、『Yeah, he throws a heavy ball』って。妙な言葉だと思ったね、同じボールだぜ? だけどたしかにあの感じは『重い』って表現がぴったりだ」

20 Bob Geren first heard the term "light ball" in AA in the 1980s. "We had a young pitcher from the Dominican. The manager told me he threw 100 miles an hour but it'll be a light ball. I didn't know what that meant. But he was right. Like a lot of light ball pitchers, he gave up a ton of home runs, but he was easy to catch."
ボブ・ゲレンは1980年代の2AでLIGHT BALLという言葉をはじめて聞いた。「ドミニカ出身の若いピッチャーがいて、彼のことを監督が『時速100マイル出るが球が軽い』と言った。何のことだかオレにはわからなかったけど、しかし、監督が正しかった。多くの球質の軽いピッチャー(light ball pitcher)と同様、彼は山ほどのホームラン(a ton of home runs)を打たれたし、それに、捕りやすかった」

21 Mike Scioscia recalled Roy Campanella talking about pitchers who threw a heavy ball. But the terminology goes back much further. Jack Lapp, catcher-for the Philadelphia Athletics 1910-1914 three-time world champions, said Chief Bender "threw a ball that was so light it felt almost like a tennis ball, while Jack Coombs was like catching a brick."
マイク・ソーシアは、ロイ・カンパネッラから聞いた、ヘビーボールを投げたというピッチャーに関して思い出してくれた。しかし、ヘビーボールという語はさらに以前から存在する。ジャック・ラップ(1910年から1914年の間三度に渡りワールドチャンピオンの座に輝いたフィラデルフィア・アスレチックスのキャッチャー)は言った。「チーフ・ベンダーはテニスボールのような軽い球を投げた。一方ジャック・クーンズの球は、まるでレンガを受けてるみたいだった」(フィラデルフィア・アスレチックスはオークランド・アスレチックスの前身の前身)

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22 Hitters have their own nominees for bowling ball pitchers, whose deliveries reverberate through their arms and bodies when they make contact. Most often mentioned are Kevin Brown and Brandon Webb. Others, past and present:
打者たちは、インパクトの瞬間に腕から身体へと衝撃を走らせる「ボーリング・ボール・ピッチャー」として、また別の(「また別の」というのは打者独自の、という意味で、own の意訳のつもりなんだけど、特にそういう意味じゃないような気もする)候補を挙げる。たいてい言及されるのはケビン・ブラウンとブランドン・ウェブだ。それ以外には(過去、現在にわたって)、

Mike Scioscia: Kent Tekulve.
マイク・ソーシアはケント・テカルビーを、

Adam Dunn: Brad Penny,
アダム・ダンはブラッド・ペニーを、

Sean Casey: Zach Day and Kevin Gryboski
ショーン・ケーシーはザック・デイとケビン・グリボスキーを、

Javy Lopez: Tim Hudson
ハビー・ロペスはティム・ハドソンを、

Chris Chambliss: Jim Bibby
クリス・シャンブリスはジム・ビビーを、

Mark Grace: John Franco.
マーク・グレースはジョン・フランコを、

23 Rafael Palmeiro: Mariano Rivera, not because he throws a sinker. "His cutter is like hitting a steel ball," the left-handed batting Palmeiro said. Others likened Rivera's cutter to a "buzz saw" coming in to a lefty swinger.
ラファエル・パルメイロ(左打ち)はマリアーノ・リベラ(右投げ)の名を挙げた。シンカーを投げるからではない。「ヤツのカッターは鋼球を打っているようだ」と言う。 また他の者も、左打者のインコースをえぐるリベラのカットボールを、電気のこぎりになぞらえた。

24 Barry Larkin took a slow, thoughtful approach to the question before answering. At first he couldn't think of any pitchers during his stellar 19 years with the Reds who had given him that bowling ball effect. Told that Mark Grace had singled out John Franco, he said, "Not to me"
What about Brad Penny? "Now that you mention him, I agree. He throws a cut fastball that not only breaks in but down."
バリー・ラーキンは長時間考え込んだ。彼の輝かしいキャリアは19年間に及ぶが、その間「ボーリング・ボール効果」を彼に与えた投手を、はじめ、ひとりも思い付かなかった。マーク・グレースがジョン・フランコを挙げたと聞いても、「私にとっては違う」と言った。
ブラッド・ペニー(右投げ)はどうだろう? 「彼についてなら同感だ。彼のカット・ファストボールはインコースに曲がって来る(breaks in)だけじゃなく、落ちる」(右投手のカッターが右打者のインコースに曲がって来る、って、おかしいよな。とすると「breaks in」は「インコースに曲がって来る」ではないのかも)


25 Larkin didn't think the pitcher alone was the cause of the heavy ball feeling. "It's a combination of the hitter--where he makes contact--and the pitcher. A sinker is harder to get just the right contact on the sweet spot. I'm a contact hitter, not a big swinger.
Mark Mulder threw me a splitter on June 7 that broke my bat. I hit it on the end of the bat. I went back to the bench and said, 'That was a heavy pitch.' The other guys scoffed. 'Mulder?' they said in disbelief. But that, to me, was a heavy pitch."
ラーキンは、投球を重いと感じる原因はピッチャーだけにあるわけではない、と考えている。「それは、バッターとピッチャーの組み合わせの問題だ。シンカーは芯で捉えるのがむずかしい。オレは大振りするタイプじゃなく、こつこつ当てるバッターなんだけどね。
6月7日、オレはマーク・マルダーのフォークでバットを折られた。end of the bat(グリップエンドという言葉があるのでバットの根っこのことだと思うが、先っぽかも)に当たったんだ。ベンチに戻って、重い球だった、と言ったら他の奴は笑った。マルダーの球が重いだって? 信じられないって調子だった。だけど、オレにとってそれは重い球だったんだ」


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26 Adding to the mystery is the fact--or the illusion--that position players also throw a heavy or light ball. Many players mentioned that just playing catch, some guys throw a rock. They're not trying to throw sinkers or cutters, so what causes it?
さらに奇妙なのは次のような事実(或いは錯覚)だ。野手(position players)の投げる球もまた、重かったり軽かったりするというのである。多くのプレーヤーが、ただのキャッチボールで岩のような球を投げる選手の存在に言及した。野手はシンカーだのカッターだのは投げないのに、一体何がそれを引き起こすのだろうか。

27 Maybe it's something about their arm action. Bob Brenly, who recalled Giants shortstop Mike Benjamin throwing a heavy ball to the plate, said, "If an infielder gets his hand a little on the side, the throw dips and vibrates in the glove when caught."
多分、それは腕の動きに関係している。ボブ・ブレンリー は、ジャイアンツのショート、マイク・ベンジャミンの本塁送球が重かった、と思い出した。「内野手がサイド気味に投げると送球が沈んで、捕る時にビリビリ来るんだ」(『野球術』上巻 p.53によると、単に「plate」と言った場合、通常はホームプレートを指す。投手板(ピッチャーズプレート)は「rubber」と呼ぶ。ちなみに「ホームベース」は和製英語、だそうだ)

28 J.T. Snow thought that sidearm throws tend to sink, making them feel heavier.
J.T. スノウはこう考える。「サイドハンドで投げた球は落ちやすい。それが重い感じを生むんじゃないか」

29 Mark Grace disagreed. "Shawon Dunston and Matt Williams both threw over the top. Williams threw a light ball Dunston had a cannon for an arm. He threw harder than Nolan Ryan, Robb Nen or Ron Dibble. He could have been a closer but he'd have killed people."
マーク・グレース(カブス→ダイヤモンドバックス、一塁手)は違う意見だ。「ショーン・ダンストン(ショート)とマット・ウィリアムズ(ショート、またはサード)は、ともに真上から(オーバーハンドで)投げた。ウィリアムズは軽い球を、ダンストンは大砲のような球を投げた。彼はノーラン・ライアンやロブ・ネン、ロン・ディビーよりもハードな球を投げた。「ヤツならクローザーだってできたろう。ただし人を殺す羽目になったかも知れないが」

30 "His ball moved, and that motion made it feel heavy. You couldn't catch it square. It vibrated in your glove and up your arm."
「ヤツのボールは動いた。その動きが重い感じを生むんだ。アレは正面で捕ることができない。グローブだけじゃなく、腕まで痺れる」(正面で捕ることができないムービング・ボールを投げるショート。本当なのか。ずいぶん迷惑と言うか、内野手には向いてないような気がするんだが)

31 Without trying to explain it, players and coaches singled out Reds catcher Jason LaRue, Alex Rodriguez and A's outfielder Bobby Kielty as brick-throwing position players today.
理由はともかく、多くのプレーヤーとコーチは現在の「球質の重い野手(brick-throwing position players)」として次の選手を挙げる。レッズの捕手ジェイソン・ラルー。アレックス・ロドリゲス。アスレチックスの外野手ボビー・キールティ。

32 That's not new, either Home Run Baker threw bricks, Eddie Collins, feathers. Maybe they can't explain it, but don't try to tell a sore-thumbed catcher or a stung-hands batter that there's no such thing as a heavy ball.
それは現在だけに限った話ではない。 ホームランベイカーはレンガのような、エディー・コリンズは羽根のような球を投げたのだ。たぶん彼らはそれを説明できない。しかし、だからといって、親指を腫らしたキャッチャーや、手を傷めたバッターに向かって、重いボールなんてものは存在しない、なんて言うのはやめた方がいい。

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ちなみに、この記事から証言だけを抜き出し、名前だけもの(「○○は※※を挙げた」など)は取り除いて、並べてみた。

[捕手] ボブ・ブレンリー
重い球とは鋭く曲がるシンカー。きちんと捕れないからビリビリ来る。バッターにとっても同じ。サイド気味に投げる野手の送球も、沈むから重く感じる。
[捕手] デイブ・ダンカン
シンカーこそが唯一の重い球だ。昔のミットは Late-breaking drop を捕りにくく、辛かった。
[捕手] マイク・ソーシア
シンカーは思うように捕れないから重く感じる。腕の動き、球離れ、回転とかで決まる。重い球というのは教えて投げられるものではない。
[捕手] M.リーバーサル
シンカーに限らず、きれいに捕れない球は重い。
[捕手] レイ・フォシー
シンカーは思うように捕れないから重く感じる。落ちるから親指にダメージが来る。
[捕手] レイ・ミラー
思うように捕れない落ちる球は、キャッチャーの親指にズガンと来る。
[捕手] R.デンプシー
キュッと曲がる、しかも一球ごとに球道が違う球を捕ると親指が軋む。
[捕手] E.ヘンドリックス
一球ごとに違う軌道でキュッと曲がる。親指どころか顎まで痛む。
[捕手] マイク・ソーシア
フォークもタチが悪いが、シンカーほど重くは感じない。
[左打] R.パルメイロ
マリアーノ・リベラ(右)のカッターは鋼球を打っているようだ。
[打者] バリー・ラーキン
打って重いのは、インコースに曲がり落ちるブラッド・ペニーのカット・ファストボール。
[打者] バリー・ラーキン
芯で捉えるのがむずかしいのが重い球。投手と打者の組み合わせの問題。
[一塁] J.T. スノウ
サイド気味に投げる野手の球は落ちる。それが重い感じを生むんじゃないか。
[一塁] マーク・グレース
オーバーハンドでもムービング・ボールはパシッと捕れないから重く感じる。

[捕手] A.メルヒューズ
フォークが重くないのは回転が少ないせいではないか。
[打者] C.シャンブリス
深く握ると重くなる。

[捕手] ジェリー・ナロン
グース・ゴセージのシンカーはまるで火の玉。
[捕手] A.メルヒューズ
『 heavy ball』って妙な言葉だと思ったね、同じボールだぜ?
[捕手] ボブ・ゲレン
light ball pitcher はホームランを打たれやすく、捕りやすい。
[捕手] ジャック・ラップ
軽い球はテニスボールのよう。重い球はまるでレンガを受けてるみたい。
[投手] ジョー・ケリガン
Don't ask me why, but it's so.
it's hard to catch cleanly:04

不如意説のまとめ

目次の都合でタイトルを短くしたいので、「ジャストミートが困難な球」のことを「不如意な球」、不如意な球とは言えなくても微妙にジャストミートに失敗して重く感じる(あるいは飛距離が出ない)ようなケースを「不如意なミート」、そういうのが球の重さの原因だとする説を「不如意説」と呼ぶことにする。不如意というのは「思い通りにならん」という意味。速い球は不如意だ、と赤星は言い、シンカーが不如意だ、と多くのメジャーリーガーは言う。まとめるとこんな感じ。

[球速説]:
速い球は打ちにくい。火の玉のようで手に負えない。速い球にジャストミートするのは至難の技で、ファールするのが精一杯。要するに、速い球には球威があり、重い。

[制球説]:
キビシイコースの球は芯で捉えにくい。キビシイコースの球をジャストミートするのは至難の技で、結果として重く感じやすい。

[球道説]:
素直な回転の真っすぐは目で追いやすく、捕りやすい。打者からすればミートしやすい。「速い球をジャストミートするのは至難の技」って言ったじゃないかって? そりゃ速い球は手強いさ。なにしろむちゃくちゃ速いんだぜ。ただ、内角低めにキュッと曲がり落ちる Late-Breaking シンカーは、そこまで速くなくても厄介なんだ。なんていうか、手強さの質が違うのさ。例えばドラゴンズのケンタ・アサクラのシンカーだ。え? ああ、日本ではシュートって呼ぶんだっけ。きれいにミートしたつもりでも食い込まれて、腕から上体までビリビリ来る。それとシンカーに限らず、Moving Ball もね。

[総合説]:
ベースボールは総合芸術なので、ジャストミートを困難たらしめる要因はもちろん、他にもいろいろある。フォームとか、体形とか、腕の長さとか、顔の表情とか、コースや緩急取り混ぜた投球の組み立てとか。「球離れ」だとか。逆に打者の側の思い込みとか。「コントロールが悪いので常に死球の恐怖を感じさせるピッチャー」とか「コントロールがいいくせに死球が多いエグいピッチャー」とか。理由はわからんけどタイミングを合わせづらいピッチャーとか。
ちなみに「Sportsclick/野球/ベースボール・ゼミナール」の「第46回:[投手編] 球質の重いボールを投げるためには?」で、水野雄仁さんはこう語っている。
「打者側から見たら、バットが差し込まれる、振り遅れて詰まってしまうようなボールは『重い』と感じるはずです。それはもちろん球の速さも関係するでしょうが、そんなにスピードがなくても、打者からボールの出所が見えにくかったり、タイミングが合わせにくい投手のボールには振り遅れたりするものです。そう考えると、『球の重さ』というのは、ボール自体とは別のところから生まれているのかもしれません。『外国人投手のボールは重い』と言われますが、これも手元で微妙に変化するようなボールが多く、バットの芯でとらえるのが難しいということと無関係ではないと思います」(水野さんはこれに続けて、単に腕の振りの速さで投げたスピードボールは軽く、しっかり体重を乗せてパワーを伝えたボールは重いんじゃないか、というトンデモ系の発言もなさっているが、無視しておこう)

[偶然説]:
当たり前だが、普通に打ちやすい球でもミスショットすることはある。ミスショットがイコール重いってわけじゃないが、当たり頃やタイミングによっては腕から上体までビリビリ来るよ。どんな条件の時にそうなるかって? さあね。オレは物理学者じゃないからね。ビリビリ来なくて、それどころか主観的には完璧に捉えたと思ったのに飛距離が意外に出なかった、とかってこともあるね。そういうのは球が来るタイミングなり軌道なりが、微妙にこっちの予測を上回ってたってことさ。「気付かないくらい不如意」って言うか。

不如意説についてはこれくらいで充分だろう。これくらいで、大体わかった。不如意な球や不如意なミートの存在は疑いようもない。

では、「如意でも重い球」、つまり「ジャストミートしても重い球」の方はどうか。次ページは「芯を確実にジャストミートしても力負けして打球が失速する」みたいな話について。



ジャストミートしても重い球-1